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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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第四試合 Ⅱ


■リセットボタン視点


『軍隊』が相手と接触したらしく、戦闘が始まったようだ。

単体毎の戦闘能力が低いためにそこまでの時間は稼げないが……それでも『軍隊』を使う理由がある。

簡単に言えば……運用試験。

私を本気で殺しに来る相手は、基本的に距離を取らず近場から襲い掛かってくることが多い。ホムンクルスを生み出すことが知られているからだろう。

その為に、『軍隊』のような数が多く、性能が低いタイプのホムンクルスは今日この日まで使う場面がなかったのだ。


ホムンクルスは基本的に、生み出した際に命令を与えるか、魔術によって触媒を生成した際に触媒自体に命令を組み込むタイプの2種類がある。

後者の方も、あとから命令を追加で与えることが出来るため基本的にはこちらを使う者が多いが、その分欠点もあるのだ。

それが『簡易的な命令しか組み込めない』という点だった。


「うーん。やっぱり『軍隊』は実戦には向かないな。改良が必要だ」


今回使っている『軍隊』もそのタイプ。

触媒自体に組み込んでいる命令は『連携して相手を倒す』というもの。

しかし考える力がないために、連携しようにも周りのホムンクルスと示し合わせることすらできない。


今後の改良点が見つかった所で、私は【合成】によってホムンクルスを2種作り終える。

思ったよりも時間稼ぎというものが出来ているようで。

恐らくは相手の取得魔術の傾向がここに出ているのだろう。

数が多い敵に時間がかかってしまう。つまりは単体指定系の攻撃魔術を今はメインに使っているということ。


きちんと獲物が出てきた時に範囲系の魔術を使わないとは限らないが……複数体に囲まれている現状で使わないというのは効率的ではないし、体力や魔力の温存をするのであればそちらの方が良いはずなのだ。


「しっかし……これなんだったっけ?黒い靄みたいなもの纏ってる剣とか呪術系で強化された物くらいしか知らないけど……」


『軍隊』の1体の視界から、相手を観察するがどうにも持っている得物が見たことあるような無いような……そんなどうにもモヤモヤするものだったのだ。


呪術系での強化(エンチャント)

デメリットが付く代わりに強力なメリットのある効果を付けることができる、呪術をメインに使うプレイヤーが使うモノだ。

しかし今私の相手になっている学生服の青年は、呪術を使う魔術師が持っているような触媒を取り出していないし、どちらかといえば呪術とは真逆と呼ばれる聖光魔術をメインに使っている。


端からみれば、異世界転移してきたラノベの主人公に見えなくもない。

持っている得物が禍々しいために、ジャンルは復讐系になるだろうが。


「……あー、ハロウさんが言ってた呪われた聖剣シリーズを持ってる人かなもしかして。面倒だな……」


……でもまだ敵にもきちんと会ってないこの状況でそんなもの使う必要ある?

呪われた聖剣シリーズのデメリットは有名だ。

時々運が良い(悪い)初心者が、ダンジョンボスから手に入れて被害に遭うため掲示板では定期的に話題になっている。


そのデメリットは【強制操作】。

自分の身体が言う事を聞かず、まるでムービー中かのように勝手に操作される状態が付与される。

ただし、呪術を扱えるものはある程度そのデメリットを軽減することも可能だ。

その場合、メリットである【異常強化】の効果すらも軽減してしまうため、あまり呪術使いの中でも使っている者は少ない。


「……やっぱりドラグとか出して一気に決めた方がいいか?」


最悪、私の使うホムンクルスが通用しない場合も考えられる。

文字通り切札である固有魔術を使った方が良いかもしれない。

もう少し実験がしたかったというのもあるが……面倒な相手を使ってまでやるものでもない。


「よし、じゃあやろう。【錬金ー生命誕生】」


先ほどの『軍隊』を生み出した時と同じように。

壁の外へと赤い薬品の入ったフラスコを放り投げる。

それによって生まれるは、巨大な白いホムンクルスのドラゴン。


ついでに、と先ほど【合成】によって創り出した紫色の薬品と、黄土色の薬品の入った2つのフラスコも一緒に投げる。

すれば、そこから龍と人の特徴を併せ持ったホムンクルスに加え、巨大なゴーレム型のホムンクルスが誕生した。


「よし、ドラグと合成ホムンクルスAとB。目標を発見次第攻撃開始で。とりあえず私も後から追うから色々派手にいこう」


そう命令して出撃させる。

私も私で、一度作った【範囲変異】による簡易拠点を一度崩すと、詠唱を始める。


「【さぁ、願いを聞きましょう】【されど願いは聞けど、それを叶えるとは限らない】」


使う魔術は、私の固有魔術。

観戦ウィンドウでは音声は共有されないため、情報の流出も少ないだろう。


「【燃え尽きる札は、貴方に苦しみと痛みを与えるだろう】」


詠唱を進めつつ、私は対戦相手がいる場所へと進んで行く。

先に向かったホムンクルスたちが既に戦闘しているのか、森の一部が燃え上がる。

……あそこ付いたら火事によってのDoTダメージとかないよね?

まぁあったらあったで仕方ない、そう考え最後の宣言を行う。


「【札の王は希望か絶望か(キング様)】」


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