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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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空から降ってきて、まるで演説するように

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします


ガビーロールとフレンド交換を済ませ、そのままシスイへ帰ろうと考えた時だった。


「みーっつけた」


上からそんな声が、今一番聞きたくない声が聞こえてきた。

その声の元を確認するために、上を向こうかと迷うことはせず、戦闘態勢へと入る。

左腕がなくなっているが、この相手は待ってくれないだろう。


「……どうも、リセットボタンさん」

「やぁ、クロエさんさっきぶりだね。……と、おやガビーロール君まで。やっぱりゴーレム関係だからってことで引っ張り出されたのかな?」

「おやおや!リセットボタンさんじゃあないか!!久方ぶりだな!あぁそうさ!ほぼ事情は聞いていないがね!」


リセットボタンは、大きな鷹型のホムンクルスから降りるとこちらの目の前10mほどの位置に降り立った。

館の支配者(心臓)と戦っているときにくればまだあれなのに、今になって、安心したときに限ってやってくるなど質が悪い。


「いやぁ、さっき仕留め損ねたからどうなったかな、と思ったけどね?まさかガビーロール君と組んでレイドボスを倒しちゃうなんて思ってもなかったよ。そこは素直にすごいと思うよクロエさん」

「……ありがとうございます。できればその言葉だけで帰っていただけると幸いなんですけど」

「それはちょっと違うじゃない?」

「おいおい君ら二人!よくわからない話をしてないで、私にもわかるように言ってくれないか!!」


10mという距離は、私の短剣が届かない距離ではあるが、リセットボタンの【過ぎた薬は猛毒に】は恐らく致死圏内だろう。

ほかにまだ固有魔術があった場合、私は防御手段がほぼない。

それに、私の固有魔術は二つとも見られてしまっている。

【チャック】と【霧海】の効果が詳細に割れていないとしても、どういう効果を持っているかくらいは割れていることだろう。


そんな状態でリセットボタンがそれらを使った回避、防御を許してくれるとは思えない。

少しの間彼女の操るホムンクルスと戦ったからわかること。


彼女の戦い方は、相手の持つ戦術を悉く踏み砕いていくようなものだ。

こちらが多く戦術を見せるほど、彼女はそれよりも多く、そしていやらしいほどに沢山の策を巡らしこちらを潰そうとしてくる。


それの一部が彼女の使役するホムンクルスであったり、固有魔術であったりするのだろう。

先の戦いでは、館の支配者の攻撃自体利用し私を追い詰めていた。


「いやね、私って固有魔術をあんまり人に知られたくない人なんだ」

「は?……それはみんな同じなのでは?」

「そうじゃない、意味合いが違うんだよ。クロエさんの言うみんなっていうのは、サバトメンバーや友達には持っている固有魔術をポロッと見せてしまっても許せる人達。でもね、私はそうじゃあない。できる限り知ってる人がいてほしくないんだ」


このゲームをやっていて何を言う、という感じではある。

実際、オンラインゲームという性質上ここで殺したとしても、またどこかでリスポーンするのだから、知っている人間を減らそうにもそれはできないのではないだろうか。

私が怪訝な目で見ているのに気付いたのか、リセットボタンは鼻で笑った後にこう言った。


「いやね。確かに、オンラインゲームっていうのは殺されても全くもってプレイヤーはダメージを受けない。それが本当の命じゃないし、殺されたとしてもまたその世界のどこかから旅を再開できる。……だからこそ、私の固有魔術が有効なのさ」


先ほどは知っている人が少ないほうがいいといい、今度は有効という。

彼女は興奮したような顔をしながら続ける。


「わけわからないって顔をしているねクロエさん!オンラインゲームの世界でプレイヤーを殺しても意味がない!それはそうだ私もよくわかっている!ならばこの世界での本当の死とは何か!!デスゲーム的な意味合いじゃあないよ。……そりゃ簡単さ。『引退』だ」


彼女は手を左右に大きく広げながら、笑う。


「引退まで追い込めばいい。相手が引退するまでリスキルし続ければいい。幸いこのゲームは始まりの街以外はPK可能フィールドだ。それがたやすい。……何?それの何が楽しいのかって?メリットはあるのかって?ははっ、そんなもの決まっているじゃあないか。『私は秘密を守れて、尚且つ人を殺せて楽しい』。これで十分だろう?動機としては」

「……それがさっき私を襲った本当の理由で?」

「んー。まぁほかにも色々あったんだけどね?例えば、初心者のくせに生意気だ……とかね?」

「ほう、君のことは前にあったあとからよく聞いていたが、まさかここまでこじらせていたとはね!!いやぁ、その性格自体は嫌いじゃあないよ!!」


少し一名全く私たちと違うテンションで話しているが、まぁいいだろう。

しかしだ。

それならば、なぜテセウスの店から出た瞬間に私を狙って殺さなかったのか。

生意気ってだけならあの時点で殺してもよかったはずだ。


「テセウスさんの店であった後、私が帰っていくときに幾らでも殺せたと思いますけど、なぜ殺さなかったので?」

「あの時はそこまで考えてなかったよ。本当にただ単に初心者さんが少し背伸びした装備で頑張ろうとしてるんだなーふふふ死ねってくらいだったし」


このリセットボタンという女性は、どうやら頑張ろうとしているものを見ること自体が嫌いなようだ。

話を聞いても無駄かもしれない。

短剣を構える。


「さぁ、第二ラウンドといこうかクロエさん!」

「えぇ、やりましょうか。第二ラウンド……」


ボスとの戦闘が終わり、左腕がない状態だが仕方がない。

戦闘、開始だ。


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