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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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第五試合 中


■ハロウ視点


そこからの展開は早かった。

近づいてきたハルに対し、上からがしゃどくろを、対面から再び呪術によって太刀を作り出した私が向かう。


火を吐き、巨大な骨の体を使って押し潰そうとするがしゃどくろを器用に避けながら、避けた先へと先回りしている私の太刀を、自身の固有で増やした剣を使い防御する。

その瞬間、私は【蠱毒】、【犬神】を射出し後ろへと飛ぶ。


新たに【髑髏のランタン】を作り出し、遠距離から攻撃できる手段を増やしながら彼の詠唱の先……派生魔術に備えるように準備を始めておく。


「【道は有なり】【されど、其れ等総ては悪と成る】」


……モチーフとしては五輪書かしらねぇ。

戦いに関係のない固有魔術の元ネタの事を考えながら。私は私で、彼の派生魔術に応えるように。

歌うように詠唱をする。


「【さぁ、最後の宴を始めましょう】」

「【ならば、我は其の悪を空の心を持って叩き斬ろう】……【二刀開眼】発動」


私が歌った瞬間、がしゃどくろは光となって私の体の中へと還ってくる。

それと同時、ハルの威圧感が膨れ上がり……よくよく見てみれば彼の目の色が黒から空を思わせる水色へと変化していた。


身を削がれるような感覚を感じながら。

今回は両腕が骨へと変わるのを確認しつつ、足を使って距離をとろうと後ろへと下がり続ける。

当然それを追ってハルが駆けてきているため、彼我の距離はそこまで変化しないのだが。


「逃げるんじゃあねぇよ!」

「そりゃ逃げるわよ、一回斬り殺されてるもの」

「その後刺してきただろうが!」

「それはそれよ……ほら、【蠱龍】5体」

「チッ」


逃げつつ会話しつつ。

腕が使えなくとも、魔術は使える。

先ほどまで使っていた【蠱毒】よりも、巨大で尚且つ密度も違う龍の形をした呪いをハルへと向かわせる。


しかし、これは過去に一度やったこと。

予想通りに叩き切られ、そして。


「ぉぶっ!?」

「あら、さっきも同じことあったのに正面から行くのはどうかと思うわよー」

「くッ……!」


そして【呪塊】のように液状化し呪いをそのままハルへと浴びせかける。

【二刀開眼】を発動してからどこか動きが変わったように見えるハルの動きを、呪いによってある程度自分がコントロールする。

そして勝利への道を作り上げていく。


しかしやはり【二刀開眼】の詳細がわからないというのは実に不便だ。

出来る限りの遅延戦闘を行いつつ、情報収集をするというのもいいのかもしれない。

試しに【範囲変異】を使い、彼の足元に気付かれないようにカモフラージュした穴を作り出してみれば。

瞬間、彼は自分に襲い掛かっていた【蠱龍】の事を突然無視をして後ろへと飛んだ。


「成程」


続いて、【呪形】を発動し【蠱龍】と共に彼の元へと向かわせる。

戦闘用ではなく、自爆特攻を主とした人型の呪い。それを見た瞬間にハルの動きがさらに変わる。

今までは迫ってくるものを叩き斬りつつこちらへ向かってきていたはずなのに、【呪形】からは逃げるように距離をとっていた。


……【空刀】を使って刀を出さない……?いや、出せないが正しいのかしら。

たまに、派生魔術の発動中は元の固有魔術を発動することができないものがあったりする。

基本的にそういった派生魔術は強力なものになりやすいのだが……ハルの【二刀開眼】もそれと似たようなものなのだろうか。


「……それか、爆発するのを知ってて逃げてるか……接触しない限りは爆発しないから安全ではあるのだけど」


自身の使う魔術は汎用であろうが固有であろうが秘匿するものだ。

そこから自身の好んで使う戦術が露呈したり、それに対する対策を立てられてしまうという理由から。

私は例外中の例外で。コロッセウムという衆人環視の中戦う事に特化しているため知られている事も多い。


だが、それでも知られていない事もその分多く存在する。

それこそ、対人戦で【呪形】で自爆特攻なんてさせた事は過去一度もないし、海岸で使った時は私から離れた位置で戦わせていたため、私が使ったものかどうかは分かるものは少ないだろう。

何せ呪術という汎用魔術を学んでさえいれば誰でも覚えられるのが【呪形】なのだから。


……でも、ハルの持ってる汎用の中に呪術はなかったはず。

ファルシ側の誰かに教えてもらった?十分にあり得るだろう。

しかし、いくら今は仲間だからといって、後々自分と対峙するかもしれない相手に魔術の情報をやすやすと教えるものだろうか。


それにもう一つ。

【範囲変異】によって、落とし穴を作った瞬間後ろに飛んでいた事。

あれは知っている知っていない云々の話じゃなく、なぜ彼がカモフラージュされているのにも関わらず分かったのか。そこが問題点だ。


「全てを見れる目……って所かしら」

「……チッ」


全てを見ることができる目。

どういった視界になっているかはわからないが、見てもいない足元の変化まで読み取ったという事は、そういった情報が表示される目であると考えた方がいいだろう。

巨大な【蠱龍】を一断ち出来るのも、これによって魔術の脆弱な部分でも見て切っているのではないだろうか。

彼から否定がない、ということは差異はあれどそこまで違うわけでもないだろう。


予想以上に厄介な派生魔術だ。


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