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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第一章 霧の中歩いていこう

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移動中、新しい固有魔術

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします。


街道 - かぼちゃの馬車 - AM


似非PK事件から次の日。赤ずきんが再び出したかぼちゃの馬車に乗り、現在はヴェールズの国境を目指していた。


「ところで、クロエちゃん」

「はいはい?なんです?」


最近はまったくあの間延びした口調で話さなくなった赤ずきんに話しかけられた。

現在私達がいるのは、あと1時間ほどでヴェールズの国境に到着するか…くらいの位置だ。


「君、帽子屋を殺した戦利品として固有魔術手に入れてただろう?あれどうしたんだい?」

「あぁ、あれはまだ中身確かめてないですよ。着いてからでも遅くはないかなって。どうせお二人が近くで監視するんでしょう?」


【チャック】……固有魔術にてレア度uniqueのアイテムが作れてしまう、というのは確実にPKに狙われてしまうであろう理由になってしまう。

まだ作れる、という情報自体は私の交友関係の狭さから漏れていないが、同じサバトメンバーとはいえuniqueアイテムを持っている姿を帽子屋に見られてしまっている。

というかそれで彼を殺している。


このままではいずれ何処かから情報が漏れPK合戦になるだろう、というのは灰被りの言葉だ。

私もそう思う。


「まぁそうはなるんだけどね。でも早めに確かめておくことをオススメするよ。バフ系の固有魔術ならこの馬車の中で鍛えることは出来るからね」

「あー、それもそうか…。了解です。ちょっと確かめますかー」


素直に助言を受け取り、インベントリ内から真っ白な魔術書を取り出す。

PKをしたプレイヤーに紐付けされてドロップするために、この魔術書は盗まれる心配が無いのだ。


パラ…と魔術書を捲る。すると、


『【固有魔術-霧海(ミスト)】を習得しました。』


とログが出る。…しかし、【霧海】?帽子屋との戦闘では彼は使ってきていない固有魔術だ。


「なんて固有魔術を手に入れたんだい?【液状爆瓶(グラスニトロ)】かな?」

「いえ、【霧海】っていうのを」

「ぶっ」


私のその返答を聞いた赤ずきんは途端に大声で笑いだす。


「ハハッハハハハハ、マジかぁ!君よりにも寄って【霧海】を引いたのか!!」

「えーっと……?」

「ひーっ、ひーっ…ふぅー……いや、すまないね。いや【霧海】っていうのは結界系固有魔術の一つだね。帽子屋の持ってる固有魔術の中でもレアな固有魔術だったハズさ」


ほう、レアだったのか。それはラッキーだった。


「まぁ効果としては、範囲内に霧を発生させるっていうもので、帽子屋もほぼ使ってなかったハズだけどね」


前言撤回、ラッキーでもなんでも無い。貧乏くじを引いたようだった。


「一回使ってみますね。発生(コール)【霧海】」


聞く限り無害そうなので、馬車内に霧を発生させる。

すると、私の身体からシュー……と煙が出るように霧が発生し始め、しばらくすると客車の中は濃い霧に包まれてしまった。


「おっと、狭いと中々先まで見えないね。時間はかかるけど、割と面白そうなんじゃないかい?」

「そうですね…少し使い方を考えておきますか。あ、このまま感覚掴みたいんで出しっ放しで良いですかね、霧」

「んー、良いけれど一応灰被りちゃんには説明しときなよー」

「はーい」


現在灰被りは馬の様子を見ているために、一応こちらからチャットにて連絡しておく。

一応赤ずきんの魔術で呼んだ馬車の馬なので、様子はずっと見ている必要はないのだが。



-----------------------



霧を出し続けて20分ほど経っただろうか。外がどうなっているかも見てなかった。

一応分かったことだが、【霧海】で出した霧に関してはある程度私の意志で操ることが可能なようだった。


それと、霧を出すだけ…と赤ずきんは言っていたが感覚的にはそうではないと感じた。

霧は霧でも、霧の触れたモノを把握できる感知、索敵系の魔力の霧だ。

現在客車に充満してるこの【霧海】だが、私にはこの客車に何があり、何処に赤ずきんが座ってニヤニヤしているかも手に取るようにわかる。


【霧海】のレベルが上がれば、派生魔術も出てくることだし期待値は高い。


濃い霧の中、短剣を持ってプレイヤーを殺しにくる…そんなプレイをしていたら、いつかイベントと勘違いされてどこかのサバトが出てきそうだが、どうせ出来そうならばソレも悪くない。


「赤ずきんさん、霧出すのやめたんで窓開けましょう」

「おや、そうかい?じゃあ窓…というより天井を開けてしまおう。丁度読み終わったようだしね、彼」


赤ずきんが指をパチン、と鳴らすとこの間見たように天井が煙へと変わっていく。

煙はそのまま客車の赤ずきんの座る隣りの席までやってきて、ジーニーへと変化した。


『やぁお嬢さん方。と早速だが本題だ。クロエから預かっていた禁書だが、読み終わったから返そう』

「あ、はーい」

『昨日までに読み終われなくてすまなかったね。難解な文章だったために、少し検索を掛けながら読んでいたために時間がかかってしまった』

「いや、問題ないよ、ありがとジーニー」


そう、昨日の帽子屋戦ではジーニーから禁書を返してもらうのをうっかり忘れていたために、使う以前の問題だったのだ。


「でも何か分かった?全部読んだってことは」

『それについては否定しておこう。君に紐付けされたからか、これといった情報にアクセスできたわけじゃあないんだ。少し期待してたんだがね』

「おや、ジーニー。そうだったなら早く言ってくれよ。私にも考えがあるというのに」


ここで赤ずきんが口を挟んでくる。視線を動かすと、そこにはいつも通りの…いや見たこともないくらい輝いた胡散臭い笑顔があった。


「私の知り合いに、通称『禁書守(ガ―ディアン)』と呼ばれている子がいるんだけど、その子なら何かわかるかもしれないんだが…」


赤ずきんがこちらを意味ありげに見つめてくる。

なんなのだろうか。


「彼女、気が難しくてね。…我が強い、と言うべきか。結構話すの疲れると思うけど、それでもあってみるかい?」

「話すのに疲れる相手は慣れてますし、この禁書についてわかるなら話してみたいですね。割とこの本、他の禁書とは中身違うらしいですし」

「それじゃあ決定だ!一応あとでメッセージ送ってアポとっとくから、日程決まったら教えるよ」


そう言う赤ずきんに一礼し、肉眼で見えるようになった窓に目をやる。

見たことのない景色、だがそこにゲーム特有の不自然さはなく、何処までもリアルな世界が広がっている。


国境までは、あと少しだ。


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