やれること、やれるようになったこと
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「よーし、とりあえずで毒の形状はかなり増えた、かな?」
目の前には、複数の瓶が並んでいる。
中には、ローションのようにドロリとした液体や、角砂糖のようなものなど様々な形状にしてみた【過ぎた薬は猛毒に】が入っている。
「戦闘で使うなら、これかなぁ」
その中の、ローションのような形状の毒が入った瓶を手に取る。
そして【魔力装】にて作り出した短剣の刃の部分にドロリ、とその毒をかけてみる。
……うん、思った通り魔力によって作られたものでもきちんと毒は塗り込めるんだね。
あるいは、これも私がイメージしたからこその結果だろうか。
自由自在な武器を作り出せる【魔力装】に、エンチャントのように毒をのせる【過ぎた薬は猛毒に】。
一応現状はこんなものでいいんじゃないだろうか。
……というか、習熟度が貯まりきっていないから派生魔術もまだ獲得できなかったなぁ。
「よし、思ってても仕方ない。あとは実戦で試すしかないね」
誰に聞かせるでもなく、1人でそう言いながら【チャック】内に毒入りの瓶を仕舞っていく。
すると、だ。
『固有魔術-チャックの習熟度が2000になりました。レベルが3へと上がり、チャックの派生魔術として【異次元連結】を取得しました』
「おっと、ここでそっちがきちゃうか」
最近習熟度を可視化してみるということをしていないため、どれがいつ習熟度が貯まるか分からない。
いや、見ればいいのだが、なんとなくで見なくていいかと思っているだけなのだ。
とりあえずイマイチ名前からでは効果を読み取れないため、【鑑定】を使ってみる。
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【固有魔術-チャック-異次元連結】
別々に開いたチャック同士を繋げることが可能。
同時接続可能数:2
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「んんん……」
【鑑定】を使ってもイマイチよくわからない。
実際に使ってみるほかないだろう。
別々に、とあるため目の前に2つ【チャック】を出現させる。
「じゃあ使ってみよう。【チャック】連結」
【異次元連結】の起動文は、連結。そのままだろう。
発動後、何か起こるかと思い何もせず見ていたが特に何かが起こるというわけではないようだ。
「んんー?どういうことだー?」
どっちも開いた状態で出現させているため、変化があったらすぐにわかるはずなのだが……特に変化はない。
……手、突っ込んでみる?というか、それくらいしか思いつかないよね。
片方の、左腕側の【チャック】にぬいぐるみの偽腕を突っ込んでみる。
すると、大変わかりやすい結果が返ってきた。
「あぁ、なるほど。文字通り繋げるってことね」
偽腕を突っ込んでいない側の【チャック】から、その突っ込んだ偽腕が出てきていたのだ。
まるで手品でも見ているかのような感覚だ。
一旦、偽腕を引き抜き右腕も突っ込んでみる。
同じ結果ではあるが、特におかしな感覚はない。
そのまま右手に【魔力装】で短剣を作ってみても、問題なく発動することができた。
「奇襲特化?いや、でもなぁ……」
そもそも【チャック】の大きさはどこまで大きくできるのだろうか。
何度か【チャック】を飛び道具の防御手段として使ってきたが、特に何も考えず(防げればいいな)としか思ってなかったため、きちんと測ったことはなかったのだ。
……これ、【チャック】同士の距離制限とかなければ面白い事できるよね。
簡単に言えば、『どこ〇もドア』みたいな。
そんなこともできるのではないだろうか。……こちらは『どこでも』ではないのだが。
試してみる価値はある。
とりあえず私が入れるくらいの大きさの【チャック】が出現させられるかどうかを確認しよう。
「お、できたできた。……じゃあ次は接続がどうなるか、だね」
中に入れるかどうかというのは確かめない。
そも、中に入れないのであれば自分の腕や、相手の足なんかも前から入れることができないだろう。
部屋の窓を開け、どうせなら……と見える位置にある建物の屋根の上に対し【チャック】を発動させる。
外はすっかり夜のため、少しくらい目立つ位置に出現させても問題はないだろう。
そしてそのまま接続させ、部屋の方の【チャック】へと向き直る。
「うー、少しだけ怖いなぁ……」
笑いまじりだが、素直な感想だ。
今まで自分の身体を使った実験など、禁書以外ではほぼやっていないに等しいのだ。
……でもやらなきゃ面白くないしね。
一度深呼吸をし、そのまま【チャック】の中へと入る。
すると、一瞬で景色が書き換わり、先ほど【チャック】を出現させた屋根の上へたどり着いていた。
「……ふふっ、いいじゃんこれ」
笑みが零れる。
頬が緩むのが止められない。
これで、いちいち狩りの後帰るのにびくびくする必要がなくなった。
しかし、もう一つ。試さなければいけないことがある。
見てない状態で、見えない状態で接続は可能なのか、ということだ。
「一度、部屋の方との接続を解除して……っと。このまま空を見ながらでいいかな?」
街を見ていても、所々魔力を使った灯りはあるものの、薄暗いため空を見上げたほうが有意義ではあるのだ。
そしてその状態で接続してみる。
……出来た。
「よし、帰ろう。襲撃がないわけじゃあないんだしね」
そしてそのまま、【チャック】へ入り先ほどまでいた宿の部屋へと帰ってくる。
屋根の方のモノはそのまま【チャック】ごと解除しておくことにする。
……誰が見つけて中に入るかわからないからね。こわいこわい。
「これ、戦闘に応用できたら面白そうだなぁ……練習しとこう」
課題も新しく見つかったところで、今日はもうログアウトしておくことにする。
さて、明日からも忙しそうだ。




