さぁ、熱気の中へ
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【霧海】を影から外に出し周囲に敵がいるかどうかを確認しつつ、外へ出る。
この【影化】は、かなり便利な逃げ場になるが出るときが一番の隙となる。
一応でも確認しておけば、それだけ出たときの生存確率が高まるというわけだ。
「よし、誰もいない何もいないっと」
外に出ると、中からでは分からなかったが夜になっているようで。
すっかり周りは暗くなっており、流石に土地勘のない森のため【霧海】を薄く展開して街のある方向へ歩いていく。
あまり夜に出歩きたくはない。
そりゃあそうだ。PKにとって、夜というのは自分の姿を隠すことが容易なボーナスステージみたいなものなのだ。
私だってある程度慣れてきたら、森か何かに陣取ってPKをしていきたいし、それには今のままでは経験が足りていなさすぎる。
「私も精進しないとね」
街に近づくにつれ増える、森の中の反応に対し気づかれぬよう【五里霧】を使いつつ敬意を払う。
いつかは私も彼らのようになりたいものだ。
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ドミネ首都レギン - AM
あれから私は一度宿に戻り、そのままログアウトした。
やり残したことはないし、あまり変なことをして今日のコロシアムでの観戦に遅れてもハロウに悪い。
リックたちに教わった道を通り、コロッセウムを目指す。
すると段々和風な街並みの中に、異様な雰囲気を放つ建物が見えてくる。
「あれ、だよねぇ……」
そこには、コロッセオ……ローマ時代に造られたとされる建造物が建っていた。
その周囲には、NPCかプレイヤーか。どちらか判別はできないが、それなりの数の出店が出ており、今までみてきたレギンの街とはまた別の雰囲気がある。
「ふむ、好きな雰囲気。いいね」
前々からお祭り騒ぎというのは嫌いではない。好きなほうだ。
それに、ここの雰囲気はそれ以外にも……そう、プレイヤーたちの戦意といえばいいのだろうか。
そういうものが感じられるものだ。
プレイヤーとの戦いを望んで、始まりの街を出てきた私にとっては、好ましい雰囲気をもつ場所だった。
さて、そうはいっても買うものは特にはない。
出店といっても、こういうところで買うものは総じて高いからだ。
そのままスルーしてコロッセウムへと向かう。
近くまで行くと、受付があるようで美人な受付嬢さんが座って試合の受付をしているようだった。
それなりの列が並んでいるため、私もその最後尾へと並び順番がくるのを待つ……予定だった。
「ふふ、シロさんじゃない。奇遇ねぇ」
「あー……どうもハロウさん」
今回、私が招待された試合の主役であるハロウが私に話しかけてきたのだ。
……いや、確かに知り合いだしなんお問題もないのだけど!ないのだけど!!
周りから注目されてしまうのでは?と身構えてしまう。しかし。
「……?あまり注目されてませんね?」
「ちょっとした認識阻害系の魔術の応用よ。コロッセウム側に、客がいるほうに行くなら使ってくれって」
「へぇ……」
流石は魔術、というべきだろうか。
本当になんでもできる力だ。素晴らしいとは思うが、ここまでくると恐ろしいとも思える。
まぁ、【五里霧】なんていうステルス魔術を持ってる私が言えたことではないのだが。
「で、シロさんはなんでこっちに?」
「あぁ、いえ。このチケットってどこで使えばいいのかわからないんで、受付さんに聞こうかなって」
「んんー?……あぁ、これ列車の時の。ふふ、ならこっちよ。案内してあげる」
「おぉ、それはありがたいです」
決闘王者によるコロッセウム案内。
これほどの贅沢があるだろうか。
列から離れ、ハロウへとついていく。
少し歩くと、客用の入場口なのかスタッフのような人が立っている入口にたどり着いた。
しかし、想像していた入口よりも狭い……というか。人1人が通れるくらいの大きさのドアしかない。
「ここは?」
「そのチケット用の観戦席入口よ。それVIP用とか、要人とかそっち系に配られるはずのチケットだからね」
「……運営もなんてものを配ってくれやがったんでしょう」
「ふふ、でもこっちもこっちでいいものよ?楽しんでね」
そういうと、準備があるらしくハロウは去っていく。
私は扉の前に立つスタッフにチケットを差し出し、扉を開けてもらう。
「こりゃすごい」
中は闘技場が一望できるであろう、ガラス張りの部屋となっていた。
また、招待された者たちにそれぞれ椅子と簡易テーブルが用意されているようで、かなりの好待遇らしい。
それに。
「……うん、ここにいるだけでも感じれる魔力。ガラス張りってことで一瞬流れ弾でパリーンを予想したけど、そんなことなさそうだね」
おそらくだが、結界か何かが張ってあるのだろう。
【霧海】すら使っていない私にも感じ取れるほどの、膨大な魔力を編んで作られたそれはどんな魔術にだって耐えられるのではないか、と考えてしまうほどだ。
私は指定されている自分の席へと移動する。
そこに腰かけ、ふと隣に座っている人物の顔を確認してみた。
気になるものじゃないか、こういう席で隣にどんな人が座っているのとか。
「……は?」
「おやおやおやおや、奇遇ですねぇクロエさん」
そこには、私がリーンの森で殺したリセットボタンが座っていた。




