さぁ松明に火を灯そう
もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします。
10月もよろしくお願いします
「ちょっと待って、ガビーロールさん落ち着こう。ログ見る限りゴーレム使えばその分進行度が上がるんですよね」
「あぁ、そういうことになるね!」
少し経ち、二人ともある程度落ち着いた後。
改めて起こったことを考え直してみた。
「じゃあこれゴーレムを吸収させ続ければ私変換されずに済むのでは?」
「いやそれはいいけど!君、それ接続されている君もどうなるかわからないよ!!」
それに関して、私も何も考えていないわけじゃあない。
変換進行度が100%になるとどうなるか。十中八九初めに見た館の支配者が出来上がるんじゃないだろうか。
その場合近くに居るガビーロールはまだ離れればいいから平気だろう。しかし、血管で接続されている私はどうなる?
最悪、私自身もそのまま館の支配者の素材……もしくは館の支配者の内部に捕らわれる形になるんじゃないだろうか。
でも、私にも考えがある。悪いフラグっぽく聞こえるけど。
「さっきガビーロールさんがゴーレム作ってた時に思ったんですよね。ゴーレムってすぐにその形に成形されるわけじゃあないって」
「うん、それはどのゴーレムもそうだね!それがゴーレムの短所であるし、でもそれがないとゴーレムを大量に即時召喚して物量でゴリ押しっていうのができてしまうからね!!」
「なら、成形途中の心臓を攻撃すればいいんじゃないかって思うんですよ」
成形途中は、ある程度リソースを使っていると考えている。
ある程度反撃はされるだろうが、まぁそれは覚悟の上だ。むしろ反撃してくれたほうが、防具のおかげで追加で【怠惰】を付与できるため良いのかもしれない。
「ふむ…じゃあ私はゴーレムを沢山作って触れさせればいいんだね?!」
「えぇ、あとはトドメもお願いします。私じゃあトドメ刺し切れない気がするんで。もし私が吸収されたら思いっきり殺してくださいね」
「それは言われなくてもさ!」
というわけでガビーロールには質より量、数多くのゴーレムを作ってもらう。
時間はかかるが、心臓には【怠惰】を継続してかけているため、進行度はそこまで進まないだろう。
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「よし準備できたよ!じゃあ触っていくからね!!」
「こっちも大丈夫でス!やッテくだサい!」
ガビーロールがゴーレムを作っている間、私は【憤怒】をかけ自身にステータスをブーストさせていた。
左手に心臓を持ち、右手に樹薬種の短剣を握る。左手ごと貫いてやるつもりで一気に刺してやるつもりだ。
ガビーロールは何体かを自分の周囲に待機させ、そのほかの……5~6体のゴーレムをこちらの心臓へと触れさせていく。
触れるごとに心臓は一回りずつ大きくなり、ログで見える変換率も上がっていく。
『変換中です:72%』
一体目が触れた。
『変換中です:78%』
二体目が触れた。少し小さい個体だったからかそこまでパーセンテージは進んでいない。
『変換中です:85%』
三体目が触れた。順調に進んでいく。
『変換中です:94%』
四体目が触れた。あと少しだ。
『変換中です:100%……肉体を形成していきます』
「きた!100%!!」
右手の短剣をそのまま左手の人の頭くらいに大きくなった心臓へ突き立てる。
それに反応してか、心臓から何本かの血管がこちらの右腕に向かって突き刺さってくるが、ここで止めることはしない。
ぶちゅり、と何かを潰すような音と共に短剣が心臓へと突き刺さる。
しかし心臓はまだ動いている。それもそうだ、心臓を刺しただけで終わるのならばレイドボスなんてやっていないだろう。
まだ動きを止める必要がある。
「【大罪-怒煙】発動!」
樹薬種の短剣に対し【怒煙】を付与し、そのまま右手で心臓をぐちゃぐちゃとめった刺しにする。
刺す毎に【怒煙】による黒い靄が心臓に巻き付き、少しずつその活動を阻害していく。
心臓のほうも負けじと血管を伸ばし、周囲の土を集め私ごと身体を形成しようとしてくる。
と、ここで、集まり始めていた土がほかの力によって心臓とは真逆の方向へ集まっていく。
見ると、ガビーロールがゴーレムを作りながらこちらへサムズアップしていた。
彼はこのゲームの中でも珍しい、良い人の部類なのだろう。ありがたい。
『身体を形成中です』
「まだまだァ!」
心臓の形が崩れるまで刺し続ける。
左手もそのまま巻き込んで刺してしまっているが、気にしない。気にできない。
『身体 を 形成t』
少しずつログの表示が崩れていっている。
心臓から出てくる血管の勢いも落ちてきている。
「ガビーロールさん!トドメお願いします!」
「任された!」
ガビーロールはその両の手に炎を生み出しつつ、こちらへと走ってくる。
「少しだけ熱いかもしれないが、それは我慢してくれよ!【編み細工の人型牢獄】着火!」
両手をそのまま心臓へ押しつけ、固有魔術を発動させる。
すると、心臓と私の左腕を巻き込みながら炎が人型の何かへと変化していく。
さすがにこのままでは左腕以外にも燃え移ってしまうため、左腕を短剣を使い自ら断ち切る。欠損趣味は全くないが、今回は仕方がないだろう。
人型となった炎はそのまま心臓と私の左腕を灰へと変化させつつ、天へと昇っていく。
一定の高さまで上がると、そのまま爆発して炎は消滅した。
「あれ引火とか大丈夫なんですか?」
「それに関しては大丈夫さ!あの形になった【編み細工の人型牢獄】の炎は取り込んだ対象物以外には燃え移らないからね!」
それはよかった。
とここでログが出現する。
『ヴェールズ国に出現していたレイドボスが討伐されました。残りレイドボスは4体です。』
おそらくだが、このまま他の国にもレイドボスが出現するのだろう。
少なくとも私たちの近くに居るレイドボスはいま倒したもののみらしい。
「おつかれさまです」
「あぁ!お疲れさま!一応フレンド登録しておくかい?」
「はは…いいですね、よろしくお願いします」




