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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
番外1

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57/242

むかしのはなし

一本だけ番外を。

どこで挿し込もうか迷っていた話なのですが、挿し込むならここかなと。


カランコロンと、音がなる。


「やぁ、テセウス」

「おや……珍しい。赤ずきんじゃないか。君が直接ここに来るとはね」

「あは、私だって色々買い物とかあるんだから来るさ」


明らかに店仕舞い中だが、気にしないで商品を物色していく。

今日来た理由はほかにあるが、まぁいいだろう。


「一応、店仕舞い中なんだけどね…」

「あぁ知ってるさ?」

「はぁ……何がほしいんだい?」


まだ片付けられていない商品棚を見ながら考える。

はて、何か買ったほうがいいだろうか。

いや、別に買わなくてもいいか。


「いや、特に必要なものはないよ。ちょっと話があってきたんだ」

「はぁ……店仕舞い終わってからでもいいかい?」


頷いておく。

待つ間その辺にあった椅子に座り、読書でもしていよう。

さて、どれくらいかかるだろうか。まぁ2~3時間ほどあれば終わるだろう。

彼もこれが初めてではないから、手際が良いはずだからだ。


「いつもそれだけ素直ならいいんだけどね…」

「何か言ったかい?」

「いや、何も」



-----------------------



「さて、終わったよ赤ずきん。話ってなんだい?」

「ん、あぁ。少し昔話でもしようかと思って。ほら、私ってば【童話語り(ファンタジーテラー)】だろう?」

「うまくもないし、それなら昔話ではなく童話を語ってくれよ?」

「はっはっは、それはちょっと難しい。なんせそれをしてしまえば私のネタがなくなってしまうからね」


テセウスがいつの間にか用意してくれた紅茶に口をつけ、一息。


「ずばり、今日はあの時……少し前にあったある女の子の話をしよう」

「ほう?」

「いやぁ、彼女は可愛くてね。ついつい観察してしまったんだ。これはその一部の話さ」


そう、一部。

彼女の事を話すのならば、これから話す話は少し短すぎる。



……彼女がと初めて出会ったのは、この世界ではなく現実。

彼女は少し、いや普通の成人にしては幼く見えてね。

正直初めて見たときは中学生か何かかと思ったくらいさ。


ん?それがどうしたんだって?おいおいテセウス。見た目の話は重要だぜ?

むしろ私はそれを重視してサバトメンバーに勧誘している所もあるからね。


さて、話を戻そうか。

その子は、日本人ではなく外国人。金髪碧眼の女の子。

本当にお人形さんかと思ったくらいさ。まぁ、今の時代正直外国人は珍しくはないんだけどね。

本当に便利になったもんだよ。翻訳ソフトのおかげで、その国の言語を一切知らなくても現地人と井戸端会議ができるくらいにはなってしまっているのだから。


ただ、その女の子は少し変わっていた、というか。

どう変わっていたと思う?

……ふむ、奇抜な性格をしていた?いやいや、それだけだったら私の記憶にこんなに色濃く残らないさ。


その子はね、でっかく『ゆいがどくそん』と書かれたTシャツを着ていたんだ。

平仮名でだぜ?面白い子だろう?

流石の私も顔に見とれた後、そのTシャツに気付いて吹き出しそうになってしまってね。

これはもう話しかけるしかない、と思ったわけさ。


なんだいその顔。まるで私のことを阿呆か何かだとおもっていないかい?

その通りだって?冗談も大概にしといたほうがいいぜテセウス?

私みたいに聡明な女性を捕まえて、阿呆だなんて。


さて、でその変なTシャツを着た彼女だが。

話を聞くに、現在やることがないらしいんだ。

……うん、そうだよ。成人している。それに大学も出ているそうだ。

完全に無職だね。


で、そんな彼女だが、定期的にお金は入ってくる立場にはあるらしく。

私はそんな彼女に、WOAを勧めてみたわけだ。

確か、そう。私のその時の誘い文句はこうだったはず。


 曰く、そのゲームは始めの街以外すべてがPK可能フィールドである。

曰く、そのゲームは本当に現実のような世界が広がっている。

曰く、そのゲームは大まかな職業は魔術師しかないという。

曰く、そのゲームはプレイヤーごとに固有の魔術が与えられる。


 そんなゲームがあるんだけど、やってみないかい?


なんだって?完全に危ない奴だって?

こんな美女を捕まえて危ないだなんて……ん?それはもういいって?わかったよ。


まぁ我ながら、この誘い文句はさすがにどうかとは思ったんだけどね?

彼女、やる気になっちゃってさ。今そのゲームは買えるのか、とか色々根掘り葉掘り聞かれちゃってね。


彼女、色々危なそうだからその時に触りだけは教えてあげたんだけどね。

もう始めているとは思うんだけど、どんなアバターでどんな名前かは知らないから、助けようとも助けられないんだよね。


まぁ、ゲームだから気軽にやってくれればいいとは思うんだけどね。

彼女、見たところ深く自分だけで考えそうなところがあるように見えたからさ。

そういう意味では、あの金髪ちゃんとクロエちゃんは似てるかな。



-----------------------



「と、いう話なんだ」

「えっと……オチは?」

「ないよ、こういう子がいたんだーって話」


テセウスは、はぁ…とため息をつくとそのままティーセットを片付け始める。


「おや、もう行くのかい?」

「あぁ、次はポッロに行く予定だからね。少し早めに出ようかなって」

「列車はいいのかい?あれのが安全だろう?」

「いや、あれは恐らく初日に何かしらの愉快犯が出るよ。だから私は乗らない」


少し笑いながらテセウスは店を消す。

このまま座っているとそのまま尻餅をつくことになるため、椅子から立ち少し店から離れる。


「じゃあまたしばらくは君の店で物を買えなくなるわけか」

「はは、君ならポッロまですぐに来れるだろう?」

「いやぁ、私前にあそこで結構やらかしちゃっててねー。不信感結構溜まっちゃってるんだ」

「赤ずきん、君ってやつは……」


あははー、と少し笑う。

ではまた、と去っていく彼を見送り私も拠点へ戻る。


そういえば何故私は彼女の事を思い出したんだろうか。


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