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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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関所近くにて、メッセージ

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします

ヴェールズ国境関所 - AM


このまま行ったら夜中に国境を越えることになるため、一度ログアウトして早朝にまた

集合することにした。

帽子屋に関しては偽だったにしろ、本当にいつだれがPKでこちらを狙っているかわからない世界だ。

少なくとも、襲撃のされやすい夜よりかは朝に動いた方が得策だろう。…それに世間的に今日は平日だ。普通の社会人なんかは早朝にゲーム内にいる、ということはないだろうし


「そう言うクロエちゃんも普通の社会人じゃないよねぇ」

「赤ずきんさんには言われたくないですねー」


今日は、灰被りが少し遅れるとのことで、赤ずきんと二人かぼちゃの馬車の屋根で足をぶらつかせながら暇を潰していた。

一応、外ということもあり、薄く【霧海】を発生させておけば習熟度が貯まってレベルも上がるのでは…?という考えもあり、少しだけかぼちゃの馬車の周りにはうすーく霧がかかっている状態ではあるのだが。


「しかしまぁ、【霧海】結構好きなの?」

「えぇ、まぁ。かなり使いやすそうですし、応用も効きそうですからね」


聞いた話だが、昨日客車内で赤ずきんと共にいる時に【霧海】を発生させた際、私の気配やなんやかんやまで全てが察知できなくなっていたらしい。

大慌てで感知系の魔術を使い、私が真正面にいることを確かめるまでは殺されていないか気が気でならなかったそうだ。

事実、テレポート系統の固有魔術を使い移動中の対象を拉致、そのまま殺す…というプレイヤーもいるらしい。


「派生魔術でどんな性能になるか、結構楽しみなんですよ」

「楽しみなのはいいけれど、君自身の元々の固有魔術の方も忘れないでやれよ?」

「それはまぁ。肝心なところで活路を開いてくれた魔術ですからね」


と、そんな話をしていたら、ピロンとメッセージ受信の音がした。

隣りを見ると、赤ずきんも同じように受信しているらしい。灰被りが一斉送信でもしたのだろうか……いや、ログアウト地点は離れているわけじゃあないし、挨拶くらいだったら顔を見せた方が速いだろう。


となると、だ。メッセージ送信元は限られてくる。


「運営からのイベント告知…?」

「あっちゃー、国境越えとタイミング被っちゃったかー」


メッセージの題名は『運営より連絡:新イベント開催告知!』というものだった。

中を開いて読んでみる。


『皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 この度、World of Adyssでは、新対人型イベント【不思議な館からの招待状】を開催いたします。


 概要:現在各地のフィールドにある不思議の館へのイベントゲート。

 そこからモンスターが溢れ出し、近隣の街を襲い始めた!

 プレイヤーたちは協力するも、互いにライバルを潰しあうも良し!

 モンスターから街を救うことができた場合、プレイヤーに対し報酬が配られます。

 

 対国家要素…』


と長々とした告知が書かれていた。


「対国家要素…?」


対人型…というのは、このゲームならではあるが、分からないわけでもない。

普段殺しあっているプレイヤーを説得あるいは力尽くで従わせ、ともにイベントクリアを、目指す…なるほど「対人」型だろう。

しかし、国家要素とは何だろうか。


「あぁそうか、クロエちゃんイベント初めてだっけ?対国家要素っていうのは、プレイヤーたちが五大国に一時的に所属してどの国家のプレイヤーが一番モンスターを狩ったか競う要素の事さ。これに関しては一位から五位までの報酬があるし、上にいけばいくほど珍しいアイテムもあるから、みんな結構頑張るのさ」

「へぇ…でも赤ずきんさん、やる気なさそうですね?」

「いやねー。これ、所属国家ってどうやって決まるかっていうと、イベント開始時にいた国になっちゃうんだよね。普段だったらフリーの傭兵枠になる始まりの街にいるんだけど、今回はそうもいかないじゃん?」

「あぁー…迷惑かけます」


赤ずきんの話では、所属国家の決定はイベント開始時……今回の場合だと明日の正午に居た国がプレイヤーの所属国家としてイベント期間中登録されるらしい。

しかし、中立である始まりの街はそうではない。元々がどの国にも属していない街のため、イベント開始時にそこにいると、国から雇われて戦う傭兵という立ち位置になるらしい。


もちろんイベントにて負けてしまえば報酬は支払われないが、雇い主側のNPCとうまく交渉できれば報酬を前払いしてもらうというものも可能だし、事実多くの傭兵プレイヤーはそうしているとのことだった。


「それに今回は対モンスターとの潰しあいだろう?運営がどこ狙ってくるか分からないけど、標的が始まりの街以外なら私たちはほぼ動かなくてもいいと思うしねー」

「あー、始まりの街初心者いっぱいですもんね。私も人のこと言えないですけど」


話しながら【霧海】を操作する。

中々難しいが、【霧海】内で感知したアイテムに対して【霧海】を通じて【鑑定】を行う。

直接目で見ているわけではなく、感覚として伝わってくるものに対しての【鑑定】のため、難度は通常よりも跳ね上がっているが、その分二つの魔術の習熟度がガンガン貯まっていっている。


【チャック】の時は単純に私が使っていなかったから派生魔術を覚えるまで時間がかかったが、上げようと意識すればすぐに上がるというのは錬成魔術でいろいろやっているときに実感している。


「すいません遅れました、行きましょうか」

「おっ、クロエちゃーん出発するからいったん霧しまってー」

「はーい」


と、ここで灰被りがログインしたようだった。

出発の準備を整え、関所にて簡易的な検問を受けたのち、ヴェールズの首都であるシスイを目指して馬車を走らせ始めた。


明日からイベント開始。面倒ごとの予感がひしひしとするのは、どうか気のせいであってほしい。


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