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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
230/242

試合間の休憩時間 2

みじかめ


■クロエ視点


試合終了後、赤ずきんと灰被りが共に転送されて戻ってきた。

ある程度分かっていたことだが、自分よりも実力が高いプレイヤーの試合というのは理解できること以上に、分からないことが多かった。


「おかえりなさい。お疲れ様です」

「ただいまー。いやぁ、勝ててよかったよ」


赤ずきんはそう言いながら、頬を掻く。

外から音声無しで見ていた私達にとって、試合中どんな会話があったかは分からない。

……まぁ、ある意味身内同士で戦ったみたいだし、口喧嘩か何かでもしたのかな。

そんな感想しか出てこない。


「ところで、クロエちゃん」

「?なんです?」

「ちょっとこっちきてこっち」


と、そう言って赤ずきんは私を手招きする。

そうして連れてこられたのはコロッセウムの隅。周囲に誰もいない人気のない場所だった。

彼女はしゃがみ込み、声を小さくするとまるで内緒話をするかのように話し始める。


「クロエちゃん、【言霊】って知ってるよね?」

「……【言霊】、ですか?」


内緒話だった。


「そ、【言霊】。クロエちゃんが第二試合でやってたみたいに試合中やってみたらできちゃってさ。これどういう仕様なの?」

「あ、もう知ってる前提なんですね」

「そりゃもう。私が真似して出来たんだから、それをやってたクロエちゃんが知らないはずないでしょ」

「……はぁ。とりあえず、私も詳しい事は知らないですよ。というか赤ずきんさんも知らなかったんですか?【言霊】(これ)


そう聞いてみると、肩を竦め苦笑いを浮かべた彼女はこう言った。


「仕方ないだろう?今までこのWOAでのPvP、PvEといえば魔術を思考行使によって扱う事前提で戦術立てられてるんだから。そりゃフェイントとして発声での行使も使ったりはするけど、【言霊】みたいにそのまま……ってのは周りじゃ見た事ないぜ?」

「成程……。といっても、私もあの時修得したんで詳しい事は知らないんですよ。簡易チュートリアルとか出てきましたけど、試合中だったんで見てないですし」

「そうか……。まぁ仕方ない。あとでちょっとこれについて情報詰めていこうか。暇なときで良いから」

「了解です。じゃあ集まる時には最低でも簡易チュートリアルの内容理解したくらいにしますか」

「そうしよう」


そう言って、私達は皆がいる場所へと戻っていく。

言霊については私も気になっていた事だからありがたい限りだ。

ただ、あれだけ自由度の高いコンテンツだ。誰かしらが先に発見して、それこそ情報を独り占めしていてもおかしくはないだろう。


何事も先駆者がいる。

第一陣と呼ばれる、サービス開始からこのゲームをプレイしている者達に追いつくには並大抵の事では出来ない。

私もこうやってここに立ってはいるが……まだまだ先駆者には追い付けないのだ。


「あ、そうだ。次の試合って……」

「あぁ、そうだったね。彼?彼女?がそうかな。名前はRTBNって子。多分偽名登録かも」

「偽名で登録とかできるんです?」

「出来るんです。このゲームって情報が結構ものを言うでしょ?特に名前。だからこういう多くの人の目に触れるイベントの時って、偽名での登録も出来るんだよね。まぁ一応、今回でいうならハロウみたいなトップには名前を知られちゃうわけだけど」

「あぁ、流石に指示出す人が名前知らなかったら問題ですもんね。……所で私とかってなんて登録したんです?」

「んんー?確かクロエちゃんはマッドハッターだったかな。全員『不思議の国のアリス』のキャラからとってたはず」


何処が『狂った帽子屋(マッドハッター)』なのか問い詰めたかったが、そろそろ次の試合が始まる頃合いだった。

私の知らない人同士での戦いというのも新鮮で面白そうだし、得られるものも多そうだ。


そう考えながらRTBNというプレイヤーを見る。

フード付きのローブを着ており、顔が隠れるようにフードを被っている。

何やら試験管のような物を何本か持ち、中身を確かめていることから錬金魔術を得意としているのだろうか。


固有魔術に使う可能性もあるため、この場では詳しい事は分からないが……それでもこの場にきちんと選ばれたプレイヤーだ。実力は高いのだろう。

そんなことを考えていると、そのプレイヤーは試合用のフィールドへと転送されていった。

第四試合が始まる。


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