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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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逃げながら、少ない手札

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします


後ろから矢のように飛んでくる樹や岩を【霧海】で感知しながら避けつつ走る。

事前に館の支配者の動きを感知できれば良いのだが、何故か館の支配者に霧が触れると散ってしまうのだ。


「対魔術に特化したレイドボスって事なのかなッ」


基本的には魔術師しか居ないこのゲームで、そんなレイドボスを出してくる運営の意地悪さに少し苦笑いする。

恐らく、【鑑定】が弾かれたのもそれのせいだろう。

流石に名前まで見えなくなるのは、巨大化する前の姿的にプレイヤーと間違えられる可能性を考えて表示させたのだろうが。


「この状況もなんとかしたいし、どうするかな!」


走りつつ、地面に対し【範囲変異】を発動して穴を掘る。

少しでも彼を足止めできればいいな、と穴の大きさは広めに、縦は深めに。


カモフラージュはしなくていいだろう。

その代わりは【霧海】にて発生させた霧で十分出来ているし、そもそもしていなくても彼には今私しか見えていないのだから。


ドゴォッ!と巨大な何かが穴に落ちた音が背後から聞こえてくる。

恐る恐る後ろを見ると、下半身が穴にハマっている館の支配者がこちらを睨んでいる。


「うん、魔術に関しては弾くけど、魔術によって既に変化したものは弾けない。なるほどね」


始めに館の支配者と他のプレイヤーとの戦闘?を見たときに、彼が魔術に対し回避行動すら取らなかったのはそういう事なのだろう。


と、ここで個人通話が飛んでくる。

リセットボタンからだ。


「はい、どうも。何か用です?」

『いや君結構のんびりしてるね…。一応LoseRoseさんにお願いして情報貰ってるからそっちの状況は把握してる。手助けは欲しいかい?』

「出来るなら欲しいですね。魔術全部弾かれるっぽいんで」


館の支配者が穴から這い出ようとしている。

一応今のうちに、また走り出す。プレイヤー達が居た所へ戻ろうかとも思ったが、大量の攻撃魔術で弾幕張られて私だけ死にそうだからやめておく。


『あー、やっぱり対魔術持ちか。で、ガビーロールくんはあぁ言ってたけど、本当に無いの?羊皮紙』

「表面にはっ、ない、ですねっ!」


川をジャンプしつつ渡り、後ろを確認する。

【霧海】の感知には掛からないが、しっかり霧は散らされているために【霧海】内にぽっかり穴が開いたような感覚があるのだ。

そこに彼はいる。


『じゃ中かな…恐らく術師とゴーレムが一体化したタイプのゴーレムだと思う。ついでに対魔術…物理で壊すなりなんなりしないとかな』

「そうですね…。というか何故リセットボタンさんが私に連絡を? 」

『いやクロエさん私以外に連絡できそうなの板に居なかったしね……。さてと、じゃあ出来るだけ時間稼げるかい?』

「稼ぐだけなら幾らでも」


実際こうやって逃げてるだけなら余裕で出来る。MPポーションも残っているし。


『良いねぇ良いねぇ。とても初心者とは思えないくらい言い切るねぇ。じゃあこっちで何とか拘束出来ないか作戦練るからそれまでよろしく頼むよ』

「了解でーす」


ブツ、と通話が切れる。

さて、では状況を整理していこう。

現在、私はどんどん森の奥へ奥へと逃げて行っている。ここら一帯には私が発生させた【霧海】の所為か非常に視界が悪い。

私は感知能力のおかげでそんなの気にしないが。


次に、その私を追ってくる館の支配者。

巨大化しているために、最初に感じた紳士然とした雰囲気は既になく、どちらかといえばトロールやそこら辺に近い形になっている気がする。

現在、私が腰にあったemethという単語を読み上げてしまった為か凶暴化。しかし強力な魔術耐性を持っていて、並みの魔術では弾かれるだけ。


最後に、リセットボタン及びイベント攻略板に居たプレイヤー達。

現在、その館の支配者をどうやって拘束し倒すかを議論中…って所だろうか。


「私も待ってるだけ、逃げてるだけってのは少し性に合わないなぁ」


といっても、魔術を弾く彼に対し【怠惰】や【憤怒】なんかは意味がないだろう。

錬成魔術は直接使うわけではないからなんとか使えるかもしれないが、一時的なものにしかならない。


ちら、とインベントリを見る。

【第一章】と【第四章】。これらの召喚魔術を使えば…とも思ったが、結局直接作用する魔術だったら使った事自体無駄になるわけで。


「もうちょっと早めに手に入れてればこんな事には……って言ってても仕方ないか」


とりあえず先ほどと同じように【範囲変異】を使い穴を掘る。

穴にハマれば少しでも時間は稼げるのは、実際にさっきやったのだから間違いはない。

ダメージを与えようにも巨大なため、穴の底に槍を作ったとしてもその重さで折れてしまうために意味がないのだ。


「こりゃ手詰まりかなぁ……大人しく時間稼ぎした方が良さそう」


こういう時に色々な固有魔術を持っていれば変わるのだろうなぁ、と思う。

単純に手札が足りないというのは辛いものだ。

それだけで戦略の幅が狭まるのだから。


「まぁ初心者で戦略がなんだーって言ってても仕方ないんだけどねー」


ため息をつきつつも、走り続ける。

今は時間を稼ぐしかない。


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