試合後、そして成長するには
もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします
「よしっ、と。ふふ、じゃあ私は戻るから」
「お疲れ様です。解説とか色々ありがとうございました」
「いえいえ。……そっちのリセットボタンさんも、元気でね」
「はっはい!」
試合後、彼女はそのまま固有魔術を解いたようで、光となって消えていった。
観戦室にいた他の観客は突然現れ、突然消えていった彼女に目を白黒させながらも、ハロウが話していた相手……つまりは私たちにどういうことなのか話を聞こうと詰め寄ろうとしてくる。
私はそのまま【五里霧】を使い姿を隠して逃げるのだが。
部屋を出る際、何やらリセットボタンが喚くような声を上げていたきがするが、気にしないでいいだろう。
リセットボタンなのだから。
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ドミネ首都レギン - PM
魔力を追跡されると困るため、コロッセウムを出たあとに【五里霧】を解除し宿へと戻る。
とりあえず参考にはなった試合だった。
ハロウが話しながらやっていた戦術は、攻撃系の魔術の少ない私にぴったりなものだ。
こちらが準備できるまで近づけさせないよう牽制し、そして準備ができたらそのまま殺しにかかる。
別に、牽制といっても足など相手の機動力を奪う程度なら当ててしまってもいい。
これらが戦場が変わっても出来るか出来ないかで、生存確率も大きく変わってくるのだろう。
ハロウやリセットボタンには出来る。しかし私には現状出来ない。
この差とは一体なんだ?
「やっぱり、保有魔術数と経験だよねぇ……」
それ以外にないだろう。
保有魔術に関しては、あればあるだけ組み立てられる戦術の幅が広がる。
それだけ、自分の理想の戦況へもっていきやすくなる。
そして、経験
戦場での対人経験は何よりも大事なものだ。
保有魔術数が多く、いくら組み立てられる戦術の幅が広がっても、相手に経験の差で詰められてしまったら意味がない。
それをこちらも戦場での戦いの経験によって相殺させる。相手を上回る。なんとかする。
事実、保有魔術も経験も勝っているリセットボタンに私が勝てたのは、ただただ運が良かっただけだ。
私の使える魔術でトドメをさせる状況に勝手に場がなっていた。あの場で完全に彼女が私のことを嘗めていた。それでいて、私がその方法を思いついた。
すべて運が良かった。
だが、ここから先多くの対人戦闘を行うだろう。
今回の列車イベントのように、突然見知らぬ誰かとコンビを組まされる可能性もある。
運だけじゃ、勝てないのだ。
「……まずは、地力をあげないとね」
それをするためにも、早くこの左腕を治す必要がある。
もう少し留まっていたかったが、早めに水精国のユディスに行ったほうがよさそうだ。
ただ、少なくともあと2日ここに滞在しよう。
「滞在しながらでも、できることはあるしね。久々に部屋に籠ることになりそう」
と、部屋を取っている宿に辿りついた。
一応宿に入る前に【霧海】を使い、つけられていないかを確認後中に入る。
リセットボタンが後ろからつけてきていないとは限らないためだ。
そしてそのまま宿の主人に挨拶をしつつ自分の部屋へと入り、扉にカギを閉める。
「さて、と。やるかねー」
現状、やるべきことと言えば私の数少ない手札を少しでも増やすことだ。
どうすれば増やせるか?……簡単だ。習熟度を上げてボーナスを手に入れればいい。
今までの習熟度の手に入れ方から考えるに、アレンジした……私が脳内でイメージし元々の使い方とは少し逸れた魔術の使い方をしてやれば、その難度によって決して少なくはない量の習熟度が入るらしい。
よくわかってはいないが。
そして今回手に入れた【魔力装】。
これは自らのイメージによっていくらでも姿形を変えることが可能な、攻撃も防御もできる固有魔術だ。
こいつの派生魔術を手に入れることができれば、かなり戦術の幅が広がるのでは?
「っと、忘れちゃいけないのが【過ぎた薬は猛毒に】だね」
【過ぎた薬は猛毒に】。
リセットボタンを殺したことで得られた固有魔術だ。
これも派生魔術……というか設定できる性質云々の種類を増やすことができれば、大幅な戦力強化に繋がるだろう。
「一番は、リセットボタンが使ってたあの種類の毒なんだけど……レベル高そうだなあ」
恐らく強力な酸性の毒。
それも、起爆させると煙となって広がるタイプ。
あれの煙の色を変えられるのであれば、私の【霧海】と合わせて使うことも可能だろう。
とりあえず、やるならば先に【魔力装】からだ。
どこまで自由が利くのかを最初に確かめなければならない。
……【影化】中に調べたのはあくまでも、何ができるかってところだからね。
「じゃあ最初にやるのは……手から離れても解除するまでは発動しつづけるのかどうか、かな」
ホーネットも、私も結局身体から離れるように【魔力装】で出現させたものを操ってはいないし、そもそもどんなイメージで発動させればいいのか。
手から使えて、なおかつ飛び道具にもなる。
「……苦無、かな」
まず真っ先に思いついたのがそれだった。
いや、ほかにも以前使っていた投げナイフとかは浮かんだのだが、カッコよさで苦無にしようと考えてしまったのだ。
「よーしまずは苦無の形が作れるように特訓するところからだね!」
そうして、私の習熟度上げのためのゲーム内引きこもり生活が始まった。




