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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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不思議な館から、その一方で

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします。


不思議な館 - 1F


現在私がいるのは、かつて使用人室として使われていたであろう一室。

ウェーブ間の休憩タイム中、見つけたのは何人かのプレイヤーの死体とこの安全そうな使用人室のみだった。

プレイヤーの死体からは特に何か得られたわけではないが、私みたいなステルス系の魔術を持っていなかったらどうなるかがよくわかった。


「うーん…休憩明けないとこれ駄目っぽいなぁ…」


予想としては、この館内にモンスターを沸かせる装置的な…この世界的に言うなら魔術や儀式があったりすると思ったのだが、それを見つけるのもイベントゲートと同じように、襲撃中にしかできないのだろうか。


「魔力は…うん問題ない」


身体の調子はまだ余裕がある。

そろそろウェーブ開始だろう。【霧海】を戦闘用に発生させなおす。ステルスはほしいが、負担が大きいために、今回は使わない。

危なくなったら使うしかないが、囲まれない限りはゴブリンとの戦いで使わないだろう。


ドドドドドド……とまるで地鳴りのような音が鳴り始める。

ウェーブ開始だ。部屋の外に出よう。


使用人室のドアを開く。



-----------------------


リーン森林 - PM - ある1PT


「クソッ!!そっちどうだ!イベントゲートみつかったか!?」


俺は近くでゴブリンを数体焼いているサバトメンバーに対し呼びかける。

前回のウェーブの時、あと一歩というところで霧の塊にイベントゲートに入られてしまい、そのままゲートの位置もどこかへ移動してしまったのだ。


「まだだ!!もう少しだけ待ってくれ!!!」

「了解!一旦ここらへんのモンスター倒すぞ!創造(クリエイト)改造魔弾カスタムブレット!】」


俺の手の中に銃弾が10発分出現する。

【改造魔弾】。誘導弾、散弾、爆裂弾など様々な魔力で打ち出せる銃弾を作り出せる固有魔術だ。

今回作った弾は爆裂弾。ゴブリン程度なら一発でも何体も吹き飛ばしてくれるものだ。

それが圧縮され、拳銃の弾程度まで小さくなっている。


「これでも喰らいやがれ!!」


俺はそれを全方位…周囲へ向けて発射する。

仲間は俺の発声発動に合わせてダメージを受けない位置へ移動してくれているため、周囲にはゴブリンのみしかいない。

ドゴォ…という大きな爆発音を発生させながら、周囲のゴブリンすべてを吹き飛ばしていく。


「よし、これで終わったか…おーいカドリック!どこいったー?」


先ほどゴブリンを呼んでいた仲間…カドリックと合流すべく、声を張り上げながら周囲を探す。

【改造魔弾】のデメリットは、パーティを組んでいた場合ある程度硬い仲間でないと巻き込んだ時に大ダメージのフレンドリーファイヤをしてしまう点だろう。

使用する弾丸に気を付ければいいのだが、基本的にパーティ単位で戦う場合敵も集団のため、範囲攻撃に頼ってしまうのだ。


「……ろ…」

「ん?そっちか?」


強化魔術取っておけばよかったか、と最近よく思う。

初期の時はバフなんてアイテムで補えばいいだろ、と考えて取らなかったのだが、あとから聞けば五感なんかも強化されるというじゃあないか。失敗した。



「…げろ…」

「んー?ハッキリ言ってくれよく聞こえん」


カドリックの声がするほうへ進んでいく。

ただ、近づいても近づいても姿が見えないことから、少しだけ不信感を覚える。

……【改造魔弾】にて誘導弾を作っておこう。初見の敵でもダメージを与えられるからだ。

そして俺は、ついにカドリックを見つけることができた。


「逃げろカール!!」

「おや?さっきから叫んでいたのは彼のためだったのかな?」


フードを深くかぶった女に組み敷かれるという形で、だが。

俺はそのまま作っておいた誘導弾をその女に打ち込んだ。無駄にリアクションをとったところでカドリックを助けられるとは限らないからだ。


「おぉっと、こいつは危ない」

「なっ!?」


だが、その女は俺の作った誘導弾を片手で受け止めると、そのままこちらへ突っ込んでくる。

片手には黒い本を持っている。


「惜しいね、いい判断だったんだけど少し足りない」

「クソッ!【氷結-霜氷弾フロストショット】!」


氷結魔術によって氷の弾を打ち出し、牽制するが女はそれを意にも介さずに全て素手で打ち砕きこちらへ向かってくる。


「いやね、君たちを殺す気はないんだよ。少しだけ眠ってもらうだけさ」

「アァ!?」

「ほら、眠りなさい【禁書行使-第三章-眠羊スリープシープ】」


女が固有魔術を発動する。手に大きな綿のようなものを出現させると、それが突然ぼふっという気の抜けた音をさせながら爆発する。


「くっ…?!」

「そーらだんだん眠くなーる」


その言葉の通り、俺の操るアバターの瞼が意思に反して下へどんどん下がっていく。

俺のアバターが完全な眠りに落ちていく前に、女が小さく「これで最後…」とつぶやいたのが聴こえた。



-----------------------



「ふぅーこれで最後だね」


私は眠らせた男を蹴り転がしながらそう呟く。

これで私の任務は終わりだ。指を鳴らし近くにあったイベントゲートに使っていた固有魔術を解く。

隠蔽に特化した【幻影洋灯ファントムランプ】は、効果対象を自分以外の相手から見えなくするだけの固有魔術だ。

設置型のランタンを出現させるだけだから、難しい動作も必要がない。


イベントゲートから出てくるゴブリンに対して、適当に範囲魔術を使いつつ身の回りの安全を確保する。

男に腰かけながら、私は森の中で会った霧の女の子のことを思い出す。


「お膳立てはしてあげたんだ、一人で頑張れ禁書持ち」


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