さぁ釣ろう
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街の入り口の門で起きた騒動をきっかけに、その場で近くに来たプレイヤー達にて対策会議が行われている。
私も一応参加、という体でその場にはいるわけだが……正直、現在私にできることも少ないしあまり話をきちんと聞いてはいない。
「……外には?」
「出れないです。おそらくレギン周囲に固有魔術で結界か何か張られてるっぽい?」
「被害はどうなってるー?」
「外側からじりじり内側に迫ってきてる形で、不死系モンスターがポップしていってる感じかなー」
大体、こんな感じで会議というよりも報告を受けてそれぞれが勝手に動き始める……というこのゲームならではのプレイヤーたちの動きをしている。
周りを見てみると、情報を纏めるタイプの補助系固有魔術を展開しているプレイヤーや、金をとってバフをかけるバフ屋、ここぞとばかりにサバト勧誘をするプレイヤーなんかもいて、一種のお祭り騒ぎのようにもなっている。
「私はどうしようかな……」
他プレイヤーたちが錬成魔術や錬金魔術を使い作り無造作にその辺においてある椅子に座り、考える。
現状、私がいる位置は先ほどの死肉食いが出てきた小屋の近く……少し開けた広場のようになっている場所だ。
周りには大体20人ほどのプレイヤーがいるため、ここが襲撃されたとしてもすぐに壊滅するということはないだろう。
「これドウゾ!」
「あ、ありがとう」
と、ここでピエロのような恰好をした少女から何かが書かれた羊皮紙を渡される。
……纏められた情報を紙に写したもの、かな?
ほかにも情報を公開しているプレイヤーはいるが、そこには他のプレイヤーが多く集まっているため、正直見るのも一苦労するため助かった。
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「死霊術師複数における襲撃、かぁ」
羊皮紙を読み終わり、頭の中で情報を整理する。
現在、このレギンを襲っている下手人は、恐らく森精族の国であるファルシからの刺客であろうということ。
そも、死霊術を使えるようになるためにはファルシにて修練する必要があるとのことなので、これは基本的に間違いないだろう。
そして発生している不死系モンスターの種類。
先ほど見た死肉食いの他、動死体、スケルトン、ゴーストなど見たことのないモンスターも多い。
レギンを囲っている結界については、固有魔術とのこと。
破壊できないこともないらしいが、それがトリガーになって何が起こるかわからないために、破壊は非推奨とのこと。
「……見れば見るほど私にできること少なそうだなぁ」
魔術行使の残滓から、魔術師を逆算できるとかそんな感じの固有魔術があればよかったのだが、私の持っている固有魔術にはそういうものはない。
というか、どちらかといえば私は複数との戦闘には向いていないのだ。
【爆破槍】や【分裂槍】ならば複数敵に対し、何とかできるかもしれないがそれ以外の手があまりない。
「でも襲撃終わるまでじっとしてるのは性に合わないし」
椅子から立ち上がり、とりあえず泊まっている宿を目指す。
歩きながら周囲警戒のために【霧海】を発動させておくが、正直そのあとどうするか。
適当に走り回ってモンスター見つけるたびに倒していく?
いや、それは効率が悪い以前に無駄が多いだろう。
じゃあどうするか。
「うん、普通に人を頼ろう。そっちのほうが楽だ」
自分にできないのなら、できる人に頼ればいいのだ。
この街にいる知り合いを探し出すというところから始まるが……まぁ、一人ほど勝手に近寄ってきてくれる知り合いが居るから問題はないだろう。
ならば、と宿に向かって歩いていた足をコロッセウムのほうへと向ける。
彼女ならばそこにいるだろう。確か今日も試合があったはずだし。
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「お、いたいた。探したよ」
「……は?」
【霧海】を薄く観客席に垂れ流し、片っ端から感知をかけていたため、すぐにとは言わないが普通に探すよりかは早く見つけることができた。
私は、その彼女の肩に手を置きながらにっこりと笑う。
「ちょっと協力してくれます?リセットボタンさん」
「は?いや、え?いやいやいや。待とうかクロエさん、話が読めないんだけど?」
「この街襲撃なう、索敵役がいない、貴女ができる。OK?」
「……いや、もうちょっとこう、詳細を……っていうか私達別に仲間とかじゃないよね?てかどっちかといえば敵同士だよね?!」
ふぅ、煩い人だ。
さっさとやる気を出してくれないと私も狩りに行けないのだから、なんとかならないだろうか。
「はぁ……いやそうですけど。とりあえず現状をまとめてあるのがあるんで、これ読んでください」
「なんでそんなめんどくさそうにしてるんだろうかこの人は……」
リセットボタンは私から羊皮紙を受け取りながら、それを読んでいく。
今回、彼女を探してまで私からコンタクトを取った理由は只々簡単な理由からだ。
知り合いの中で、索敵が自由にできそうなのが彼女だけだからだ。
……というのも、彼女は以前リーンの森で逃げる私を探し出し最終的に襲い掛かってきている。
森の中で特定の個人を探し出せる、という能力は助っ人としていればかなり便利なものだろう。
ハロウを頼るという手もあったが、それは諦めた。
彼女もコロッセウムで会える可能性があったわけだが、私は彼女の持つ力をある程度までしか知らないのだ。
そも、索敵のような魔術は持ってる可能性は大いにあり得るが、持っていない可能性もある。
ならば持っていると断定できるリセットボタンを頼るのはおかしいことじゃあないだろう。
敵という一点を除けば、だが。
「状況は理解した、けれど私がクロエさんを手伝う理由がなさそうだけど?」
「いえ、ありますよ。簡単な話です」
「?」
そして私にはリセットボタンに協力させることができる手札がある。
いや、手札というよりもこれは切り札の類だろう。
「貴女とハロウさんがきちんと知り合えるように場を設けます。それでどうです?」
「なっ……」
ハロウへの反応をみればわかる。
彼女はハロウの熱狂的なファンなのだろう。いや、熱狂的ではなくともかなりのファンではあるだろう。
あの時、ハロウは私と話すのに夢中で、あまりリセットボタンとは関わっていなかった。
そこで、今回の提案だ。
さて、リセットボタンはどう出るかな……?




