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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
201/242

出来たもの、応用法は

本日四本目です

適当に考えながら作業をしていたら、【霧海】から伝わる精霊鉱の反応が魔術をかけ始める前……いわばプレーンの状態とは変わっている事に気付いた。

今回かけ続けたのは【身体強化】。普通は身体にかけるものを無理やりに鉱物にかけ続けたわけだが……どう変わっているかは見てみないとわからない。


「あんまり色は変わってないんだ……」


見た目はほぼそのまま。

ほんのりオレンジ色に近くなっているようだが、それも注意してみない事には分からない程度のものだ。

手に取って確かめてみるも、そこまで元の精霊鉱と変わっている所はなく……一応は魔力を感じるものの、失敗したのではないかと思うレベルで些細な変化しかなかったのだ。


明確な変化を期待していたわけじゃないが、それでも少しは期待していた節もあったのは事実だったために、少しだけ落胆せざるを得ない結果だった。

そうして肩を落としていると、グリンゴッツも気になったのか私の手の中の精霊鉱を覗き込んでくる。


『ふむ……ご主人、少しそれを貸してもらっても?』

「ん、いいけど……何するの?」

『いや、そこまで大層なことはしない。ただ魔力を流してみようかと思ってな』

「魔力を……あぁ、もしかして魔力流したら効果が発揮されてーって奴?」


私の言葉にグリンゴッツは首を縦に振る。

道具の中には魔力を流さないと動かないものもないわけじゃない。グリンゴッツは今回作ったコレがそれらと同じ類の物なんじゃないかと言っているのだ。

……確かに可能性がないわけじゃない、か。

私がやる、とグリンゴッツに断りつつ手に持った精霊鉱に魔力を流していく。

するとだ。


「おー、グリンゴッツ流石。ビンゴだ」

『ふむ。なら良かった』


効果は弱いが、【身体強化】が自身の身体にかかったことを確認できた。

元々かけ続けていたのが禁書での強化ではなかったためそこは仕方ないのだが、これだと実戦に使うには少し心もとないだろう。

……まぁ、これ使うの私じゃなくてキング達だし問題はないか。


杭の作成をグリンゴッツに押し付けつつ、私は精霊鉱を【変異】によって形を変えていく。

イメージ的には腕輪のようにして、戦闘行動を阻害しない程度の大きさにするつもりだ。

ある程度形になったら、最近使う機会が少なかった【異次元錬成】へと適当な魔石と一緒に放り込む。


種類はなんでもいいのだが、ここはとりあえずかつて赤ずきん達と一緒に攻略した時に手に入れて余っていた双頭狼の魔石を使うことにする。

こういったアイテム作成なんかをしない限り、ゴブリン以外の魔石は貯まっていくか売るだけになるので適当に使いどころを見つけたほうがいいのだ。


そうして同じ作業を計4回繰返していった。

グリンゴッツのように良くも悪くも特殊な傀儡でなければ道具に魔力を流す、という動作を戦闘行動中に自発的に行うことはできない。そのため、普通なら今作っているのは魔石を使った少し豪華なただのアクセサリーと変わりない物になってしまう。

そう、普通なら。


私は【霧海】という、周囲の状況を把握し尚且つ霧の範囲内ならば精度は低くなるものの魔術を使ったり魔力を使った干渉(・・・・・・・・)を行う事が出来る固有魔術を習得しているのだ。


どうせ戦闘中になったら、グリムの周囲には展開しないものの【霧海】を使って周囲の状況把握及びリックの支援を行うつもりだった。

今更キング達への魔力支援が増えた所であまり変わらないだろう。

それに、彼らはホーネットの相手をリックと共にしてもらうつもりだった。

リックとホーネットはどちらも今はMMOでいうタンクのような立ち位置、つまりは前衛だ。


私が彼らの戦闘速度に追いつく、というのならいつものような強化を適当に施して終わりだったが、今回はそうじゃない。

タッグ戦で、尚且つ私を目の敵にしているグリムが私のメインの相手になるだろう。

リックは弱いわけではない。だが、だからと言ってホーネットの持つ【魔力装】はリックとは相性の悪い固有魔術であるのは確かなのだ。

だからこそ、私にはできない代わりに直接の戦闘支援をキング達に指示する。

適宜指示を修正する必要はあるだろうが、それでもないよりはましだ。


「……とりあえず、出来ることはしたかな」

『ご主人、一応聞いてもいいだろうか』

「何かな?」

『これだけの量の杭を用意した、さらに私達を含め人数的な有利もある。……これで勝率はどれくらいだと考えているんだ?』


グリンゴッツの疑問は尤もなものだ。

控えめに言って、対個人用の対策にしては多すぎるくらいの前準備を行っている。

だからこその疑問なのだろう。これだけやっても勝てない可能性があるのか、と。


「んー……そうだね。私自身、彼女らがどういう方向に魔術を成長させてるか把握できてないってのが一番の不味い点なのだけど……現状五割くらいじゃない?」

『これだけやって?』

「うん、これだけやっても五分。グリムの方はまぁ近づかせなきゃいいとしても、ホーネットが未知数すぎてね。彼によっては五割からもっと下がるよ」


だからこそ抑えるためにキング達をリックの援護に出すんだけどね、と言葉を続けてはおく。

キング達は本当にちょっかいをかける程度の存在だ。それこそ殆どは彼の【魔力装】に防がれるだろう。

しかし、だからこそ意味がある……とは思っている。


「ここらへんはどうにも上手くいかないものさ。実際にやってみないとどうなるかわからない」

『だからと言って……いや、そうなのだろう。ご主人に従うまでだ』


そう言いながら、グリンゴッツは手元の杭へと意識を戻していった。

彼が言いたいこともわかる。だが、現状取れる方法は取っている。

私にはこれ以外に取れる選択肢もないのだ。ならばこれをやるしかないだろう。


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