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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半

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試合間の休憩時間


■クロエ視点


『では、第一、二試合が終わりましたので30分ほどの休憩を挟んだ後、第三試合を開始します』


私が廃神殿から転送され控室代わりのコロッセウムへと帰ってくると、運営からのアナウンスが入り休憩時間となった。

出場側のプレイヤーはそこまで時間が経っていないように感じるが、観戦だけのプレイヤーにとってはただただ見てるだけというのも疲れるものなのだろう。


「あっ、おーいクロエちゃん。こっちこっち」

「はーい」


いつものメンバーはどこだろうと周囲を見渡していると、後方から声を掛けられる。

顔を向けると、赤ずきんが駆け足で手を振りながらこちらへと近寄ってきていた。


「お疲れ。よく頑張った」

「いえ、運が良かっただけですよ。特に最後。……ところで皆は?」

「あっちに居るよ。行こうか」


彼女についていけば、少し中心から離れた場所に皆集まっていた。

赤ずきんの後ろに私が居るのを確認すると、クリスとリックがこちらへと近づいてくる。

リックの姿が人狼ではなく人間に戻っているという事は、彼の固有のデメリットの効果が切れたということだろうか。


「お疲れ様ー!」

「クロエさんありがとうございました!途中で落ちちまってすいません!」

「お疲れ様です。あの時はアレが最善だったし、リックさんが助けてくれたから私は何とか戦闘続行できたんで。気付かなかった私が悪いんですよ」


実際、そうなのだ。

私が気付いてさえいれば自力で回避も出来た。

それをカバーするため、彼は犠牲になったのだから謝る必要はない。むしろ私が謝るべきだろう。


といっても、終わったことだ。

あんまり謝り合っていても仕方がないということで、話題は次の試合……赤ずきんと灰被りの方へ。


「前にも聞いた気がしますけど、勝ち目は?」

「おいおい、クロエちゃんは私が負けるとでも思うのかい?心外だねぇ……そこまで信用されてないのは悲しいなぁ」

「……そういう話じゃなくて。勝算とかそういうのですよ。レンさんの方はよく知らないですけど、あのガビーロールさんが相手ですし気になりますよ」


そう言うと、彼女は少し悩んだような顔をした後に灰被りの方を見た。

灰被りの方も何やら少し考えるような素振りをした後に、彼女の方へと頷いた。


「あー、うん。まぁ勝算はないわけではないよ。でもなんというか。私達相性が悪いんだよねぇ……」

「どっちと?」

どちらも(・・・・)


どちらも。

私にとってはほぼ未知数であるレンに関してだけではなく、あのガビーロールについても相性が悪いと彼女は言ったのだ。


彼女の固有魔術である【童話語り】、その派生の【劇場展開】は強力なバフを味方へと撒くことができる優秀なモノだが、そのデメリットとして一切の移動を禁じられる。

それに加え、ガビーロールはゴーレムを作成する術に長けているのだ。


それこそ物量作戦で来られれば動けない赤ずきんなんてすぐに呑まれて死んでしまうだろう。

そういう意味で相性が悪い、というのであれば分かるが……彼女は今その前提を定義しなかった。

つまり、それ以外の部分で相性が悪いと言わせるほどの何かを彼が持っているということなのだろう。


……でも、私()


「赤ずきんさんが苦手な理由は何となく分かるんですけど、灰被りさんも相性が悪いんです?」

「えぇ、そうですね……。ゴーレムに視界を塞がれちゃって私の眼も通りませんし、いつもの戦法は対モブ用なので対人には向かないんですよ」

「成程」


確かに彼女の持つ【灰化の魔眼】は視線さえ通らなければ本体へ効果を及ぼすことはないのだろうし……ガビーロールの使うゴーレムは大きさも自由自在だろう。

事実、私と共闘した時には色々なゴーレムを見せてくれたのだから。


「まぁ、こっちもこっちで勝ち目がない戦いには挑まないので。大丈夫ですよ……ところでクロエさん」

「?なんです?」

「あの……その、後ろに……」

「?……あっ」


灰被りの指摘に首を傾げながら後ろを向けば、そこには少し落ち込んだような雰囲気を纏った私の傀儡達がそこにいた。


「あー……えっと。グリンゴッツ、お疲れ様」

『……申し訳ない、ご主人。役に立たなかったな』

「いや、いやいや!役に立ったから!それはもう本当に!ホーネットを抑える役目助かったからさ!!」

「そっ、そうだぜ?!俺じゃああの落とし穴に蓋なんて出来なかったからな!ホント助かった!!」


今までに見たことのないレベルで落ち込んでいる彼に対し、私とリックは必死になって励ますことになった。

実際に落ち込んでいたのは彼だけで、他の4体……キング達に関して言えばそもそもそういった事を考える(AI)がないために一緒になって突っ立っているだけであったのが幸いだろうか。


そんなことをしていたら、30分なんてあっという間に過ぎていき。

次の試合、第三試合の開始時間となった。

これから始まるは、お互いを深く知る者同士の決闘だ。


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