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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
208/242

第二試合 壱

第二試合、予想よりも少し長くなりそう


■クロエ視点


神殿の中は外から見た通り所々が崩れていた。

それに加え、何やら壊れた罠のようなものや、何か黒い液体のようなものが壁にこびりついていたりなど、荘厳や清潔なイメージのある神殿からはかけ離れている様子だった。


『運営も趣味がわりぃな。こんな廃神殿用意するんなんて』

「まぁ、味はありますよね。魔術師同士が戦うにはもってこいな場所でしょう」

『それもそうだ。神への冒涜ばかりするのが俺達魔術師だからな』


クックッ、と喉を鳴らして笑いつつも周囲に気を配るリックを横目に、私は統率魔術で使えるようになった【統御】を発動させる。

相手が魔力感知系の魔術を修得していた場合、自分達の位置がバレる可能性もあるがこれはもう仕方ない。

そもそも【霧海】を広げ始めた時点で魔力を隠すことに関してはもう意味がない。


「索敵要員増やします?一応増やせないこともないですけど」

『……いや、やめておこう。出すだけ出しておいて周囲の警戒だけに留めさせておいた方がまだいい。下手に誘導されて罠を張られるよりはマシだ』

「了解」


【チャック】からキング達を出しつつ、グリンゴッツに彼らの指揮権を移す。

これで私が指揮せずとも、グリンゴッツが指揮を出せばその通りに動いてくれるだろう。

今は私達についてきながら周囲警戒、という極々簡単な命令だけだが。


暫く奥へ奥へと進んで行くと、【霧海】が何か動くものを察知した。


「リックさん」

『了解、どっちだ?』

「……正面、大部屋になっている所に1つと……ッ!【魔力装】!」


【霧海】によって常時伝えられる索敵情報を伝えようと声を出した瞬間、私は咄嗟に【魔力装】を自らの首後ろを守るように展開した。

直後ガキンッ!と何かが【魔力装】にぶつかるような音と共に強い衝撃が私を叩く。

その場に踏みとどまることができない程の衝撃を喰らった私は、そのまま前に居たリックの方へと突き飛ばされてしまう。


『なっ!?』

『敵襲!散開!!』


グリンゴッツの号令によって、キング達が戦闘しやすいように広がる……が、ここは神殿内の通路。

人が4人ほどまでなら横に並んで歩ける程度には広いが、それでも戦闘するとなると狭い。


『どういうことだ、索敵は!?』

「襲われる直前まで反応なし!そういう阻害系かと」

『チッ……予想よりも厄介なタイプじゃねぇかよ』


この場で襲ってくる相手は決まっている。

グリムは言ってしまえばこのような奇襲はしてこない。あのガキはそんな性格ではないからだ。

では、誰か。


「ホーネット……!」

「やぁ、ギルマス。久しぶり」


奇襲用だろうか。いつぞやみた似非騎士装備は黒塗りとなっており、頭からはボロボロのフードを被っている。

顔が認識しにくくなっているため、アレが彼の奇襲能力を底上げしている装備なのだろう。


『……アイツとどんな因縁があるかは知らねぇが、いくぞ』

「えぇ」


相手の奇襲が失敗に終わったこの場面。

そしてグリムらしき人影はまだ私達が向かっていた大部屋から動く気配はない。

まるで配下が敵将の首をとってくるのを待っているかのように。


つまりは。

……圧倒的、有利。

数は勿論、グリムが居ないことによって普通に魔術を使う事ができる。

それが意味するものは。


「【影槍-分裂】、【遠隔装作】!」

『【物絶-動】、【呪絶-動】』


私の影から3本の影の槍に加え、周囲から魔力で出来た剣がホーネットへと射出される。

一方リックはそのまま突っ込みつつ、以前も使っていた物理攻撃、魔術攻撃に対する防御結界を特殊な形で自らの周囲へと展開している。

ファンネルのように彼の周囲に浮かぶ数枚の障壁は、彼の動きに合わせて追従している。


「……【■■■■】」


私の攻撃が着弾する直前、【影槍】は枝を伸ばすように分裂する。

それに加え、リックのダメ押しの近接攻撃がその身体に当たりそうになったその瞬間。

無数の爆発音と共に爆炎が彼の身体から噴き出した。


……何が起きた?

リックはその衝撃に私の方へと飛ばされてくるが、咄嗟に結界で身を守ったのかダメージは少なそうに見える。

ホーネットはといえば。謎の爆発の中心にいたはずなのに、傷一つ付いてない。

私の攻撃ですら一撃も喰らっていないかのように。


「ハハ、これくらいじゃダメージにすらならない。本当に素晴らしいな」

「……固有魔術?」

「えぇ、そうですよギルマス。……いえ、もう元ですね。これは固有魔術、というか貴女と同系統の固有魔術ですよ。ご存じない?」


同系統。その言葉に何が原因で今の爆発……それに加えダメージが皆無に見える彼の様子。

そして、彼が私と以前戦っていた時に使っていたものを思い出し、


「【魔力装】の派生か……!」

「せいかーい、あの時とはまたちょっと変わったんですけど……ねっ!」


彼はいつぞやのように光る剣……【魔力装】で作ったソレを手に出現させ、私の方へと一足飛びに踏み込んで剣を振り下ろそうとする。

普通に喰らえば私はそのまま殺されるだろう。

しかし、それは適わない。


『おいおい、俺を忘れるなよ。こんだけモフモフの愛らしい姿してんだから、こっちも相手してくれや』

「……チッ」


ガキン、と先ほど聞いたような音を立てつつ、ホーネットの持つ剣は私の目の前に出現した半透明の障壁によってその勢いを止められた。

それを好機、と見てかキング達が一斉に彼へと襲い掛かる。


だが、それもホーネットの身体に……というよりは装備である鎧に武器が触れた瞬間に爆発が起こりそれぞれが壁まで飛ばされてしまう。

彼を攻略するには、まずあの【魔力装】の派生らしき何かを攻略するしかないようだ。


……これ、グリムがこっち来たらまずいんじゃない?

冷や汗をかきつつ、私は最悪の事態に備えてグリムらしき影が動かないかの索敵を切らさないように努めることにした。

動いてもすぐに仕留められるように。


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