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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第二章 新しい土地で知ろう

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列車に乗って

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします


ヴェールズ首都 シスイ - AM


腕の縫合から二日後。

WOAのアプデがあり、各国を繋ぐ列車が実装された。

一応アプデ内容を確認したが、私に関係ありそうなものはレイドボスへの参戦報酬についてだ。


レイドボス…館の支配者に関しては、ほぼ私が倒したものだが、それの参戦報酬、MVP報酬は後日集計後各位に配られる形になるらしい。

今までもそうだったようで、この点について掲示板を見ても特に引っかかっている人はいないようだった。


さて。

列車が実装されたことにより、各国を簡単に行き来できるようになったのは言った通りだが、ここで列車に乗るにはどうすればいいのか、という疑問が浮かぶ。


答えは簡単。プレイヤーならば無料で乗せてもらえるのだ。

いや、正確には特に問題を起こしていないプレイヤーにつき、だが。


いくらどこでもPK可能な世界でも、法はある。

あくまでみんなが楽しく遊べるように、と布かれたものだがこれを守っていないものには運賃が発生するというものだ。

まぁ私には関係がない話のため、特に詳しくみてはいないのだが。


「よーし、目指すは火精族の国ドミネ!」


私は目の前に止まっている列車に意気揚々と乗り込み、空いている席を探す。

中はコンパートメント席……外国ではよくある個室型の座席となっていて、かなりの人が列車に乗っているためか空いている席を探すのが一苦労だ。


「お、ここ空いてる。……失礼します」


扉を開き、中へ入りつつ言う。礼儀は大切だ。

中にいたのは、いかにも魔女といった風の女性で、真っ赤な長い髪が印象的だった。

おとなしそうに見える。


「えっと、ここ空いてます?大丈夫だったらご一緒させてもらえると嬉しいんですけど」

「あぁ、空いているわ。どうぞ」


彼女はにっこりとこちらへ笑いかけ、座るように促してくる。

一礼し、扉を閉め丁度彼女の向かいに座ると、彼女は話し始めた。


「どうも、私の名前はハロウよ。貴女は?」

「えっと、どうも。シロといいます」

「まぁ、シロさん。これからドミネまでよろしくね」


一応彼女に伝えるのは偽名にしておく。

長い付き合いになるとは思えないし、そもそもこのゲームでアバターネームをきちんと名乗ること自体珍しいことなのだ、と赤ずきんから教わった。


「シロさんはドミネは初めて?」

「えぇ、というのもこのゲームを始めたのも最近なので…。ハロウさんは?」

「私は出戻りよ。ちょっとシスイでやることがあったからドミネから来てただけなの。丁度良かったわ」


薄く彼女は微笑む。

なんだかあまりWOAには合わなそうな雰囲気を持った人だ。

でも、だからこそ少しだけ警戒はしておく。


リセットボタンの件もある。

今までも、警戒警戒と言いつつも、まったくもって警戒できていなかった実績がある私だ。

今回からはきちんと頑張ろう。


『ドミネ行魔導蒸気列車、発車いたします』


と、ここで車内アナウンスが入る。

これから出発のようだ。……見知らぬ人物が近くにいるとは言え、こういう出発の瞬間なんかは少しだけ興奮してしまう。


「出発ね」

「えぇ、ドミネへ!」


そして私たちを乗せた列車は走り出す。

帝都と呼ばれる、火精族の国ドミネへと向かって。



-----------------------



シスイを出発し、30分ほど経っただろうか。

その間ハロウと様々なことを話した。


彼女はコロッセウムによく入り浸るプレイヤーで、実際に自分も試合をするそうだ。

大人しそうな雰囲気からは想像できなかったために、少し驚いた。


コロッセウムのことも教えてもらえた。

コロッセウムには決闘王者と呼ばれる、コロッセウムに挑むプレイヤーの中でもトップに君臨するプレイヤーがいるそうで。

そのプレイヤーの戦い方が特殊なのだそうだ。


詳しく聞こうとしたが、それは自分の目で確かめたほうがいい、と言われてしまい詳しくは聞き出せなかった。

でも、なんでも骸骨モチーフのランタンを取り出したりデバフを大量に仕掛けてきたりなどする、とだけ教えてもらえた。


「……でもハロウさん、結構コロッセウムに詳しいんですね。入り浸ってるって言ってましたけど」

「えぇ、そうね。元々私が最初に向かったのがドミネだったから、その分思い入れも強くてね」

「へぇ、他の国じゃなくてドミネに?」


私の問いに彼女は軽く頷きながら話し出す。


「と、言っても理由は簡単なのよ。私の場合はね。決闘、っていうのがしてみたかったの」

「決闘を、ですか?……デメリットなしっていう意味での?」

「そうね。それ以外って死闘っていうもの。この世界だと」


彼女は恥ずかしそうに少し笑う。

スポーツ感覚…というとまた違うと思うし、本気でやっているプレイヤーに悪いと思うが、このWOAというゲームで試合という形をとり、やられてもやっても特にメリットデメリットなしというコロッセウムの戦闘。


元々私の今回の目的でもあるそこに先に挑み、尚且つ多くの情報を持っている彼女は現状仲良くはしておきたい対象だ。


「それでコロッセウムに挑んでみて、見事にハマってしまったと」

「そうね。あそこで戦っていると、本当に楽しくて楽しくて」


イメージはあんまり女性が寄り付かなそうな所だと思ってはいたのだが、割とそうでもなく、ハロウみたいにハマってしまう人はどっぷりと浸かってしまうらしい。

もしかしたらおかしくない同性の知り合いも増えるかもしれない…。


少しだけ、楽しみだ。


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