敵と私と
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-敵対者視点-
クロエとハロウが火を放ちながら談笑している間、放たれている側では。
「くっ、来たわ!防御魔術!!」
「了解!【結界-呪絶】展開!」
男が迫りくる炎へと手を翳し、魔術を発動させる。
結界といっても、おおざっぱに分けると2つの種類がある。
始まりの街や、帽子屋が張っていた結界が、対生物用。
そして現在男が張った結界が、対魔術用。
対生物用は、一定範囲内の生物に対し様々な制限をかけたりデバフをかけたりするのが主な運用法として知られている。
対魔術用は、その名の通り魔術を防御するための……よくファンタジーなんかである防御結界なんかがこれにあたる。
男が使ったのは、当然対魔術用結界。
半透明の青っぽい盾が出現し、迫る炎をすべて防ぎ切った後砕け散った。
「あっちち。クラスが結界術師の俺が張った結界を破ってくるかぁ…クリス、どうするよ?」
「おそらく固有魔術か何かでしょうね……位置を把握した上で撃ってきたってことは、攻撃者は索敵魔術がない、と考えるのがセオリーかしら」
「一応こっちも【魔臭捜犬】で位置特定は出来てるわけだし、座標攻撃すっか?臭い的にまだ動いちゃいねぇし」
「そうね、準備するわ。また攻撃来たら頼むわね、リック」
「了解」
クリスと呼ばれた女は、男の後ろに回り魔力を高め始める。
リックは周囲を見渡しながらも、いつでも結界が使えるように魔力の臭いを注意深く索敵していた。
【魔臭捜犬】。
常時発動型の、パッシブ型固有魔術。
効果は魔力の臭いというものを嗅ぎ分け、対象がどこにいるかある程度把握できるというもの。
但し、魔力の臭いを嗅ぐには、一度その相手の発動させた魔術を見る、もしくは受けなければならない。
また、相手の位置は特殊ウィンドウによって座標が表示されるようになっているため、デメリットをどうにか出来るのならかなり便利な固有魔術だろう。
今回で言うならば、リックは霧によって感知を『受け』、その後飛んできた炎を結界で『受けた』。
それにより、敵の2人組の大体の位置は把握している。
「準備完了!リック、座標送って!」
「ほいほいっと」
リックはウィンドウを動かし、特殊ウィンドウに表示された2人の座標をスクショで送る。
「ありがとう。【詠唱強化】済みの座標攻撃いくわよー…!【頭上の林檎は撃ち抜かれる】射出!」
クリスは、いつの間にかどこかから取り出していた弓を、矢をつがえずに弦を引き、そのまま放つ。
すると、弓からは光る矢が2本飛び出し、そのまますぐにどこかへ消えていく。
【頭上の林檎は撃ち抜かれる】。
座標を指定し、そこに対し必中の魔力の矢を放つというだけの固有魔術だ。
そもそも相手の座標を知っていることが前提となるために、使い勝手は悪い攻撃系の固有魔術だが、リックによる【魔臭捜犬】の座標表示によってそのデメリットはなくなっている。
「よし、射出完了!リックどう?相手の反応!」
「おうちょっと待ってな……」
もう勝利を確信しているのか、満面の笑みでこちらに聞いてくるクリスを見ながら、リックは特殊ウィンドウを更新する。
そして、その表示をみてリックは目を見開いた。
「相手さん、まだ生きてるっぽいぞ……」
「……それほんと?」
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-クロエ視点-
「おっと、シロさん。こっちの攻撃防がれたみたい」
「そうみたいですね、私の感知でもまだ相手さん生き残ってるのわかりますし」
【霧海】では、敵側の片方が少し後ろに下がったのを確認できた。
私としては、このまま【変異】を使い敵さんの足元に槍を出現させるのも手だと思うが、しかし……。
ちら、とハロウを見る。
彼女の使う魔術を見てみたい、という欲がある。
しかも、私の使う魔術が相手に通用するかどうか、という不安もある。
「じゃあ私は私で、また同じランタン使いましょう。今度は強化も加えるわ」
「あ、あくまでランタンだけなんですね」
「そりゃそうよ、まだどれくらい敵が残っているかわからないから、手の内はできる限り晒さないほうがいいのよ。特に私のこのランタンなんて、よく決闘で使ってるからあんまり隠しても意味ないしね?」
そういうものなのだろうか。
「あ、シロさん。一つだけお願いしたいことがあるのだけど」
「なんです?」
「多分、相手から攻撃が来ると思うから、それを防いでくれる?」
「……私が?」
「えぇ。私これから発声も思考も使えなくなるから、結界すら張れないのよ」
……胡散臭いが、思考発動で【チャック】を使えば飛び道具に対しては余裕で防御はできるだろう。
しかし、それは攻撃が視認出来ていることが前提になる。
じゃあどうするか。
ならば、攻撃が来そうな所にあらかじめ【チャック】を置いておけばいいだろう。
私が狙うのならばどこを狙う?
致命傷を食らわせるのならば、頭か心臓のどちらかを狙うべきだろう。
……ならば、私達の頭上と胸の前に【チャック】の口が開いた状態で出現させる。
「準備はできましたよ」
「ふふ、ありがとう。じゃあ始めるわね……【強化-詠唱強化】開始。『【一度我が魔を防ぎし者へと鉄槌を与えん】【これから放つは憎悪を糧に燃える灯】』【詠唱強化】終了。【一つ。命の灯を燃やしましょう。】【髑髏のランタンよ、迫る悪意を焼き払いたまえ】」
彼女が先ほどよりも長い詠唱を唱え終わると、先ほどよりも幾分か大きい炎をランタンが吐き出す。
それと同時に、私達の少し前の空間から突然光る矢が出現し、そのまま【チャック】へと吸い込まれていく。
予想通り、心臓狙いに飛んできたため助かった。
「さて、少し待ちましょうか」
「そうですねぇ……」
リアルタイム戦闘、というよりかはカードバトルのようなターン制バトルのようになっているが、まぁいいだろう。
別に今危険を冒す必要はないのだ。




