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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第二章 新しい土地で知ろう

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風に舞う過の者

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくおねがいします


結論から言えば、リックとクリスは話してみれば悪い人ではないという風に見えた。

リックはどこか適当な所はあれど、しっかりする所はしっかりとしているし、クリスはおしゃべりで明るい。


彼らからは多くのドミネについての情報を教わった。

火精族の見分け方から、レギンにある商店の場所、コロッセウムの位置から何から何まで引き出した。


「いやぁ、助かりました。ありがとう」

「どういたしまして。正直話だけで良かったのかと思うけど」

「大丈夫です。方向音痴ではないので」


そんな会話をしつつ、彼ら2人と解散する。

また彼らに会うことがあれば、次は私だけで戦ってみたいものだ。


「……さて」


インベントリからチケットを取り出し確認する。

決闘王者であるハロウの試合の観戦チケットだ。日付は……明日の昼。

まだ時間はある。


「一回コロッセウムに行って、どんな所か確認しとこうかな」


一応話を聞いたとは言えど、自分で見て行ってみないことには分からないこともある。

百聞は一見にしかず、というものだろう。


そう決めて、コロッセウムのある方向へと歩き出そうとした瞬間、それは聞こえて来た。

ドゴン!ドゴン!と何かが爆発するような音、そしてその後に大きな歓声。

……なんだろうか?


「街の中でおいそれと【霧海】出すのはあれだしねぇ。行くかな」


私はその音と歓声が聞こえてくる方へ走り出した。



-----------------------



そこは暴風が吹き荒れていた。

相対する2人の片方が手を振るう度、風が吹き荒れもう片方の光る剣を持つ男が吹き飛ばされている。

周りに居るNPCとプレイヤー達は、それを見る度に歓声を上げていた。


……これは、一体?


近くまで行って、その辺のプレイヤーではなさそうな人……火精族に話しかけてみる。

リック達から聞いた見分け方は実に簡単で、肌が褐色でエルフ耳だった場合十中八九火精族だそうだ。


ダークエルフとかはいないのだろうか?


「すいません、これは一体……?」

「うぉ、気付かなかった!嬢ちゃんこの国に来るのは初めてかい?なら仕方ねぇ。……こりゃ辻斬って言ってな。魔術師さん達が街中でルールを決めて戦うんだよ。一種の催しみたいなもんだ!」

「へぇ……ありがとうございます」

「おう、嬢ちゃんも楽しめよ!」


火精族の人から離れ、近くのベンチにいき座りながらその辻斬を眺める。

恐らくは、PKフィールドだからこそのプレイヤー間のお遊び的な何かなのだろう。

コロッセウム外での修行的意味もあるのかもしれない。


まぁ、思いっきり端から見れば殺し合ってるようにしか見えないのだが。


「参った!降参だ!」

「ふぅ……ありがとよ。中々だったぜ」

「いや、こちらこそ。君のお陰でどこが足りてないか分かったよ」


何やら終わったようだ。

片方の……光る剣を持っていた男が負けたようだ。

……ふむ、殺すまではやらないのね。というかあの男の人どこかで……?


見るものも終わったし立ち去ろうとした、が。

肩をガシィと何者かに掴まれてしまう。


「まぁ待ちたまえよ。君」

「……なんでしょうか」


見れば、先程負けていた男が私の肩を掴んでいた。

騎士のような装備を着込んでいるために、一見魔術師には見えそうにない。


「もし良かったら僕と戦ってくれないか?」

「え?……いやいや何故?」

「君、プレイヤーだろう?ここにいるって事はコロッセウムに挑みにきたとかじゃ?」

「……そうだったら?」

「僕と戦って、コロッセウムの予行練習をしてもいいとは思うよ」


ニッコリと彼は笑う。

どうしようか。受けるのは良いのだが、あまり手の内を晒したくはないという考えもある。

……提案してみるのも悪くはないか。


「あの、出来れば挑む前に色んな人の目に触れるってのは……」

「じゃあ街の外に出よう!そこなら幾らでも人目につかない場所があるだろうし」

「それなら……」


人目につかないのならば、良いだろう。

いや待て。人目につかないという事は。

……この人、殺しても問題ないのでは?


「良いですよ、行きましょうか」

「よし!じゃあこっちです。森があるんで、そこ使いましょう」


彼に連れられ移動する。

歩き方を見る限り、どうにも魔術師には見えない。

どちらかといえば、前にやっていたMMOの……そう、前衛剣士のような歩き方だ。


周囲の警戒をしながらも、腰の剣にすぐ手が届くように歩く。

明らかに魔術師ではない動きだ。


「ええっと、貴方は…」

「あっこれは失礼。僕はホーネットよろしく」

「シロです。よろしく。……で、ホーネットさんこのゲーム始めてどれくらいなんです?」

「ん、僕はまだ1ヶ月程度だね。前は他のMMOをやっていたんだ」

「へぇ……」


やはりそうか。

ならば、あまり近寄って短剣を振るうのはやめておいた方がいいかもしれない。

近接戦闘が出来る相手に、近接で挑むのはリーチ的にも経験的にもまだ足りないからだ。


「何故このゲームに?」

「端的にいえば、元々居たゲームのギルマスが辞めちゃったんだよね。……その人が居たから続けられたり楽しかったんだけどさ。ギルマスがいないんじゃあねぇ?だから丁度良かったんだ」


ふむ、ギルマスが辞めた。

そういえば私も、前のゲームではギルドマスターをやっていたっけ。

かなり大きくなったギルドだったが、全部副ギルマスに押し付けて来ちゃったなぁ。


「ギルマスいい人だったんですね」

「あぁ、いい人だったよ。女性だけどハンマーやら槍やら振り回してね。ギルドの前衛衆は皆、彼女から色々教えてもらっていたんだ。身体あんまり大きくはないんだけど、それでも全然敵わなくてね。確か丁度シロさんくらいの大きさだったかな?」

「へぇ〜……」


そういえば、私も前ゲームではハンマーや槍を使っていたっけ。

今では短剣しか結局使っていないけれど。

……いや、まて。


「ね、ねぇ。ギルドの名前って何だったんです?」

「ん?【Magician's Night】って名前だけど、どうかした?」

「いっ、いえ。へ、へぇ〜魔術師達の夜?って意味です?後衛が多かったのかな?」

「いや、特に多くはなかったかな?」


ギルド名に聞き覚えがある、というレベルではない。

それ、私のギルドだ。私が副ギルマスに「あ、他ゲーやるからギルマス投げるねっ!じゃ!!」と言って投げた元ギルドの名前だ。


ということは、だ。

彼はそこにいたメンバーということになる。

……大所帯になってたからなぁ、誰だろう。


いやまて。誰とかじゃなく、ここでバレてしまったらどうなる。

……なんで突然引退したんですか!戻って来てください!とか言いそうだなぁ彼。


やっぱり殺して、私に話しかけたのが間違いだったとか考えさせた方が良いのかもしれない。

よしそうしよう。

元ゲームの知り合い(かもしれない)には、出来るだけ会いたくない人種の為、早めに決着をつけてしまおう。


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