World of Abyss
初投稿です
※追記
誤字報告機能というシステムがなろうさんには存在します。
読者側が誤字を作者側へと報告することが出来るシステムです。
もしよかったらそれを使っていただけると、作者側も誤字の修正がしやすいのでよろしくお願いします。
『ワールド・オブ・アビス』……通称WOA。
VR技術が発展し様々なVR製品ができていく中、発展していったゲーム産業の中で、注目されていたゲームである。
オンラインゲームであるWOAは、ほかにもあったVRMMOとは別の方向性で多くの目を引いたのだ。
曰く、そのゲームは始めの街以外すべてがPK可能フィールドである。
曰く、そのゲームは本当に現実のような世界が広がっている。
曰く、そのゲームは大まかな職業は魔術師しかないという。
曰く、そのゲームはプレイヤーごとに固有の魔術が与えられる。
私はそのゲームの噂に惹かれ、パッケージを買ってきた口だった。
ゲームのパッケージをあけ、放置されていたVRゲーム用のヘルメットに読み込ませる。
ヘルメットを被り、ゲームを起動させる。
最近はこういった風にパッケージで売られているゲームは少ないため、この一連の流れだけでも少しワクワクする。
瞬間、視界が一変する。
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ホワイトアウトした視界が回復すると、そこは
『ようこそワールド・オブ・アビス…通称WOAへ。キャラ作成チュートリアルを始めますか?』
何故かバニー姿の女性型NPCがチュートリアルの案内をしてくる。
「よろしくお願いします」
『では、まず最初にアバター作成から始めます。身体スキャンをすれば、現実の貴女様の姿をモチーフにしたアバターを作成することができますがどうしますか?』
「あー…そうですね、お願いします」
『ではスキャン開始します。少し時間がかかりますので、初期種族を決めていきましょう』
そう言うと彼女は一枚の紙をどこかから取り出す。
そこには、何種類かの種族名とその説明が書かれていた。
『この紙に書いてある種族が初期から選択できる種族になります。一応説明が書かれていますが、追加で聞きたい事があったら遠慮なくお聞きください』
紙には
・人族 基本となる種族。様々な属性、種類の魔術に適正があるが、その分それぞれの属性に特化している種族には素質で劣る
・森精族 風を司る種族。風、補助の魔術に特化している種族。
・土精族 土を司る種族。岩、鍛冶の魔術に特化している種族。
・火精族 火を司る種族。火、付与の魔術に特化している種族。
・水精族 水を司る種族。水、回復の魔術に特化している種族。
と記述されている。
「あー、人族でお願いします」
『了解しました。では初期魔術として、鑑定魔術、錬金魔術の二種類の魔術書をご用意いたしました。他の種類の魔術を習得する際は、その種類の魔術書を取得していただく必要がございます』
「了解です。ちなみに、ほかの種族も最初はこの二つのみなんですか?」
『いえ、それぞれに対応した魔術をご用意いたします。森精族なら乱風魔術を、土精族には岩石魔術を。ちなみにその際は、錬金魔術はお渡しいたしません』
大体ほかの種族プレイヤーの初期事情がわかった。
他に聞いているプレイヤーもいるだろうが、聞いてるかどうかである程度このゲームの初期の動き方を考えられる。
「ふむ、ありです。あとは…アレですか」
『そうですね、WOAの特徴の一つであるプレイヤー各個人に与えられる固有魔術書をお渡しいたします』
固有魔術。このゲーム最大の特徴だ。
WOAではプレイヤーごとに固有魔術が与えられる。
その種類、能力はまさに無限大。
似ているものは時折見つかるものの、何処かしら確実に違うものが発現する。
NPCは虚空から白い魔術書を出現させて、こちら側へ手渡してくる。
『その魔術書を開くことで、貴女様のみの固有魔術が発現します。固有魔術はそれぞれプレイヤーごとに個別のものが与えられます』
「本当になんでも?」
『えぇ、なんでもです。
童話のキャラクターを召喚したり、
ある魔女に纏わる道具を行使したり、
自分の好きなように魔弾を創造したり。
固有魔術は貴女の元で成長し、複雑な魔術へ変化していきます。そして固有魔術は貴女が殺されることにより、貴女を殺した相手の魔術師へと初期状態の固有魔術がコピーされPvPの勝利報酬として支払われます。貴女の持つ固有魔術は失われることはないので、それはご心配ないよう』
その説明を聞きながら、私はその白い魔術書を手に取る。
まだ表紙には何も描かれていない、真っ白な本。
