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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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イベント開始、森林にて

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします。


私は首都近くにあるリーン森林へ移動するために全力で走っていた。

周りを見てみると、何人か同じように街中を走る人々がいるのがわかる。


彼らもまた私と同じイベント参加のプレイヤーなのだろう。

今回は同じ陣営、ということであちらもこちらを積極的に狙うほど暇じゃあないようだ。 これには一安心。イベント中に背中から撃たれたらイベントもクソもない。


「しかし、これは少し目立つかな」


現在私は自分の周囲に【霧海】を発生させつつ移動している。

端から見れば、霧の塊が移動しているようにしか見えないだろう。

一応これには意味がある。 手に持っている樹薬種の短剣を見られないようにするカモフラージュ的な役割と、私自身の識別範囲の拡大だ。


【霧海】の認識阻害能力と感知能力を使い、出来る限り慎重に戦場に端から入り込んでいく。

これが今回の初参加イベントでの目標であり目的だ。


「しっかしまぁ…予想してたけど多いね人」


始まりの街近くの森しか知らないが、このWOAというゲームでモンスターの出る狩場がここまで盛り上がっているのは結構珍しいんじゃないだろうか。

あちこちでモンスターとの戦闘音がきこえてくる。

これでは幾ら故意ではなかったとしても、そう遠くないうちにプレイヤー間での内輪揉めが始まるだろう。


少し脇を抜けて森の奥…人が少ない方へ進んでいく。

私の使っている【霧海】はあまり多人数での戦闘には向かないのだ。


「おや珍しい。ルーキーさんかな?こっちは少し危ないよ」

「は?」


と、奥へ奥へと走っていた私に対し、いつの間にかフードを深く被った女の子が話しかけてきていた。


「っ!?」


出来るだけ大きく横に飛ぶ。

森の中で得体の知れない女性と出会う。2回目ということもあり、最初っから警戒しつつ武器を構える。

その私の様子に、彼女はふぅと大きく息を吐き、 「おやおや警戒されてるね。仕方ないか」 と小さくボヤいた。


「……貴女の所属は?」

「私?今回はヴェールズだよやったね」


彼女は小さくガッツポーズをとる。

一応はヴェールズ所属とは言っているが、口では幾らでも嘘は言えるのだ。

警戒はしすぎたくらいが丁度いいだろう。


「んんー、ちょっと警戒しすぎじゃないかい?今は戦ってる場合じゃないだろう?」

「そう言って後ろから刺されても仕方ないんで」

「ハハ、そりゃそうだ。……私の名前はレン。サバトは無所属だ」


彼女…レンは手を大きく広げながらそう話しかけてくる。

名前は聞いたことがないし、私も急がないと狩れるモンスターがいなくなってしまう。


「私はシロ、無所属だよ。それじゃあ」


と言って離れていく。

偽名を使ったのは得体のしれない相手には本当の名前を伝えるのはやめたほうがいい、という判断からだ。

少しだけリアルのほうで調べてみたが、名前を知ることでかけられる様になる呪術もあるらしいし、そういうのはある程度気を付けておいたほうがいいだろう。


ちら、と見てみるとレンはこちらを見ながら手を振っていた。

まるで面白いものを見つけた、と言わんばかりの満面の笑みで。



-----------------------



「よっ、と」


霧によって周りの様子が分からなくなっていたゴブリンに対し、手に持った短剣を突き立てる。

ギッ…と小さく呻いたあと、そのまま動かなくなる。

これが私の今の戦い方だ。ある程度の相手までならこれでなんとかなる。


「若干、あの時のワーウルフに近い戦い方なのは何かの皮肉かな」


周りを見渡しながら一人愚痴る。

現在開催している【不思議な館からの招待状】は所謂タワーディフェンス系のイベントだ。

何ウェーブかに分かれて襲撃してくるモンスターをイベント終了まで迎撃する。簡単に説明するのならそんな感じのイベントだ。


しかし、その襲撃自体を止める方法があるのでは?という推測がプレイヤー間でされているのだ。

そもそもモンスターが溢れ出ているというイベントゲート。これの奥に何かしらのモンスター製造装置か何かがあるのだろう。

これを壊すなりなんなり出来れば、少なくとも一つモンスターの襲撃地を減らすことができる。


「さってと、あの時みたアレがそうだよねー」


私は以前、このイベントと関連があるであろうフリーイベントである【不思議な館への誘い】を終わらせている。

今回の大規模イベントはその時見つけたイベントゲートからモンスターが出てきている、というものなのだろう。悔しいのは、現在いるのが始まりの街近くの森ではなく、シスイ近くの森だということだろう。


「【強化-身体強化】発動」


視覚を強化するために、最近あまり使っていなかった強化魔術を使用する。

禁書でも強化はできるが、アレはさすがにデメリットがあるために切り札のような使い方をしていきたいのだ。


改めて周囲を見渡してみる。

しかし、あの時みた光の柱は見当たらない。


「んー…今ウェーブ間の休憩時間みたいなものだから、もしかしてイベントゲート自体不可視になってたりする?」


その場合、少し厄介だ。

溢れ出るモンスターを捌きつつ、イベントゲートの中に入らないといけないのだ。

一応私は【霧海】を使って周囲への感知能力を上げたり、近づいてきた相手に対し認識阻害効果をかけられるが…?


「そういえば、さっきのレンって人なんで私に近づいてたのに、私の位置がわかってたんだ…?」


ぞくり、と背筋が冷える。

固有魔術というものは、普通の魔術…錬成魔術や鑑定魔術なんかの誰でも覚えられる汎用魔術の完全上位にあたる位置づけとなる。

そのため、どんなに弱い姿隠し系の固有魔術でも、上位の感知系汎用魔術では見破ることはできない。


感知系の固有魔術を使っていた、と言われれば仕方がない。

だが、同じ感知系の【霧海】を周囲に発生させている状態で、私に近づいてきて尚且つ話しかけるまで気づかれないなど、まるで…


「完全に私の上位互換みたいじゃん」


現在の私のプレイスタイルの完全上位互換だ。

一度会っただけだが、次に会ったときはさっき以上に気を付けたほうがいいかもしれない。


固有魔術の分類を知りたいという方はいますかね?

一応、教えてほしい…という要望が来たので公開しようとは思っているのですが

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