うたをうたいましょう
もし良かったら感想、ご指摘などよろしくお願いします
「はぁ……まぁいいかぁ。うん、今回はクロエさんを手伝うよ」
「私が言うのもアレですけど、ちょろくないです?」
「ちょろくない!今回、何もしなかったら流石にここも危なそうだし、それは彼女のファンとしても困るから」
そういうもんなのだろうか。
そういうもんなのだろう。
とりあえず、リセットボタンの協力は受けることが可能となった。
これは大きい。
「じゃ、私は何すればいい?」
「索敵を。このまま不死系モンスター増えても仕方ないし、対処もしにくいので術者を叩きます」
「クロエさん1人で?」
「策はあります」
私の目を覗き込むように、リセットボタンは見つめてくる。
事実、策はある。手持ちの魔術を組み合わせたとっておきだ。
「……はぁ、まぁいいか。術者の特徴は割れてる?」
「いえ、私の情報も基本さっき渡した羊皮紙程度しかないんで」
「それでどう探せと!!」
「人海戦術で?死霊術使ってるのなら、特徴は分かりやすい形で何かあるでしょう。それを貴女のホムンクルスで探し出せば何とかなるでしょう?」
人海戦術というべきか、人外戦術というべきか。
彼女の持つ錬金魔術により生み出すホムンクルスならば、このだだっ広いレギンの街もなんとかカバー出来るのではないか?
「出来なくはないけど、ホムンクルスの操作、情報整理なんかに集中することになるから、敵に気付かれたら終わりになるけど?」
「問題ないです。私の魔術でなんとかなりますから」
「……そう。じゃあ移動しますか。ここに居たら大規模にホムンクルスなんて造れないし」
席を立ち、観客席から外に出ようと足を進めるリセットボタンについて行く。
「すぅー……さぁ、今回も戦闘開始だ」
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ドミネ首都レギン - 某所
「【バラの花輪だ】」「【手を繋ごうよ】」
そこでは、見た目がまだ幼い少年少女が手を取り輪になりながら歌を歌っていた。
「【ポケットに】」「【花束さして】」
2人は本当に楽しそうに歌う。
一言発するたびに、輪になっている彼らの周りに濃厚な魔力が立ち昇っていく。
「【ハックション!】」「【ハックション!】」
その魔力は2人が歌を歌うのに合わせ、様々な形へ変化していく。
死肉食い、動死体、スケルトンにスピリット。
現在、レギンの街を襲う不死系モンスターへと姿を変えていく。
「「【みんな、転ぼ】」」
そして2人はその場にしゃがみ込む。
歌い終えると共に、不死系モンスター達は霧散していった。
そうして聴こえてくるのは、レギンの街に住む者達の嘆きの声。
それらを聴きながら、2人は笑う。
子供のように大きく笑う。
「楽しいね!グリム!」
「そうねハンス!楽しいわ!すっごく楽しい!」
2人はそのまま再び歌い出す。
同じ歌を歌い続ける。
しかし、その歌は続かない。
ガタッガタタッと何かが近づくような音が聴こえてきた為だ。
「なにかな?」「なにかしら?」
「「見にいってみようか!」」
2人は手を繋ぎ歩き出す。
暗い暗い地下室のような部屋から出ると、そこには男と女が居た。
不死系モンスターに囲まれながらも、彼らは出てきた2人に対し怒るように叫ぶ。
「お前らか!この街を襲ってんのは!」
「叫ぶのは良いけど一旦周りを蹴散らす!【頭上の林檎は撃ち抜かれる】分散!」
女の方がそう叫ぶと、周囲にいたモンスター達は一斉に吹き飛んでいく。
見れば、人間でいう胸……心臓のある位置に魔力で出来た矢が突き刺さっていた。
「ははっ、サンキュー。……これでモンスターは終わりか?」
「動かないで。まずは外の結界を解いてくれる?」
男と女は、それぞれ獲物をこちらへと向けながらそう言ってくる。
「……くも……」「……だ…を……」
「あん?逃げても無駄だからな。俺の鼻はお前らの魔力を記憶したから−−」
「よくも私達の」「友達を殺してくれたな!」
2人の顔は、すでに先程までの子供のような無邪気な笑顔では無くなっていた。
そこにある感情は憤怒のみ。
「【逸話のある物語 - 灰かぶり】発動」
「【彼は晩年にこそそれを知る - マッチ売りの少女】発動」
2人がそう宣言する。
すると、女の方には大きな……人1人くらいならば仕舞えてしまいそうな大きさの衣装箱が。
男の方には大量の火が迫っていく。
「なっ……!」
「リック!結界!」
「やろうと……してるんだが……!!」
口は動くが、男の身体は動かない。
女は焦ったのか、衣装箱に対し先程モンスターを屠った矢を放つが、衣装箱は壊れずに迫っていく。
「「2人とも、死んじゃえ」」
その言葉がトリガーになったのか。
衣装箱は女の首をへし折り、男は近づいてきた火に焼かれていった。
後に残るのは光の粒子と2つの魔術書のみ。
しかし2人はそれを無視して部屋へと戻る。
そしてまた歌い出すのだ。
「【バラの花輪だ】」「【手を繋ごうよ】」




