試合後に
■クロエ視点
『はい、全試合が終了しました。只今終了処理を行っているので選手の皆さんは暫しお待ちを……また、終了処理と共に、国家間戦争イベントも終了するため、お気を付けを』
第五試合……最終戦が終わり、ハロウがこちらへと戻ってきた瞬間、アナウンスが流れた。
GMからの連絡事項だろう。
正直戦後処理なんかはよくわからないから、今後の展開なんかは頭には入っていないのだが。
「皆お疲れ様!手の内を晒す事になるのに参加してくれてありがとうね。多分ファイトマネーとかはそれに値するアイテムなんかが後で運営経由で送られてくると思うから」
「りょうかーい。じゃあ私達傭兵は元の国に戻った方がいいね?」
「そうね。この後は色々忙しくなりそうだし……って言っても主に代表の私が、なんだけど」
「お疲れ様。まぁうちのサバトも出来ることがあったら手伝うことにしよう」
ハロウ、赤ずきんが会話しているのを見つつ。
私は近くにいるリセットボタンの顔を横目で確認した。
どうにも気まずそうな顔をしている。
どう話しかけたものか、そう考えていると。
こちらへとグリンゴッツがリックやクリスと共に歩いてきた。
『ご主人。この後打ち上げがあるそうだ』
「あ、ほんと?行こうかな……どこでやるんです?」
「んー、まだ決めてない。まぁ作戦会議したあの喫茶店でいいんじゃないかなー。あそこ夜の時間帯になると酒場になるらしくて、色々メニューも変わるみたいなんだ」
「それは良さそうですね。……おっと、どこに行くつもりです?」
クリスと話していると、こっそり逃げ出そうとしていたリセットボタンがいたために。
【チャック】を使いローブを掴み逃げられないようにする。
「ぉお?!……ってこれ君か!やめてよこういうの!」
「こういう事するのに特化してるのが私の固有なので。それにここで貴女を逃がすと後々面倒な事になりそうですもの」
「……一応聞いておくけど、面倒な事って?」
「いや知りませんけどね。勘ですよ勘」
「……ハァ」
リセットボタンは頭を抱えた後に、周りを見渡す。
しかしながら、ここに彼女の味方は居ないだろう。……というか、彼女のやってきたことを知っている者ならば、味方が他にいるのかどうかも怪しい。
「まぁ、理由のない勘で止めはしましたが。どうせなら貴女も打ち上げに出ましょうよ」
「はぁ?なんで私が」
「いいじゃないですか。多分毒とか入ってない普通の打ち上げです。……あぁ。もしかしてあの固有で耐性とかあるんです?なら毒が入ってても大丈夫ですね」
「いやあっても言わないから。……本当、今日は押しが強いわね。このまま押し問答になっても仕方ないし、私も出るわ……」
「とのことです」
「クロエさん、もしかしてテンション高い?試合で勝ったのそんなに嬉しかったの?まぁいいか、とりあえずRTBNさんもメンバーに加えとくねー」
そういって、クリスとリックは今だ何かを話しているハロウ達の方へと向かっていく。
私の横にはため息を吐いているリセットボタンとグリンゴッツのみが残された。
「……貴女、どうしたの?」
「どうしたの、とは」
「あんまり一緒に行動したことはないけど、貴女が今少しおかしいのはわかる。……私こういうの聞くのはあんまり得意じゃないんだけど。何かあったの?」
「あー、いや。特に何かあったわけではないですよ」
一息。
「簡単に言えば、あと少ししたらこのゲームを暫く休憩しようかなって思ってまして。人によっては会うのが最後になるでしょうし、出来る限り印象に残るような感じでいこうかと思ってまして」
「……あぁ、成程。そういう事ね……丁度いいわ。最後に一度くらい戦っておく?」
「いえ、このまま勝ち逃げさせてもらいますよ。リセットボタンも次会えるかどうかも分からない1人ですからね」
「あは、じゃあ休憩に入る前までよく周りを警戒することね。殺しに行くことにするから」
「待ってますよ」
グリンゴッツの頭を撫でながら。
自分自身でもわかっていた、普段と違う理由を話した。
VRMMOはどうしても顔を合わせてコミュニケーションをとる分、引退だったり休憩だったりで長時間ゲームから離れる時に寂しくなってしまう。
だからこそだろうか。
出会いも別れも得意ではない私は自分でも分かるくらいには変になってしまっているのだろうか。
「この後の打ち上げで一応自分から言うつもりなんで」
「了解了解。言わないよ。まぁ……君、結構最後だからって事で襲われまくりそうな気もしないけどね」
「それは……ありそうですね」
赤ずきんを始め、ハロウに灰被り、クリス辺りも襲ってきそうな気がする。
そこにリセットボタンや……それこそホーネット辺りも加わる可能性がある。
そんなことを話ながら。
イベント終了処理を2人と1体で待っていた。