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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
236/242

第五試合 上


■ハロウ視点


転送された先は、第一戦目と同じ決闘場のように見える場所だった。

先ほどまで皆と居たコロッセウムとほぼ同じ造形。

違う点はただ一つ。


私の反対側に一人、刀を持った男が立っていることだろう。


「また会ったわね」

「おう、久々だな。……このゲームで一度二度殺しあった相手と再会するのは色々嫌なんだがな」

「あらいいじゃない。その都度違う方法で殺せばいいんだから」


最終戦である第五試合。

私の相手は過去に何度か戦っているグラサンをかけた刀使いの魔術師であるハルだった。

彼は一本の刀の先をこちらへと向け、顔をにたぁと歪ませる。


「はは、そりゃそうだ。今んとこは俺の負け続きだしな」

「私の方が不利よねぇ。どう?これから自分の弱点暴露してみない?」

「はは、面白れぇ事言うじゃねぇか。そういうのは殺し合いの中で見つけていくもんだろう?」

「それもそうね」


二人で笑い合いながら。

それぞれの武器を構える。

私は呪いの詰まった小瓶を。ハルは自身の持つ刀を。

一瞬の静寂の後、戦いは始まった。




「【呪術 - 呪塊:太刀】」


呟いた瞬間、私の手には太刀のような形をした呪いの塊が生成される。

【変異】で武器を創るように。呪術によって呪いを固め、武器を創り出す。


それをこちらへと突っ込んできていたハルに対し払うように振るう。

ガキン、という音とともに空中に出現した刀によって防がれた太刀は、その瞬間液状となって彼へと襲い掛かった。


「なっ」


【呪塊】はその名の通り、呪いの塊を作り出すだけの魔術。

形は指定しない場合は様々で、基本形としては立方体となる。

そして、生成した後もその形を変えることは可能なのだ。


呪いを被ったハルの動きは見るからに遅くなる。

状態異常か何かで【呪い】をもらったのだろう。

私は後ろに飛びながら【蠱毒】を彼へと放ち、ダメ押しとばかりに呪いを殺到させた。


「【空刀】」


但し、それは空中に出現した刀によって断ち切られる。

彼の持つ固有魔術である【空刀】。

現状戦ってわかっているのは刀を出現させ自由自在に操る事が出来る魔術ということのみ。

派生魔術で【二刀開眼】というものがあるのは分かっているが……詳しい効果はあまり知らない。


そのため、出来る限りハルを圧倒するように、何もできないように攻撃していかないと未知の攻撃が来る可能性がある。


「【二つ。彼らに話しかけた声は次第に増えてゆく】」

「ッ!増える奴か!」


【頼るならば三人に】。

自身を3人へと分裂させるだけの派生魔術。

過去にそれに痛い目を見せられたことのあるハルは、その詠唱を聞いた瞬間に距離を詰めながら周囲に刀を増やしこっちへと突っ込んでくる。

5本、10本と増えていく刀を見て、正直操れるのは何本までなのか純粋に気になった。


「【視ると老婆の身体が三つへと増えていくではないか】」

「【空刀】追加ァ!」


詠唱が終了し、私が分裂するのとハルがこちらへと辿り着くのはほぼ同時。

瞬間、3人の私へと刀達が殺到する。


『1番、全力で防御』

『2番はそれの補助』

『3番は詠唱開始』


しかし、それが私達の身に届く事はない。

1人の私が障壁を展開し、それをもう1人の私が補強する。

そして、最後の1人が始めたのは、


「【彼女は言いました。彼の者は鶏の足の上に建つ小屋に住むと】」


がしゃどくろを呼ぶための詠唱。

現状発動している派生魔術全てを停止させ、変わりに巨大な骨の妖怪を召喚する派生魔術。

今回は、自身の使うもう一つの派生魔術のためのコストにするために呼び出すのだが。


「【しかし、そこへ行こうとも。そこには聞いていた者は住んでいませんでした】」

「……【空は善有りて、悪は無し】」


ガキンガキン、と障壁に刀が弾かれる音と共に。

ハルからも詠唱が聞こえてくる。【二刀開眼】の詠唱だっただろうか。

私の派生である身体を犠牲にした方の【バーバ・ヤーガ】、それが発動した状態の私を圧倒し切り伏せた派生。

詳細が一切分からないのが痛いところだが、その分その詠唱には時間がかかる。


思考発動によって【蠱毒】、【犬神】を発動させつつ、彼の詠唱の邪魔をしようとしてみるが、やはりその程度では刀一振りで断ち切られてしまい、どうしようもなかった。


「【代わりに存在していたのは、骸骨だったのです】」

「【智は有なり】【理は有なり】」


決闘場に、武器と障壁がぶつかり合う音、詠唱のための声が響く。

しかし、一足先に私の声は終わりを告げる。


「【バーバ・ヤーガ】発動」


全てが消え再び1人になった私の背後から、巨大な骨の妖怪が這い出てくる。

但しその瞬間だけは、障壁すらも消える。

つまりは、


「あら、レディにそうやって突っ込んでくるのは流石に男としてどうなのかしら」


遮る壁がなくなったことによって、ハルがこちらへと一足飛びに近づいてきていた。


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