遭遇に加え参入
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「……なぜ、ここに?」
「安心して?マーキング系の魔術を使っていたとかじゃあないし、今回は本当に偶然だからね?」
リセットボタンは軽く笑う。
……一応、警戒はしておこう。彼女は流石に油断できない。
「とりあえず、私はこの試合を見に来た。……ところでぇ」
「なんです?」
「左腕、まだ治してなかったんだね。君の性格ならすぐにでも直すかなって思ってた」
「はは、私もそうしたかったんですがね」
適当に話を合わせつつ、コロッセウムの方を見る。
丁度、プレイヤーの入場だったようで、アナウンスと共に一般席のテンションが上がっているのが見て取れる。
と、そこにだ。
「いやー、危ない危ない。間に合ったわね」
私がこの観戦室に入ってきたときに通った扉から、出場選手であるハロウが入ってきた。
ざわっ、と観戦室内が慌ただしくなるが、ハロウはそんなのを無視してこちらへと歩いてきて隣へ座る。
「ふぅ、一息っと。……おや、そっちはお友達かな?シロさん」
「友達ではないです……はは、アレですか?」
「そう、アレね。まぁ相手には悪いけどこっちから見る景色も知っておきたいし、正直初めから全力で、とは指示出してあるからね」
観戦室内から様々な視線が飛んでくるが、その中でも一番熱烈に視線を向けてくる者が一人。
ハロウとは反対側の隣に座っている彼女だ。
「あっ、あの、決闘王者のハロウさんですよね!わわ、私ファンで……その、よかったらサインをお願いできますか!」
「ふふ、いいけれどここですると、他の人もしないといけなくなるから。後でね」
「! はい!」
リセットボタンが見たこともない顔をしている。いや、付き合いはそこまで長いというわけではないのだが。
……というか彼女、こんなミーハー感溢れる所があったのか。
気張っていた私が少しバカみたいじゃないか。
「はぁ……ハロウさん、解説役お願いできます?」
「いいけれど、隣のお友達の相手はしなくていいの?」
「さっきも言いましたが友達ではないので。というか初心者なので、出来れば解説交じりに観戦したいんです。知識もないですしね。……お願いします、先生?」
「ふふ、いいわよ。じゃあ授業開始ってところかしら」
何やら凄い視線を隣から感じるが、気にしないでおこう。
というか、これ以前襲われた時より変な難癖つけられて襲われそうだな。こわい。
「試合開始まで時間もまだ少しあることだし、コロッセウムに関して話していくわ」
「お願いします」
「ふふ、素直な生徒さんね。……このコロッセウムには、特殊な結界が張られているの。競技場……あの私と、相手が立っている場所から観客席までと、観客席からコロッセウムの外側までの2種類ね」
ふむ、2種類も張られているのか。
というか、現在もその1種類の中には居るというわけか。
結界内に入るとき、物語のキャラクターならば気付いたりするが、【霧海】以外に全く持って感知のできる魔術や能力を持っていない私にはまったくわからない。
「その2種類の違いってなんです?」
「うん、まずは競技場の方の結界ね。……こっちは簡単に言えば流れ弾防止用の結界。全方位放射系の魔術とか使うと、どうしても観客席の方に流れ弾が行っちゃうの。それを防ぐために、運営側がこしらえた結界ね。ちなみに、この結界に関してはNPCが使っているものだから、やろうと思えば私たちのようなプレイヤーでも再現することは可能よ」
ほう、再現できるのか。
「でも、1人ではできないかな。NPCは5人の結界術師が陰陽術師の強化魔術を使ってまで維持しているものだから……やろうと思っても、最低で5人は必要になると思う」
「でも、再現はできるんですね。難度はどうあれ」
「そうね。前の陣取りではプレイヤー間の最後の砦として使われたりなんかもしたかな?」
割とぽんぽん使えそうなイメージだ。
出来れば1人で使えれば最高だったのだが……。まぁ仕方ないだろう。
「で、もう一つのほうは?」
「観客席のほうね。そっちは簡単。観客から魔力を少しずつ、あ大丈夫。影響出ない程度に少しずつ分けてもらって、それを競技場用の結界に回すための結界……って言えばいいのかな?」
「競技場の結界維持用の結界……ってことで?」
「それであってるあってる」
観客から吸い取った魔力を、競技場の結界の維持へ回す……分かりやすいのか、分かりにくいのか。
まぁいいだろう。
とりあえずそういう結界魔術があるってことで覚えておこう。
「おっと、そろそろ始まるね」
「こっちに集中してて大丈夫なんです?」
「それは問題ないわ。ある程度自立行動はできるから」
それは便利そうだ。
彼女の使う固有魔術も、また便利そうで欲しいのだが……まぁ彼女には今は敵わないのは分かっている。
というか、彼女も私が殺意を持ってるかどうかくらいはわかるだろうし、すぐに殺されるだろう。
「じゃあここからは解説してくれるってことで?」
「それでいいのだけど……あなたの隣の彼女は何か文句があるようだけど?」
「は?」
ちら、と全く見ていなかったリセットボタンの方を見る。
すると、彼女は……なんだろうか。涙目で私のモッズコートを握りどういうことなのか説明してほしそうにこちらを見ている。
……うーん。
「大丈夫です。解説どうぞ」
「ちょっと待とうよクロエさん!まず説明をしてよ!どういう関係?!」
「静かに。観戦中ですよ」
「あっ……ごめんなさい、って違う違う。どういうことなのって、私貴女がハロウさんと知り合いだなんて知らなかったんだけど?」
「そりゃ言ってませんし、そもそも会ったの貴女と殺し合った後ですから」
そりゃそうだ。
私とハロウの交友期間はまだ3日なのだ。
短いなんてもんじゃあない。クラスメイトでも、名前をまだうろ覚えレベルの付き合い期間だろう。
「……というか、そのクロエさん、っていうのは何かしらシロさん。白黒?」
「あっ……あー、なんというかですね」
面倒なことになってしまった。
説明するの面倒だな……。




