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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
202/242

決闘当日

本日五本目……?です

決闘当日。

あれから残りの準備期間はひたすら杭を増やす事に費やしていた。

また、【変異】で作り出した杭も数十本ほど用意しておいた。これは単純に杭を脅威と感じさせないためのブラフのようなモノ。

グリムも最初っから自らを傷つけるとわかっているものよりも、一度靄に出来たものの方が騙されやすいだろう、という考えから作り出したものだ。


現在、私は宿の自分の部屋で最終確認をしていた。

といっても自分の装備を改めて見直す程度のものだ。それ以上のことはしないし、もし武器が壊れる事があっても、【武器創造】によって簡易的ではあるがその場で作り出す事も出来る。性能は大幅に下がるだろうが、それでも代えが利くというのはなんとでもなる、ということでもあるのだ。

それに、最悪私も【魔力装】を使って武器を作ればだけなのだから。


「……と、そろそろ時間だ。グリンゴッツ、準備はいい?」

『もちろん。出来る限りのサポートをしよう』


彼は薄く笑いながら答えてくれた。

リックとの最終確認は現地で行えばいい。正直今回の戦いでは作戦なんて立てるだけ無駄だ。なんせ相手が未知数、どれだけ臨機応変に動けるかにかかっている節もある。

それならば彼の動きにキング達を合わせさせた方がいい。

そのため、事前にグリンゴッツにはこちらを気にせずにリックの援護をするように言っておいてある。

あとは時間を待つだけだった。


宿の壁にかけられている時計が20時を指した瞬間、私達の視界は一変した。



-----------------------



そこは何処かの決闘場の中央のようだった。

レギンに存在するコロッセウムのようにも見えるが、ただ少しだけ造形が異なっているのが分かる。

また私とグリンゴッツの周りには赤ずきんやクリスなど見知った顔が複数存在する事から、恐らくはドミネ側の参戦プレイヤーが全員ここに飛ばされたのだろう。

こういう時、相方が見た目的に分かりやすくて助かると思いながら人狼の近くに移動すると、アナウンスが流れ始めた。


『あー、テステス。よろしいですかね?……えー、皆さんようこそお越しくださいました。今回この場を仕切らせていただくアルファと申します。今回は急造ということで控室のようなものを各個人用に作る時間がなかったのでこういった形で場所を作らせていただきました……一応両国のプレイヤー共にそれぞれ専用の空間を作ったので、その場から魔術攻撃しようとしても無意味ですのでご了承を。一定時間後から戦闘は開始されます。戦闘の様子は皆さんも見れるようになっているので、そこは安心してくださいね……っと、これで説明はおしまいかな?では暫しご歓談でもしててください』


男性のような、女性のようなよくわからない加工された声はそこまで告げると、ブチィという音と共にそれ以降の言葉を続けることはなかった。

恐らく今のアナウンスがGM側の人間、社員さんなのだろう。少しだけプレイヤーの事情でこういった場に付き合わせてしまって申し訳ない気もしないが、まぁそれを言い出したらキリがない。


「って、ことらしいし適当に話でもしてようじゃないか。なぁクロエちゃん」

「……はぁ」

「おいおい、流石に声かけて早々溜息をつかれたら私でも泣いちゃうよ?」


時間までどうやって暇を潰すか、と考え始めた瞬間に首に腕を回された。

少しみんながピリピリした雰囲気を出していても彼女はいつも通り……ある意味それが赤ずきんの長所なのかもしれない。

がっちりとホールドされているため、その腕から逃げ出すことが出来ないがそれ以前に聞きたい事もあった。


「赤ずきんさん今日はいつもの装備じゃないんですね」

「ん?あぁこれ?……そうだね、流石に相手が相手だからさ。本気の装備持ってきちゃった」


ちら、と見えた彼女の姿は、いつものような軽鎧を付けたようなものではなくファンタジーならばどこにでもいるような村娘のような恰好をしていた。

頭から被っている赤い頭巾は、自らの名前に因んだものなのかそれともきちんとした効果があるのかはわからないが。

しかし、彼女の目は本気に見える。恐らくこの格好が、この装備が彼女の最強装備なのだろう。


「といっても、私は結局後方支援役さ。無理に前出て戦ったら最悪フレンドリーファイアで死にかけるしね」

「失礼ですね。私の魔眼はきちんと相手を選びます。邪魔さえしなければ」

「あ、灰被りさん。お疲れ様です」

「はい、クロエさん。元気そうで何よりです。お互い頑張りましょう」


赤ずきんの腕を外し、私を救ってくれたのは赤ずきんのタッグ相手でもある灰被りだった。

彼女の姿もいつもと少しだけ違うが、大きく違う点はない。強いて挙げるとすればアクセサリーの類が多いくらいだろうか。

両手の指全てに1個ずつ指輪をつけている所を見ると、普段使っている道具だけでは今回の相手には足りない、という事なのだろう。


「重装備ですね」

「……あぁ、そうですね……相手が相手ですし、どちらも先輩なので全力でかからないと私じゃすぐに死んでしまうので」


それほどの相手なのだろう。

確かに彼女らの相手はガビーロールに、レン。ガビーロールのゴーレム作成技術はもちろんの事、彼の使う固有魔術は強力だ。

それに、レンという不確定要素の塊のような存在がいる。赤ずきんや灰被りのこの反応を見るに、かなりの強敵であるのは間違いないだろうが……どうにも一度しか会っていないためか想像しにくい相手だった。


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