冷静に、そして激情に
もしよかったら、感想ご指摘などよろしくおねがいします
空中に浮かぶ相手、というのは対抗策がないと相手のしづらいものである。
近接武器しか持っていないと、まず相手にどうにかして近付いてもらうか、どうにかして自分から近づく必要が出てくる。
この時点で、相手にある程度流れを掴まれていると考えたほうがいい。
次に、遠距離武器しか持っていない場合。
この場合、こちらからある程度攻撃を行う事が可能と言えるが、実の所あまり相手にし易いとも言えないのだ。
空中、空に浮かぶ相手、つまりは自分よりも上に位置する相手はこちらが何をしようとしているのか良く観察することが出来るし、そもそも鳥のような相手に銃弾などと言った遠距離武器を当てる場合、素人ではエイムに難がある。
さて、ここまで長く私論を語ったが結局何が言いたいかと言えば。
「相手が上にいるのなら、自分の位置まで強制的に下ろせばいい」
そういう事である。
近距離武器は、相手が自分より高い位置にいるからこそ不利になるわけで。
遠距離武器も、ある程度水平位置ならば素人でもエイムはつけやすい。
だが、そんなの現実では不可能だって?
そも、ここは現実ではなくヴァーチャルリアリティ。ゲームの中だ。
やろうと思えば、何にだってなれる世界。
「すぅー……」
息を吸う。大きく吸う。一旦、熱くなり過ぎた頭を冷やすように。
目標は、リセットボタンと館の支配者の殺害。
既に結構経ってしまってはいるが、改めて。
「戦闘開始」
こちらへ近付いてきていた人型を蹴り飛ばしつつ、【範囲変異】を使い狼型と私の間に落とし穴を掘る。
霧のおかげで、館の支配者をハメた時のように穴が見えにくくなっているため、下手に隠そうとはしない。
「----ィ!!」
「あぁもう!五月蝿いよ!」
鳥型が鳴き声と思われる金切り声をあげながらこちらへ突っ込んでくる。
鳥型が私の頭と同じ高さまで降りてきたのを確認してから、【怠惰】を使い少しだけ動きを鈍らせた後に、【怒煙】によって靄を纏った樹薬種の短剣で翼にあたる部分を切りつける。
すると、靄は短剣から切りつけた翼へと移り鎖のように拘束する。
【怒煙】によって起こされる【憤怒】の靄の効果だろう。自分で使ってわかったが、やはりあの時夫人から攻撃を受けなくて良かった。
人型の動きを確認する。
ちょうど私の真正面、リセットボタンと私の間に人型は居た。
「----ァ?!」
私から見て左の方向から、狼型の鳴き声が聞こえてきたが、気にしない。同時に穴に落ちた音もしたから。
そのまま人型へ向かって走っていく。
人型の方は明らかに受け止めようと、両の腕を盾のような形へと変え、重心を下へ落とす。
丁度いい。
と、ここで。
「ウルフを落としたからって安心してない?!ほら追加だよ!」
新たにリセットボタンがフラスコを取り出しこちらの近くへ落ちるように投げる。
だが、それも予想はできていた。
「何度も何度も同じ手を使わせるとでも!?」
私はフラスコの着地点に【チャック】を発動し、割らせる事無く回収する。
そのまま私は人型の足元に【範囲変異】を使い穴を掘る。
人型は魔力の流れか何かでも追えるのか、穴が出来る前に焦ったように逃げようとしていたが、そのまま下へ落ちていく。
これでホムンクルスはいなくなった。
「--------ァッ!!!」
されど、まだ敵は残っている。
少し放置されていた館の支配者が、痺れを切らし、こちらへと突進をしてきたのだ。
しかし、突進だけならば余裕で避ける事ができる。問題は、これに乗じてまた何かを投げようとしているリセットボタンの方だろう。
「あはっ、丁度いいね!クロエさんもボスと一緒に死んじゃって!」
投げられたそれは先ほどまで投げていたフラスコとは違い、中身が空っぽだった。
「装填【過ぎた薬は猛毒に】」
瞬間、フラスコの中身がドス黒い液体で満たされる。
固有魔術。しかもポイズンと聞こえた。
解毒薬は持っていないわけではないが、だからといって固有魔術により受けた毒をなんとか出来るわけじゃないだろう。
【チャック】を発動させ、着地点に口を開けた状態で設置する。
「それでなんとかなるとでも?一度見た技が何度も通用するのは、AIだけって覚えておきなよ……起爆」
リセットボタンの言葉とともに、フラスコが爆発する。
中に入っていたドス黒い液体はそのまま黒いガスのようになり、周囲を侵食していく。
ジュゥゥゥ…と何かが焼けるような音を立てつつ広がるそれは、よく見てみると土まで溶かしているようだ。
まだ少し距離があるためにこちらまで届くまで時間は少しあるが、出来る限り離れなければそのまま終わりだろう。
「くっそ……!」
「このまま毒で死んじゃってクロエさん!出来ればボスもね!」
……いや?
まだ終わりじゃない。
現在、私と館の支配者はリセットボタンの固有魔術により、リセットボタンと分断される形となっている。
館の支配者のヘイトはこちらへ向いたままだ。
……これあっちから見えてるのかわからないけど、逃げたら館の支配者もついてくるから良いのでは?
………………。
…………。
……。
私は逃げた。




