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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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本日濃霧につき、運用は?

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします


ヴェールズ国内 街道 - AM


関所から首都側に進んだあたり。

位置的には、午後には首都には着くだろう。私は頬を撫でる風に目を細めながら、息を深く吐いた。


発生(コール)【霧海】」


私は全力で霧を発生させる。ただし、ただ単に垂れ流すのではなく自分の周りに漂わせるようにする。

傍から見れば、霧の塊が突然現れたみたいな感じだろう。


「クロエちゃーんそっちに1人いったよー」

「あっはーい」


【霧海】を纏った直後に見た目山賊なプレイヤーが短剣をもってこちらへ突っ込んできた。

ただし、現在周りからみれば霧の塊である私。どこを攻撃したらよかったのかわからないのだろう。

がむしゃらに攻撃して、全て霧のおかげで私には届いていない。


というか、【霧海】のおかげでプレイヤーの動きが私にはハッキリ把握できてるし、逆にこちらへ突っ込んできたプレイヤーは【霧海】の所為で私どころか周りの状況すら感知できていないだろう。


「はいザクー」


そのままそのプレイヤーの首に護身石の短剣を刺し込み、HPを0にさせる。

しかし、霧の中で起こった事を認識できていない外の山賊風プレイヤーたちは立て続けに突っ込んでくる。

現在、私たちの周りには、数多くのプレイヤーらしき人々が逃げられないように円陣を組んでいる状態だ。


「なーんでこんなことになったかなー…」


時は少し前まで遡る。



-----------------------


ヴェールズ国内 関所近く - AM


関所にて手続きをして【赤の十字軍】の本拠点があるという首都を目指すため、かぼちゃの馬車をトップスピードで飛ばしていた。

できるだけ早く首都についてイベント準備なんかをしてしまいたかったからだ。

いくらAIが相手といっても、他国からこちらへ刺客として雇われたプレイヤーが襲撃してくる場合もあるために、準備はしといて損はないのだ。


灰被りに【霧海】の習熟度上げをするのなら、今度からは馬車の屋根の上…かぼちゃのツタの部分でやってくれ、と頼まれてしまったため、現在はツタの上で霧を放出し続けているのだ。


おそらく、これが悪かったのだろう。


「ん?赤ずきんさーん。なんか4時方向からこっちに接近してくる何かがいるんですけどー」

「ほーう?ちょっとまってねー……げっここらで活動してるPKサバトじゃん。」

「うげぇ。なんでこっちに来るんですかね」


赤ずきんは少し考えるように唸りながら、思いついたように「あっ」と声を上げた。


「クロエちゃん、多分君の所為だ」

「は?私の所為?」

「君、さっきから霧垂れ流してるだろ?それ目印になってるんじゃね?魔力の霧だから魔力感知系の魔術に引っかかったんじゃないか?」


言われてから相手側の立場で考えてみた。

遠くに何やら目印っぽい何かが見えている。仲間が言うには魔力を帯びた何からしい。魔力ということはプレイヤーではないか?……突撃!

大体こんなところだろう。さすがにここまで阿呆っぽくはないだろうが。


「霧出すのやめましたけど…これこっちきますよねぇ」

「そうだねぇ…灰被りちゃーん。ここらで一旦止めてくれー」

「はい、了解ですー」


かぼちゃの馬車がゆっくりと止まる。

中から出てきた赤ずきんは灰被りに対し、事情の説明をしつつ一応の戦闘準備をしているようだ。灰被りに関しても同様だ。


私もツタから降りながらインベントリ内から護身石の短剣を取り出して、いつでも戦闘が開始できるように準備はする。

どうせなら【霧海】の戦闘運用を考えながら戦うのもありだろう。


「あ、赤ずきんさん少しだけ頼み事があるんですけど…」

「ん?なんだい?」


そして少ししてこちらに追いついたPKサバトの面々はこちらを取り囲みつつ襲い掛かってきたのだった。



-----------------------



そして現在へ戻る。


「んー突撃してくる近距離系の魔術師相手には強いだろうけど、これ遠距離には弱いなぁ」


回想しつつ思っていたことである。

結局【霧海】の範囲内に入らないことには詳細に感知なんてできないし、こちらの姿を認識できずとも、遠距離系の魔術師ならば範囲攻撃の一つぐらい持っているものだ。

霧の外から範囲魔術を撃たれてそのまま死ぬだけである。


と、ここで遠距離攻撃が飛んでくるのが分かったので、全力で現在地から逃げる。

一応【霧海】で魔力を感知できるため、周囲の魔力の動きを感知し魔術に関しては飛んでくるかわかるため、避けることは可能だ。

問題は弓矢などの魔力の関係ない飛び道具に関しては感知できないことだ。


周りのPK達がいつ気づくかわからないが、そろそろ違う戦い方をしたほうがいいだろう。

【霧海】を意識的に移動させ、護身石の短剣を周りから見えないようにしておく。

一応隠しておかないと、それを理由に付け狙われる可能性もあるからだ。

それ以外に周囲を覆っていた霧に関しては散らしておく。【霧海】の運用としてはこんなもんでいいだろう。


「赤ずきんさーん、そろそろ大丈夫なんでやってどうぞー」

「あ、そうかい?じゃあやっちゃおうか、発動っと」


赤ずきんに対して、戦闘前に【霧海】の運用がしてみたい…と頼んでいたのだ。

ある程度感覚を掴めるまで、殲滅だけはしないでくれ、とも。


赤ずきんが固有魔術を発動させ、周りにトランプ兵を召喚する。

大量のトランプ兵がPK達を死に戻りさせている中、赤ずきんがこちらに寄って来た。


「クロエちゃん、戦闘中に灰被りちゃんと話し合ったんだけどさ」

「はい?」

「移動中は【霧海】使うの禁止しよっか」

「流石にこの後また襲われるってのも面倒ですしね」

「あっ……はーい……」


その時見た赤ずきんの顔はいつものようなニヤニヤ顔ではなく、至極真面目な顔をしていた


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