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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
Tutorial 一歩目を踏み出そう。

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始まりの森、警戒は大切に

書きためてないので、書きあがり次第投稿します。

感想、ご指摘などよろしくおねがいします。

始まりの森 - AM


ある程度の手持ち魔術の使い方の確認が終わったところで、さっそく初心者向けのフィールドである始まりの森へ移動した。

ここからはPK可能フィールドとなるために、若干ながら体の動きが硬くなってしまう。


「これじゃあ…恰好の的だね…」


自然、声も小さくなる。

いつ、誰かから狙われているかもしれないという緊張感は、昔FPSゲームをやっていた時の不思議な高揚感と似ているもので、少しだけだが私は興奮していた。


森の中を進んでいくと、ある程度開けた場所を見つける。

誰かしらが少し前まで休んでいたのか、たき火の跡がある。…すこし危険かもしれない。


「んーまだモンスターにすら会っていないのだけど…」


そう呟きながら、近くに転がっていた大きめの石を拾い、手で弄びながらたき火のあとに近づいていく。

一応【鑑定】を使ってたき火を調べておく。


-------------

たき火跡

-------------


問題はなさそうだけど、これは安心する材料にはならない。

初心者だからといって、PKへの警戒は過剰すぎるくらいしておきたいのだ。

WOAは死ぬと、デスペナルティとしてログインするのに1週間の間を開けなければいけなくなる。

ゲーマーとして、1週間もずっと待機しているのはあり得ないのだ。


「【錬成-初期変異】発動」


拾った石に【変異】をかけておく。

薬草にかけた時は、ただのほかのアイテムへ変化させるだけだったが、今回はアイテムの種類はそのままに形を変化させるようにイメージする。

変化させるイメージは、できるだけ投げやすい球体に近い形。

思考発動というシステムがある以上、ある程度イメージによって魔術の効果も変化するんじゃないだろうか、と考えていた。


手の中の石は少し光ったあとに、ある程度球体に近づいた形に【変異】した。

思った以上に変わらなかったが、考えが間違っていなかったことが分かった。


「(一応、PKが居た時用にってことで【変異】させたわけだけど…っと)」


ガサガサと私の目の前…たき火を挟んで目の前の草陰が揺れる。

瞬間逃げる態勢に移行する。いくら道具を用意したところで、自分よりも魔術が達者な相手に対し戦闘で勝てるわけがない。

だからこそ、石を投げたところで目をそっち側へ引かせ少しでも逃げられる確率を上げようと考えたのだ。


じっと待つこと、体感1分。

草陰から出てきたのは……PKではなく、初心者の森にたくさんいると言われているアースラビット…下級モンスターだった。

ほっと胸を撫で下ろすが、下級といっても一応モンスター。プレイヤーを見たら襲ってくるのはPKもモンスターも変わらない。

アースラビットはこちらを発見すると、その特徴的な額の茶色のゴツゴツとした角をこちらへ向けて走ってくる。


「初めての戦闘がこんな感じになるとは…【錬成-初期変異】発動!」


先ほど【変異】させた石をさらに【変異】させる。

ナイフに近い形をイメージして魔術を発動する…、がある程度先が尖った石に変化した。

相手に刺さるか否か…というレベルの鋭さだろう。


一直線に走ってくるだけなので、ある程度余裕をもって避ける。


「割と余裕があるか…なっ」


何度か避けてから、丁度アースラビットが近くに来たときに力の限り石を刺し込んでみる。

ぐぐぐ…っとゴム毬か何かに対して刺し込んでるかのような感覚がする。見た目に反して割と硬いようだ。


「キィイ!」

「なっ?!」


アースラビットは一旦距離をとった後、突然叫びはじめ足元に茶色の魔法陣を展開させた。

見るからに魔術を使おうとしているようにしか見えない。


「わわ、モンスターも魔術使うのねっ」


さすがにこの情報は知らなかったので、少し焦る。

アースという名前と茶色の魔法陣ということで、おそらく地属性の魔術だろう。

幸いなことに、開けた場所といっても近くには障害物となる木があるため、アースラビットが魔術を発動させる前に間に合うように走りだす。


「何が来るかわからないけどっ!間に合えっ!!」

「ィイイ!!」


近くの木の根元に転がり込むように滑り込み、それと同時にアースラビットが魔法陣を光らせながら魔術を発動させる。

ガガン!という音と同時に、障害物にした木に大きな衝撃が伝わる。

恐る恐る上の方を見てみると、ほぼ貫通するような形で木に石の塊が刺さっていた。

高さ的には、立っていた時私の頭があった辺りである。正確なエイムをしている。


「石礫…みたいな魔術かな…?威力見る限り確実に胴体に食らったら死ぬだろうけど…」


つーっ、と頬に冷や汗が垂れる。割かしこの森のモンスターを嘗めていたようだった。

考えを改めよう。初心者向けの狩場だからといって、簡単に狩れるとは限らない。今この森では私はヒエラルキーの最下位に位置するんだ。

少し深呼吸したあと、こちらを探しているアースラビットに向けて走り出す。


「キィ!!」

「おおお!!!」


アースラビットはこちらが突っ込んでくるのを確認し、また茶色の魔法陣を展開する。

また同じ石礫の魔術だろう。先ほどのエイム力からして、ほぼ確実にまた頭を狙ってくるのは予想できる。それも頭ど真ん中に当たるように。


それが分かっているなら話が早い。


そのまま手の中の石を構え、走りながら大きく息を吸う。

アースラビットの方はまだ魔力を魔法陣に注ぎ込んでいるようだ。……そして、魔法陣が光る。


「【チャック】発動!」


イメージは相手側に開いたチャック。

眼前に上半身を覆い隠すほどの大きさのチャックが出現し、それに向かって石礫が飛んでくる…が、チャックの中に吸いこまれていった。

その結果に驚いたのか、一瞬アースラビットが驚いたように見えた。


その瞬間を逃すほど私は甘くない。

手の中の石をアースラビットの頭に思いっきり叩き付ける。

ガンッ!という音が響くと同時、アースラビットが動かなくなる。


「…おわり?おわった?やった?……よかったぁ……」


手の中の石が地面に落ちる。

何故か力が抜けて立っていられないみたいで、足が小鹿のようだった。

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