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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
205/242

第一試合 破

大変遅れました。

書いては消して、書いては消してを繰返し数か月。

流石に待たせすぎるのもアレだな……と考えての投稿です。

後で修正するかもですが、どうぞお楽しみを。


■クリス視点


私は足を止めないことを意識しながら、システに追いつかれないよう【操風】を使い距離を取り続けている。

一瞬だけパニックになってしまったが、それはそれ。

PvPで一番必要な技術は、どんな事が起きても如何に冷静に対応するかだ。

……何も可笑しな事はされてない。単純に前と同じ。種は分かってる。


システが結界を展開する前に、私の弓を消したと思われる魔術。

アレは結界の派生前の固有魔術(オリジナル)なんじゃないだろうか。

以前戦った時と変わらないのであれば、彼の結界魔術の効果は『指定した物、事象を一時的に消し去る』というものだ。

単純強化としての派生がこの結界ならば、オリジナルはオリジナルでその効果範囲を狭めたもの……つまりは、


「複数指定はできない代わりに、対象に選択するだけでも消し去る事が出来る……?」


そう考えるのが妥当だろう。

但し、この考えは本当に派生元だった場合の話だ。事実はシステ本人にしか分からない。だからこれはこれとして、参考程度に頭の隅に置いておくことにする。

それに少しばかり不安定要素が加わった程度で、私の負けが確定するわけじゃない。

こちらとしては、相手の足が止まれば……その瞬間勝ちが確定するのだ。


そもそも。

システの固有魔術への対策は簡単だ。

システに負けない速度で自身も嘘の定義をしていけばいい。いくら爆破の発生自体を嘘とされても。武器の出現行為を嘘にされても。

それこそ、固有魔術の発動自体を嘘にされても……相手よりも早くそれを上書き出来ればこちらが勝つ。それだけなのだ。


システのステータス自体はそこまで高くない。

それに加え、弓を封じてくる事から【頭上の林檎は(チャーマ)撃ち抜かれる(ミット)】を防ぐ術がないのではないかと考え……たい。

クロエのような避け方が出来る可能性もないわけじゃないのだ。


……これだから固有魔術の多様性ってのはメンドクサイ。

そこが面白い点でもあるのだが。


「さて……色々と考えこんでいるようですが……」

「ッ!」


背筋に走る寒気。

足は動かし続けていたため、彼の鞭のようなレイピアが当たる範囲ではないはずだが……それでも己の勘を頼りにして前へ。頭を低く下げ、転がるようにしてシステが居る方向へと逆に近づいた。

すると、小さな風切り音のようなものが背後から聞こえ、目の前から舌打ちが聞こえてくる。


「なんで今のを避けるんですかね……数秒先の予知系能力の固有魔術でも手に入れました?」

「さぁ?どうだろう、ねっ!」


何をされたかは分からない。

だが、このままシステの前で転がっているだけではただの的。そのままの勢いでシステに対して足払いを仕掛けようとするが、軽く距離を取られてそれすら外してしまった。

次いで、システは私に攻撃を仕掛けようとする……が、それを素直に喰らう私ではない。


成型(ビルド)

「チッ……!」


目の前に出現させた【連鎖する立方爆弾(リンクキューブ)】を即座に爆破。

ダメージを最低限にするために何とか腕で防御しつつ、その爆風によって無理矢理に距離を取る。

しかし、HPは1ミリも減らず。

システにもダメージが入った様子が全く見られなかった。

……成程。何を嘘にされたかはこれで把握出来た。


問題はここからなのだろう。

爆破によるダメージが無効化されており。自分の弓は出現すらさせられない状態。

速度は互角で、距離を一定に保つ事は出来るが……何やら相手は座標攻撃のようなものを使える模様。

言ってしまえば不利でしかない。


しかし、勝ちの目は見えた。

わざわざ相手に合わせる必要はない。

自分の使えるもので、倒せばいいのだから。


「……なぜ、笑っているので?」

「ん?あぁ……笑ってた?ごめんね」

「いいんですけどね。ただ……まぁ、えぇ。絶対的不利になっている状態なのに、そんな笑みを浮かべられる事自体が不思議だったので」


システは足を止め、不可解そうにこちらを見てくる。

私も足を止め、後ろで手を組むようにして相手を見る。

そして、気付かれないよう。小さく小さく。本当に小さく……自分の固有魔術を発動させる。

止まっているのなら(・・・・・・・・・)、こちらの物だ。


「まぁ強いて言えば」

「強いて言えば……?」


弓矢を放つのに、わざわざ弓を使う必要はない。

魔術なのだから。魔力を使って放つのだから。


「流石に、相手を前にして止まるのは……愚策でしかないよね」

「……ッ」


そう言った瞬間に、後ろでに出現させた手のひらサイズの【頭上の林檎は撃ち抜かれる】で放った魔力の弓矢を、相手の目の前の座標……私を倒そうとこちらに近づいてきているシステの進行方向へと出現させた。

避けられない、言葉を発する事の出来ないタイミング。

しかし、これだけで安心はしていない。


こちらの固有魔術自体が消される可能性があるのだ。

だからこれだけでは致命傷とは言えない。

そう考えた私は、【頭上の林檎は撃ち抜かれる】に追従する形で乱風魔術の中で最もポピュラーで、それでいて殺しに向いている魔術【鎌鼬】を2、3個ほど放つ。


……決まった。


私の放った魔術は全てシステに着弾した。


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