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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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消えて、されど捕まって

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくおねがいします


重石というなの対魔術装甲がなくなった館の支配者は速かった。

幾ら【怠惰】を使い片足のバランスを崩したとしても、それは変わらない。


その為に、ある程度近づけてもすぐに距離を取られてしまったりする。


「んんー…明らかにこっちの【怒煙】を警戒してるっぽい動きだよねぇこれ」


【憤怒】の靄により相手を拘束する大罪魔術である【怒煙】。但しその効果は靄を纏わせた武器などで傷付けられて始めて効果を発揮する。

現状ヒットアンドアウェイ……明らかに私の戦法を真似したかのような館の支配者の動きに、少しだけ疑問を覚える。


モンスターが学習する、という点だ。


彼らモンスターは、そもそもそこまで頭が良くない。落とし穴を掘ったら毎回落ちてくれるくらい頭が悪い。

なのに、今回の彼は明らかに学習している。

私の動きを見て戦闘でそれを活かしている。


レイドボスだからー、と言われてしまえばそれまでだが、すこしだけそれは気になった。


「まぁ今は関係ないんだけどッ」


【霧海】の感知によって予測した館の支配者の攻撃地点から離れつつ、短剣を振るう。

チッ、と刃先が少しだけ彼の腕に掠るが、彼の肌には傷が付いていない為に【怒煙】の効果は発揮されない。


少しこちらも考えて動いたほうが良さそうだ。


「……あれ、そういえば【五里霧】って今効くのかな」


そういえば。

彼に【五里霧】が効かなかった理由が、魔術を掻き消してしまうあの装甲だったのであれば、今は効くのではないか?


「試すしか…ないよね」


【五里霧】を発動させる。

念のため、一応MPポーションを使い魔力切れにならないように気をつけておく。

さて、どうなるか。


「--------ァ?」


彼は目の前に居る私に背を向け、辺りを見渡し始めた。

成功、ではあるのだが。


「あっちゃー、近付こうとするとその辺にいるってのは気付かれるのか」


近付こうとすると、大体の位置くらいは感知されるようですぐにバッと振り向かれる。

しかし、【五里霧】が使えるようになったのは大きい。


大体の位置しか分からないのであれば、こちらも手がある。


「さて、じゃあ此処からは少しだけヌルゲーになるかな?」


【チャック】の中から多くの投げナイフ(木製)を取り出す。

その全てに【怒煙】を付与しつつ、それらを館の支配者に対して投げまくる。

狙うのは足をメインに。


金属ではないため、分かりやすい傷は付かないが、内出血なんかの傷も【怒煙】の対象になるのならば。

これで相手の足は止められるだろう。


館の支配者は投げナイフが当たるたびに周囲を攻撃しているが、全く私には関係のないところばかりのため、継続して投げ続ける。

片足だけではなく、両足ともに狙う。

片足だけ縛ったとしても、ある程度動けるのだろうと考えたからだ。


「これで、どうかな!」


最後の二本を投げ、それがヒットする。

すると、【怒煙】の効果である靄が館の支配者の両足へと絡みつくように出現した。

成功、かな?

館の支配者は突然足を縛られた為にバランスを崩し、そのまま前のめりになって倒れる。


「じゃ、後は一方的に切らせてもらうよ」


一言断ってから、改めて樹薬種の短剣と護身石の短剣を装備し直す。

【怒煙】を一応付与し直してから、まずは両腕を切りつけていく。

攻撃されたら困るからね。


「これじゃまるでガリバー旅行記みたいじゃない」


戦闘、とは言えないがこれはこれでかなり楽しい。

館の支配者のほうは低く唸りながらこちらを睨んできているが、まぁ良いだろう。


対魔術装甲が無くなっても、ゴーレムらしいemethと書かれた羊皮紙は見当たらない。

おそらくは中にあるのだろうが。


「じゃ、解体……しようかな?」


背骨にあたる場所の近くから短剣の刃を通す。

【怒煙】がまだ掛かっているため、そのまま胴体にたいして黒い靄が絡みついてくるが、あまり気にしないでいこう。


少し骨が気になるが、体重を掛ければ折れるためなんとかなる。


「おや…うん、これかな」


解体、というよりも切開をしていくと、リセットボタンが言っていた術者は居なかったが、大きく脈動する心臓があった。

その表面には、羊皮紙のような何かが縫い付けられてあり「emeth」という文字が光っている。


「えーっと?これをどうすれば良いんだっけ」


そういえば、これが書かれている羊皮紙を探せとは言われていたが、その後どうするかは聞いていなかった。

まぁ、取り敢えずこれ取り出してから考えてみよう。分からなかったら攻略板で質問すれば良いし。


そのまま周りの太い血管なんかを切り、心臓を取り出す。

まだドクンドクンと脈動しているが、そういうものなのだろう。

そんな心臓を見ていたら、ピロンとログが出現する。


『肉体αの死亡を確認。再度肉体構築を行います。……至近距離に生命体を感知。接続します』


突如心臓から細い血管が伸び、私の首へ刺さる。


『接続確認。……認証。プレイヤーネーム:クロエを肉体β構築の為の素材に変換します』


「は?……はぁ?!」


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