戦闘途中、疲れと共に
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始まりの森 - PM
戦闘が始まってからどれくらいの時間が経っただろうか。
視界の端に映っているHPバーは約半分を切っている。先ほどから繰り返している行動も少しずつ繊細さに欠けてきた。
戦闘開始から、少し経った頃ワーウルフの動きにある一定のパターンがあることに気が付いた。
姿を消してから、こちらのいた場所へ攻撃、出現後再度攻撃…これを繰り返す。
そのタイミングで攻撃すれば少なからずダメージを与えることはできる。
避けて突いて避けて突いて。
ただ単純な作業だが、これをVRで繰り返すというのは体力的にもWOAというゲーム的にも厳しい。
アースラビットとの戦闘を思い出すと、モンスターが魔術を使ってこないという現状が少し妙に感じる。少し警戒はしておいた方がいいかもしれない。
「はぁはぁ……」
「GRRRR……」
【変異】を使い、壊れかけてきていた槍を新しく作り直そうと思うが、一旦やめる。
(ここまで槍を作るのにも慣れてきた。パターンもわかる。なら…!)
「【錬成-範囲変異-範囲指定】発動!もう一回【範囲変異】発動ッ!!」
ワーウルフが姿を現し攻撃してきたところを避け、【範囲変異】を2回発動させる。
発動範囲は1回目は避けた後、目の前の方の地面を下方向に5mほど。
2回目はその5m地点の土に対して発動する。
何をしたいか。簡単なことだ。
「GRA……ッ!?」
「よっし!引っかかった!」
姿を消し攻撃しようとしてきたワーウルフが目の前で落ちていく。
ダンジョンによくある落とし穴を作っただけである。ただし、底には【範囲変異】によって石のように固く作られた槍が何本か上側に向けて矛先を突き出している。
「はっはっは!!!ばーかバーカ!!疲れたんだよこっちは!!【錬成-範囲変異】発動!」
仕掛けた罠にキレイにハマったワーウルフに対し、テンションが有頂天となりキャラが地味に崩壊する。
一応出てこないように、【範囲変異】を使い穴を塞ぐ。
穴を塞いだ瞬間にピロンと目の前にログが現れる。
『変異体ワーウルフを討伐しました。MVP者に対し、特典を付与します。
MVP:クロエに対し、禁書:【第一章】を付与しました。』
「あれ、ワーウルフこれで死んだのか…いや、そもそも初心者フィールドで出てきたってことだからHPが少なかったとかなのかな」
というか禁書?
禁じられた書籍という意味での禁書だろうか。特典…ということで貰えたわけだからシステム的に禁じられているわけじゃあないだろうけど、ゲーム内の街では禁じられている…とかだったら面倒かもしれない
そう考えているともう一つログが現れる。
『レベルが一定値まで上がりました。クラスチェンジができるようになりましたが、今しますか?』
という文章と共に、YESとNOと書かれたボタンが出てくる。
突然の幕引きと共に、色々出てきたために色々整理できていないが、とりあえずYESを押す。
元々はクラスチェンジについて考えていた時にワーウルフに出会ってしまったのだ。
『では、クラスチェンジ用のフィールドへ移動します』
「へっ」
直後私の視界はホワイトアウトした。
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??? - PM
周りを見渡しても、白い靄がうすーくかかっているため遠くまで何があるかわからない。
キョロキョロしていると、目の前の方から誰かが近づいてきた。
『おや、貴女様は…もうクラスチェンジですか。早いですね』
「あっ、チュートリアルのバニーさん。貴女がクラスチェンジについて教えてくれるの?」
『そうなります。クラスの中からクラスチェンジ可能職をリスト化したものを渡すので、その中から一つクラスを選んでください』
「選んだクラスが次のクラスになるってことかな」
『その認識で大丈夫です。ではこちらが一覧となります』
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クラスチェンジ可能リスト
・錬金術師
・錬成師
・中級魔術師
・魔槍師
・古物収集家
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「あー、じゃあ錬成師で。今の戦闘スタイル的にもそれで問題ないだろうし」
『了解しました、ではクラスチェンジを行います。…クラスチェンジ特典として、錬成魔術の習熟度にプラス1000、新しく強化魔術を習得します。……これでクラスチェンジは完了となりますが、何か質問などはありますか?』
質問…質問といえばそう。
「そういえば、さっき変異体との戦闘報酬で禁書ってのをもらったんだけど、これは?」
『禁書はタイトルに書かれている種類の強力な魔術を習得していなくても使えるものです。しかし、禁書を使う場合ステータス異常にかかるため、一概にメリットのみとは言えません』
「禁書を使うことによって習熟度は貯まるの?」
『貯まります。しかし、それは禁書というカテゴリでの習熟度として加算されるので、幾ら様々な種類の禁書を使用し魔術を行使したとしても、すべて禁書カテゴリの習熟度となります』
つまりは強力な魔術を禁書経由で使えるけど、デメリットがあるから気を付けてねってことだろう。
「ちなみに、禁書カテゴリの習熟度でそのデメリットを軽減させるパッシブとか覚えたりとかは…」
『それについては、自ら確かめてください』
「ですよねー。ネタバレはしませんよねー」
まぁ、禁書を扱うという点でデメリット軽減は必要になってくるだろうから、禁書カテゴリ習熟度が一定まで上がるまでは普通の魔術の方の習熟度を優先して上げていこう。
「じゃあ帰ります」
『了解しました。では始まりの街へ転移させます…が、このままログアウトも可能です。どうしますか?』
「あー…転移先ってどこになります?私のとってる宿の部屋に転移って可能ならそっちに転移させてもらってログアウトしたいかなって」
『可能です。では宿の部屋に転移、ログアウト処理をします。ではよい現実を』
その言葉を最後に私の視界は現実へと戻ってきた。
長い一日だった…。




