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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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思考しよう、話していこう

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします。


「そういえばなのですが」

「どうしました?灰被りさん」


【赤の十字軍】の本拠点へ向かう最中、灰被りが話しかけてきた。

ここまでくる道中でよく赤ずきんと話していたので、彼女と話すのは実は結構緊張したりする。


「いえ、クロエさんはこの後どうするのか、と思いまして」

「この後、ですか」

「えぇ。これからイベントが始まります。クロエさんにとっては初イベントらしいので、まぁこれには参加するんでしょう?」

「そうですね……といっても適当に、他国のプレイヤーが襲ってきたらそれに乱入する形が主になるでしょうけど」


実際、AIなんかと戦っていても、魔術の習熟度上げ程度にしかならなそうだというのは、このゲームを初めてからよくわかった。

それをやるくらいなら、他国プレイヤーを殺して殺して殺しまくるほうが絶対に楽しいし、プレイヤースキルも向上するだろう。


「問題はそのイベントが終わった後です。元々クロエさんは始まりの街の『外』に出てプレイヤーと戦いたかった。……そうですよね?」

「えぇ、そうですね。できればそうしたいです」

「なら、貴女は旅立つべきだと私は思います。赤ずきんさんと私は護衛するだなんだといいましたが、それに関して考える必要はありません。私達は貴女の意見を尊重するのですから」


灰被りは前を向きつつ、真剣な顔でそう言った。

灰被りは私に、やりたいことがあるなら周りを気にせず全力でやれ、と言っているのだ。

言われた通り、私はプレイヤーと戦うために外へ出たがっていた。


現状はどうだ?戦いたかったプレイヤーから護られているじゃないか。

これでは、元々の私の目的と正反対の方向に進んでないか?

まるで今の私は虎の威を借りる狐のようだ。


「貴女が出した結論がどんなものでも、私達は受け入れますよ」

「……わかりました」


私は考えながら相槌を打つ。

本拠点まであと少しだ。



-----------------------



二人とも無言で歩くこと五分。

三階建ての煉瓦造りの施設の前へ着いた。私のスカーフや赤ずきんの頭巾に入っているサバトの紋章が垂れ幕のように三階から下げられている。

ここがそうなのだろう。


「入りましょう」

「あっはい!」


灰被りはそのまま入っていく。

私も慌ててそれについていき、中へ入った。

中は外の煉瓦造りという外見とは裏腹に木の壁、木の床など、煉瓦を使っている様子が全く見られない。これもゲームならではなのだろうか。

綺麗なお姉さんのいるカウンター?のようなところや、おそらく食事などができるであろうテーブルなど、ファンタジー小説に出てくる冒険者ギルドのような内装だった。

人は…あまりいない。巡回関係もあるからだろうか。


灰被りはそのまま受付と思われるカウンターへ歩いていくので、私もついていく。

ここは勝手を知っている灰被りについていったほうが迷わずすむだろうし。


「赤ずきんさんはもう来てますよね?灰被りが来た、と伝えてください」

「わかりました。少しお待ちくださいませ」


受付とそれだけ話すと、灰被りはこちらへ振り返り、


「赤ずきんさんに召集をかけたので、少しここで待ちましょうか。あの人一旦作業始めちゃうと、ギルドカウンターから連絡しないとメッセージにも気づかないんです。」

「あっ、そうだったんですね」

「さて、赤ずきんさんが来たらこれからについて話していきましょう。とりあえずはイベント中から」

「そうですね…」


近くにあったテーブルにつき、赤ずきんが来るまでまでに、このもやもやした考えを決めておかないと。


当初の目的だけなら、今ここにいる必要は全くないし、それこそ山賊ロールをしていたあの時の彼らの仲間になったほうがプレイヤーとの戦闘経験は多くなるだろう。


ただ、ここにいることのメリットを考えてみる。

一番のメリットは、熟練者である赤ずきんらに調べても出てこないような情報を教えてもらう、というものだ。情報というものは持てば持つだけ、力に代わる。

ほかにも、模擬戦という形で戦闘訓練もすることが可能だろう。PKできないがFFはできるという仕様を有効利用した訓練だ。


しかしその分デメリットも大きい。

何よりまず、自由に行動ができないという点だ。これが一番大きいデメリットになる。

【赤の十字軍】というサバトは、このWOAという世界で自警団のような側面も持っている。そのために、巡回任務という……言ってしまえばボランティアをしなければならない。

そして、他プレイヤーの恨みを少なからず買うという点だ。


彼らはPKがしたくてこの世界へ来た。

それなのに、秩序だなんだと騒ぎ立てられながら弾圧される。殲滅される。

その結果、他プレイヤーから恨みを買うという結果になる。


始まりの街で赤ずきん達に向けられていた視線の意味も、よくよく考えてみればわかることだ。

相手はこの世界から見れば異端者なのだ。

ある程度それを知ったものに対し、それを恐れるなといったところで無理だろう。


「すぅー……」


息を大きく吸い込む。

ある程度考えがまとまってきたかもしれない。


「やぁやぁ毎度すまないね灰被りちゃん。やっほー」

「赤ずきんさんどうも」

「どうも、先ほどぶりで」


赤ずきんが奥からやってきた。

ではミッション開始といこう。


親に怒られている時のような居心地の悪さを感じながら。

私は一言目を吐き出した。


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