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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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尊重される横取り

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくおねがいします


累計アクセス数が50000突破しました!

これも皆さんの応援があってです。

これからも精進していきますので、よろしくおねがいします


今更来て、突然何を言いだすんだ。

確かに私は初めは時間稼ぎのような事を頼まれた。

だけど。

だけど、もうあんたらが考えていた拘束するための作戦なんざ必要ないだろうに。

状況を見ていたならわかるだろうに。


「あぁ、安心してクロエさん。きちんと後から報酬は支払うよ。私名義じゃなくLoseRoseさん名義になるとは思うけど」


言葉を聞くたびに、短剣に纏わせている靄が震える。

館の支配者はレイドボスだ。だから協力した方がいい。それは分かる。

だが、ここまで1人でやったのだ。

簡単に今までの私の行為を、ただの時間稼ぎだったなんて思いたくないしな考えたくもない。


「……リセット、ボタンさん。」

「ん?なんだい?……あぁもしかして討伐時の報酬かな?アレに関しては、」

「五月蝿いよアレは私の獲物だ、他人が今更来てガタガタ言ってんじゃあないよ」


睨みつけながらそう言い放つ。

レイドボスを独り占めはマナー違反じゃないのか?と言われても、それならそれで私を追いかける館の支配者を追撃すれば良かっただけの事。


「……へぇ言うねぇ」

「うん、言うよ。大体、私達とか言いながら周囲には貴女以外誰一人としていないじゃない」


元々、館の支配者の動きを感知するために発生させていた【霧海】には、目の前のリセットボタン以外には誰一人プレイヤーは引っかからない。

仮にも魔力で出来た霧だ。【五里霧】のような魔術でもない限り、霧に触れた瞬間に感知される。


「それじゃどうするんだい?見る限り満身創痍の君は何をするんだい?」

「分かりきっているくせに何を聞くんだか。……殺すよ、貴女も彼も」


今まで馴れ合っていた方がおかしかったのだ。

この世界、World of Abyssという世界でプレイヤー同士が殺しあわない。

それこそおかしい話だ。


プレイヤーは魔術を求めるために、力を求めるためにプレイヤーを殺す。

先ほどまで笑いながら話していた隣人を殺す。


「うん、良いねぇ良いねぇその顔。とても憤怒に塗れている!」


何やら一人で笑っているが、私は両手の短剣を握り締め、彼女へ特攻する。

レイドボスを前に、プレイヤー同士の戦いが始まった。



-----------------------



リセットボタンがしてくる攻撃は意外とシンプルだった。

白衣の内側から多種多様のフラスコを取り出し、それを使い魔術を行使する。

所謂錬金魔術と言われるものを行なっている。


フラスコ内の試薬を複数合わせ、それを触媒に様々な…例えばホムンクルスなどの人造生命体を生み出したりなどをして攻撃をしてくるのだ。


更に館の支配者もただ棒立ちで戦いを見ているわけじゃない。

ヘイトは依然こちらへ向いたままで、隙あらばこちらへ特攻を仕掛けてくる。


「チッ!!」

「おやおやぁ、クロエさん余裕がなくなって来たんじゃないの?」


【霧海】があるからまだ何とか避けたりは出来ているが、少しずつ傷も増えてくる。

ホムンクルスの攻撃を捌きつつ、館の支配者を注意しつつリセットボタンへどのように攻撃を加えようかと考えなければならない。


そんな私の姿を見て、嘲笑うかのようにリセットボタンはまた新たにフラスコを投げ、ホムンクルスを追加する。


現在私の周りにいるホムンクルスは計三体。

大きい鳥型、人型、それと今追加された狼型だ。


人型が自身の手を刃へ変化させ、こちらへ振り下ろしてくるため、それを護身石の短剣で受ける。【怒煙】は傷つけないと意味が無いようで、靄は伝播しないのが厄介なところだ。


人型の刃を受けている状態になると、今度は鳥型が空から強襲してくるため悠長に鍔迫り合いだーと遊んでるわけにはいかない。


鳥型の攻撃を横に飛ぶようにして避けると、着地を狙って狼型が噛みつこうとしてくるため、それを防ごうとするも、人型が…と忙しない。


そこに一定のタイミングで館の支配者が突っ込んできて色々巻き込んでいくのだから、笑えないし救えない。


人型、鳥型、狼型、人型、支配者、鳥型、支配者、狼型、人型、鳥型、支配者、支配者、狼型、人型……


捌けなくはないが、余裕というわけではない。

そろそろホムンクルスの数を減らさないとジリ貧で私が殺されるだろう。

せめて【怒煙】が付与できれば何とか出来るのだが、攻撃を受けないようホムンクルス達は直ぐに退いていくのだ。


恐らくリセットボタンは、【怒煙】の効果を知らないとしても何やら危ないモノとして、傷を付けられないよう気をつけてホムンクルスの指揮を取っているのだろう。


厄介な事この上ない。

やはり数を減らす事が先決だろう。

リセットボタンの方に行こうとしても、ホムンクルス達が身を呈して行く手を塞いでくるのだ。

それを逆手に取ろう。


リセットボタンへ特攻をかける前に、館の支配者の方を確認する。

彼は今まで掛けていた【怠惰】のお陰か、攻撃自体は遅いのだが一定の間隔でこちらに攻撃を加えてくるために、放置できない厄介な存在になっていた。


出来るなら、彼のタゲをリセットボタンに向けられたらもう少し楽な戦いになるのだが、それは贅沢な願いなのだろう。


考えている間にも迫ってくるホムンクルス達を闘牛士のように危なげなく回避しつつ、突破口を探す。

と、言ってもある程度限られてはいるのだが。


「まずは……鳥型からかな」


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