これが私の固有魔術。
『スキャン完了しました。アバター生成します』
と、身体スキャンが終わったようだ。
目の前にリアルの私をある程度デフォルメしたアバターが出現する。
『これをもとに、ゲームでのアバターを作成してください。…少なくとも、目の色と髪の色のどちらかは変更してください。』
「りょーうかいでーす」
髪の色を白に近い灰色にし、長さを腰あたりまで伸ばす。目の色を赤色に変えて終わりにしておく。
「これで終わりで」
『ではアバターネームを決めましょう』
「んー…じゃあクロエで」
現実の名前を少し変えた形のアバターネームとする。
まぁほかに思いつかないしこれでいいだろう。
『了解しました。それでは初期装備をお渡しいたします。他に質問がない場合、このまま始まりの街に転移しますがどうしますか?』
「あ、PKした場合ってデメリットとかあるんです?」
『一応存在はします。PKを重ねるごとに、NPCからの不信感と呼ばれる不可視パラメータが溜まっていき、いずれNPCに相手にされなくなってしまいます。これが第一のデメリット。第二のデメリットとしては、その不信感が溜まった状態で同じ国でPK活動していると、最終的にはその国で指名手配がされ賞金首として張り出されることとなります。』
不信感。
恐らくは現実でいう世間体のようなものだろうか。
犯罪的な行為を行えば行うだけ、NPCからの不信感が高まり街での行動がしにくくなる。
初期や中盤に必要なものは基本的に街で買わないといけないだろうし、上級者になったとしても街での用事などのために訪れることがあるだろう。
なるほど、出来る限り不信感は貯めていかないよう気をつけねば。
「ふむふむ?」
『賞金首となった場合、多くのプレイヤーや果てはNPCからも命を狙われることとなり、その国での活動は困難になるでしょう』
その説明を聞いて、少し疑問に思うことがある。
「それって、賞金首設定された国以外に移動した場合ってほぼ影響はないんですか?」
『いえ、賞金首という時点でまず入国する際に様々な取り調べを。その後中に入ったとしても初めからその国では不信感がある程度溜まった状態…つまりNPCから相手にされないという状態から始まります』
「ふむ、でもそんなデメリットだとあまりPKってやらないほうがいいんじゃ?」
明確なメリットとしてあるのが、相手の固有魔術を取得できるだけではPKをするうま味があまりないように感じる。
『いえ、そうでもありません。……まずPKをすることでその相手の固有魔術を得ることができる。これは明確なメリットですね。そのほかにも、相手の持っていたアイテムのランダムドロップもあるため、適度に殺していれば、PKで得たアイテムだけでゲーム内通貨を手に入れることも可能です。経験値も入るので、PKでレベリングするプレイヤーも少なくはありません』
「でもそれだったら、いくらPK不可能なフィールドの始まりの街でも、外に出た途端かなりの数の初心者狩りとかあるんじゃないんです?」
『えぇ、確かにそれは存在します。……しかし、初心者狩りを適度に抑えるために、始まりの街周囲10㎞ほどに上位者……レベルが一定以上の者に対して大幅な弱体化がかかる結界が張られています。そのため、基本的にあの街でPKをするよりもほかの国で弱体化なく全力でPKを行ったほうが良い、というプレイヤーも多いですね』
へぇ、そんな結界もあるのか。
眼には見えないのだろうが、そういうものがあるのなら、いつか私自身も似たようなものを使えるようになるのかもしれない
『他に何か質問はございますか?』
「いえ、だいじょーぶでーす」
『では転移します、がんばってくださいませ』
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転移された先は、大きな噴水のある広場だった。
周囲には、私と似た魔術師っぽいローブを身に着けた人が割かし多くいることが分かる。
始まりの街であるこの街は、このゲームのPKシステム適用外であるフィールドだ。ここから出てレベリングする前に、ある程度自らの固有魔術について詳細を確かめておいたほうがいいだろうし、他の初期魔術に関しても調べられることは調べておいたほうがいいだろう。
「……さて、まずは宿からかな。休める場所に行ったほうがいいだろうし」
周りの目が届かない位置へいってから確かめたほうがいいだろうし、まずは宿だ。
宿に向かう道中、NPCのやっている露店にて薬草と毒消し草をそれぞれ3個ずつ、初期配布のお金を使い買っておいた。
【10/3 加筆修正しました】
【1/23 加筆修正しました】