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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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対話をしよう、準備もしよう

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします。


【赤の十字軍】拠点 ロビー


「とりあえずイベント中の動きに関しては各自自由に、で問題ないかな?」

「はい、大丈夫です」


この後から始まるイベントについての行動は、各自自由に動くことになった。

私としては戦闘経験を積んでおきたかったからありがたいし、赤ずきんに関してもサバトのほうの事務仕事が終わってないとかなんとかで、実際あまりイベントに参加できないらしいのだ。


さて、本題はここからだ。


「で、ちょっと考えてたんですけど」

「なーんだいクロエちゃん」


いつものようなニヤニヤとした顔をしつつ、眼は全く笑っていない赤ずきんに対し、こう言った。


「私、このイベントが終わったらサバト抜けようかなって思うんですけど」

「ほう?さすがに早すぎないかい?まだ入って数日だぜ?」

「それについては申し訳ないです。でも、元々私始まりの街から安全にどこか別の街へ行ければよかっただけなので、ここまで連れてきてくれたのはありがたいんですが、ここらで抜けようかなって」


これは事実。ほかに知り合いがいればそっちのサバトに間借りしていた可能性もある。今回は【赤の十字軍】だったというだけなのだ。


「ふむ…それもそうだ。だけどいいのかい?」

「何がです?」

「いやね、クロエちゃん。君、固有魔術の効果私らに話しちゃってるだろう?その情報を私達が他のプレイヤーに……例えばPKに話さないって保証はないぜ?なんせサバトから抜けたら仲間じゃあないからね」

「あぁ、それくらいなら。私的には人と戦うのはもってこいなのでむしろありがたいくらいですね」


これも事実。何度か言ってはいるが、私は対人戦をしたいからこそ外に出たかったのだ。

このシスイにくるまで何回か対人戦を行ったが、やはり一人での戦いと上位者に支援をもらっての戦いでは難度が全く違うのだ。


「ふむ…そうだねぇ…」


赤ずきんはちら、と灰被りのほうを見たあとにこちらへ向き直る。

ニヤニヤしつつ、いつも通りにこう告げる。


「うん、そうだね。イベント終わったらサバトを抜けるっていうクロエちゃんのお願いはきこう。ただし、交換条件だ」

「交換条件?」

「あぁ、交換条件さ。あぁいや簡単だよ?少しだけ【チャック】を使ってあるものを作ってほしいだけなんだ。それをやってくれたらクロエちゃんのお願い聞いたげる」


【チャック】を使いアイテムを作る。

普通の組み合わせでもレア度uniqueのものを作り出す【異次元錬成】を使わせてくれ、ということだろう。それについては特に問題はない。


「私は別にいいですけどそれって、」

「ん、じゃあそれで。イベント終わるまではよろしくねクロエちゃん」

「あっ、はーい…」


赤ずきんはそのまま駆け足で去って行ってしまった。

時間もそろそろイベント開始時刻に近づいてきてしまっている。

結局何を錬成するのか聞けずじまいだが、仕方がない。今は自分用の準備を進めておこう。


「じゃあ灰被りさん、ありがとうございました」

「いえ、いいんですよ。このまま私達に縛られてても仕方ないですしね」


灰被りに一礼し、拠点を出る。

一応とっておいた宿へ向かい、そこで準備を改めてしておくことにする。



-----------------------



「じゃ、始めますかねっと」


【チャック】を開き、テセウスから買った精霊鉱を一個と樹薬種の短剣を指定して錬成を開始する。

宿の中なので、一応【霧海】も薄く発生させておき習熟度上げをしておく。


ついでに、サラの街で作った大量の木製投げナイフをとりあえず材木へ戻しておく。

結局今の戦闘スタイルでは使わなそうなのと、少しでもインベントリ内を圧縮しておきたいからだ。


そんな事をしていると、【異次元錬成】が終わりアイテムが完成する。


-------------

樹薬種の短剣 レア:unique

 性質:Growing

 精霊鉱を混ぜ更に変化した癒しの短剣。

 魔力への適正が高く、様々な用途で使用できるようになった。

 使用中HPを徐々に回復する。

-------------


アイテム名は変わらないが、元々木で出来ていたソレは鉄…精霊鉱によって形取られている。

今までは完全に木製のおもちゃだったが、これで樹薬種の短剣でも効率的に相手に傷を付けられるだろう。


「うん、いい感じ。【刻印】もしとこうかな」


樹薬種の短剣を使い、人差し指から少しだけ血をだす。早く模様描かないと樹薬種の短剣のリジェネ効果でふさがってしまうから、少しだけ急ぎだが。

大体模様は柄の部分から刃先に向けて葉脈が広がるように線を描いていく。


元々使っているものが薬草の種という自然物のため、葉脈のような植物感のある模様をつけておきたかったのだ。

ある程度描くとリジェネ効果によって傷が塞がったためそのまま【刻印】を発動させる。


今回は実験としていつもの【怠惰】ではなく、固有魔術の【霧海】を刻んでみる。

どういう形で効果が発揮されるかはわからないが、やってみる価値はあるだろう。


それに精霊鉱に関しての実験でもある。

魔力への適正が高い、と聞いて正直へぇーそうなんだー程度にしか考えてなかったが、よくよく考えてみればそれは結構重要なのだろう。…というか絶対重要だ。


しかし、それがどの程度までの魔術を受け入れられるかが本当に重要な情報なのだ。


そこらへんの木で作った短剣は、【刻印】にて【怠惰】を刻んだだけで、それ以上は受け入れられなくなってしまった。

石もそうだ。


では鉄は?と思ったが、おそらくこれに関しても増えて二種類までが限界だろう。

ここで精霊鉱の受け入れ量が気になってくるわけだ。

魔力適正が高い。これは先ほどから言っていることだが、それがどれほどのものなのか。それを知るだけでも今後武器や道具を作るうえで、かなりのアドバンテージになるだろう。


「っと、完成。うまく【霧海】の効果が出るといいけど」


そんなことを考えながら【刻印】をしていたら樹薬種の短剣(刻印付き)が完成した。

魔術を使うときみたいに短剣に魔力を込めると、薄い霧が出てきた。【霧海】のように感知ができるようだが、普通に使うよりは感知できる範囲や、そもそも相手に対する阻害効果が薄まっている印象がある。


これは単純に私の力不足なのだろう。

しかし問題はないし、むしろ満足のいく出来だ。


ここでピロン、とログが出現する。イベント開始の合図だ。


「さて、じゃあ行きますか。目的地は首都近くの森林で、イベントスタートだ」


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