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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第二章 新しい土地で知ろう

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臆病なのか、それとも。

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします


しばらくすると、ハロウが魔術を放った車両は静かになった。


「ハロウさん、今のはどういう魔術で…?」

「ふふ、ちょっとだけ苦しめるだけの魔術よ、仲間同士で。最終的には自殺もさせるので敵が残るってことはないわ、安心して」


微笑みながらそう返してくれる。

今まで出会ったプレイヤーの中でこの人がぶっちぎりでやばい人なんじゃないか、と思い始めた。

できるだけ敵には回したくはないな……。


「とりあえず、前の車両に移動しますか?」

「そうね、後ろから攻められても仕方ないし……」


ガラ、と再びドアを開ける。

私たちのいた車両とあまり変わらないが、それでも争った跡があるため荒れているように思える。

しかし、これで1チーム狩れたということになるのだろうか。


行動方針は、見つけたら殺すとのことなので進んでいけば戦闘はできるのだが…少しだけ、面倒なようなそんな感じがしないでもない。

しかし、自分は直接的な攻撃魔術は持っておらず、とりあえずこれ撃ち込んどけば大丈夫というものがないのだ。


【怠惰】に【憤怒】、【怒煙】なんかは、こういう場合に役に立つかと言われればそうでもない。

実際、二つの大罪の名を関した魔術は、相手がデバフ耐性を整えていた場合簡単に弾かれてしまう程度のものであるし、【怒煙】に関しては相手がきちんと日頃からPK対策として結界か何かを張っていれば、そこで止まってしまう程度のものだ。


つまり、今の私が使える手は決め手にはならない。

それに左腕のこともある。

最悪、このぬいぐるみの左腕で受ければ身体にダメージは行かないが、火を使った魔術だった場合はまずい。

そのまま私も燃え尽きる可能性が出てくる。


「?シロさんどうかした?」

「あぁ、いえ。特にどうかした、とかじゃないです。大丈夫ですよ」

「それならいいけれど……さて、このまま前へ前へと進んでいきますか」


ハロウの言葉に促され、そのまま進んでいく。


「シロさん。次の車両は貴女一人で制圧してみましょうか」

「えっ?」

「いえ。危なくなったら助けますよ。ただ……貴女、今何か変なこと考えていたでしょう。どうせ私一人で戦闘は問題ないーとかそんなの」

「そんなわけ……」


一呼吸し、ハロウは続ける。


「そんなの気にしなくていいの。というか、私がシロさんよりできるのは当たり前です。先駆者嘗めないでください。……無理だったら無理、これでいいのよ。みんな言わないけどね?」

「い、いや、えっと、その……はい」


実際、その通りである。

無理だったら無理、そう言えばいいのだ。

これはゲームで現実の仕事や義務ではない。それがまかり通るのがゲームなのだから。


「よろしい。で、次の車両制圧……できますか?無理ですか?」

「……できます」


一度考えを改めたはずなのに、また諭されている。

流石に自分が情けないどころか、穴があったら入って埋まりたいくらいには恥ずかしいが、いいだろう。

次の車両は私一人で制圧してみよう。【霧海】を使えばある程度はできるだろう。



-----------------------



「準備できたんで、少しだけ離れててください」

「はーい」


ドアを開ける前に、隙間から【霧海】を中に薄く流し込み、内部の状況を確かめる。

……二人、固まってこちらに背を向けているのがわかる。

【霧海】伝いに車両全体に【鑑定】をかけてみる。いつかの時計塔で使った、罠があるかどうか確かめるためのものだ。


「……罠はなし。【五里霧】発動」


音を立てないように、そーっとドアを開ける。

私の姿に関しては【五里霧】によって基本的には見えないため、このまま後ろまで近づけば終わりだろう。


【鑑定】で確かめたとはいえ、もしかしたら【鑑定】に引っかからない罠もあるかもしれない。

一応周囲を確かめながら進んでいく。

男二人、どっちも魔術師というよりも錬金術師のような恰好をしている。

そういえば、WOAで魔術師っぽい見た目してるのはハロウ以外ほぼ見たことがないような気がする。


「……どうする?前にいくか?さっきの後ろの叫び声的に戦闘してたんだよな?」

「だが、今は静かだ。ここまで時間が経っているのになぜこちらに攻め込んでこない?なら俺らは前に進んだほうがまだいいんじゃないか?」


あら、作戦タイム中。

申し訳ないけど、そのままサクッと死んでもらおう。

右手に握る護身石の短剣を、左側の男の首に突き刺す。下手に身体を傷つけるよりも、致命傷となる首を狙ったほうが楽だしね。


「ぐっ……?!」

「なっ!?敵襲か!!!くそ、どこだ!?」


【五里霧】がどう相手側に見えているかわからないが、こちらからすると目の前に突っ立っているのに気づかれないというのは、見ていてかなりシュールな光景だ。

男の首からナイフを捩じるようにしながら引き抜き、そのままもう一人の首にも同じようにナイフを突き刺す。


このゲーム、ナイフを引き抜くときに力が必要かと思いきや、実際はそうではない。

ゲーム側でアシストされているのか、あまり力をいれずともスルッと抜けてしまうのだ。

逆にそれがいいのか悪いのかといわれると、どちらともいえない。

慣れていないと、引き抜くときに力を入れてしまい、そのまま尻餅をついてしまう。


一応オプションを開けばそういう設定ができなくはないのだが、私はそのままにしている。

リアルでも女の私は、力があるかと言われればそうではないからだ。

こういうシステムは使えるのなら使ってしまわねばもったいない。


と、そのままにしていると男二人とも光になって消えていったため、【五里霧】を解く。


「ハロウさん、終わりましたよ」

「お疲れさまです。シロさんって、どちらかというとアサシン寄りの戦闘スタイルだったのね」

「いやぁ、まぁこういう戦闘初めてなんで、基本的に姿を隠したほうがいいのかなって」


さて、これで2チーム簡単に倒したが、他のチームも同じように潰しあっているのだろう。

早ければ既に残りチームは半分以下になっているんじゃあないだろうか。


ここからが気合の入れどころなのかもしれない。


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