Who is Enemy? 2
本日も更新です
感想やらよろしくお願いします~
彼女の名前を聞くのはこれで二度目だっただろうか。
一度目は私が本当に弱かった時、森の中で出会った彼女自身から聞いた名だ。
【霧海】を使っている私のことを正確に捕捉していた事を考えるに、実力はあるだろうし赤ずきんや灰被りの反応を見るに確実に手強い相手なのだろう。
……あの人、どんな魔術使うかとか全く分からないから忘れてたけど、今思えばかなりおかしい人だよね。
あの頃の私でも、ある程度の索敵をすることはできたし魔力の濃さなんかも薄らぼんやりとだが感じることはできた。
しかし彼女はそれを突破し、尚且つ話しかけてくるということを成し遂げていたのだ。
魔力の濃さを感じさせず、探知にすら引っかからない。
「一度会ったことありますね……レンさんって手強い人なんです?」
「うん、レンは強いというか……そうだね。私達の身内なんだけど、私達をこのゲームに誘ったのが彼女だね」
「あんまり、というよりかは絶対相手をしたくない人ですね……」
赤ずきんと共に、灰被りまでも少し冷や汗をかきながら答える。
それほどまでに不味い相手、と考えた方がいいのだろう。
それに、相手側にはもう1人。彼女らの身内であるガビーロールがいる。
共闘した事があるガビーロール。彼もまたかなり便利な魔術を行使する魔術師だ。
材料さえあればいくらでも生み出せるゴーレムに、私の腕ごとレイドボスを燃やし尽くした固有魔術である【編み細工の人型牢獄】。
戦闘能力が高く、支援能力も出来る彼は相手に回すには厄介すぎるだろう。
赤ずきんと灰被りの両名も出来ることの幅は広い。
広いのだが……しかし、ガビーロールやレンには劣るのだろう。
彼女たちの表情がそれを物語っている。
もしかしたら今回の決闘で一番辛い戦いなのはこの第三試合なのではないだろうか?
「ま、まぁ私達の事は置いておこう。考えても仕方ないしね」
「……頑張ってくださいね」
真面目に応援はしておく。
彼女らの実力を考えると下手なアドバイスのようなものは見当違いのものになりかねないし、そも相手も彼女らの身内だ。
私の知らない癖や弱み、普段から話している所で知らず知らずのうちに晒している弱みなんかもあるだろう。
そう言った意味では相手もこちらと同じ状況かもしれない。
「ありがとう。……さて、第四回戦はここに居ないというか、恐らく知らないプレイヤー同士の決闘だから飛ばして、最後。五回戦目はうちの大将であるハロウが出場するね」
『相手は?』
「うん、有名ってか一度クロエちゃんなら見てるんじゃない?【二天一流】のハルだね。割と対人戦には出てくるプレイヤーだけど、今回はファルシ側の大将枠として依頼でもされたんじゃないかな。彼の対人能力はかなりのもんだし」
「あー……えっと、確か刀の人でしたっけ?」
少し前、それこそ戦争が始まる前。
コロッセウムでハロウとの戦闘をしていたのを観戦していたのだが……当時、リセットボタンと観戦してた時はどういう戦術をとっていたかわけがわからなかったが、正直な話彼の固有魔術は相手にするには面倒という印象しかない。
確かにその動きを目で追えるかと言われると厳しいが、固有魔術の基本能力的にはこちらの【チャック】や【霧海】、【魔力装】などの主力魔術と相性が良いんじゃないだろうか?
……まぁ相性が良いからって倒せるかどうかは限らないんだけど。純粋な前衛型の魔術師とは限りなく相性悪いしね、私。
「そうそう、刀の人で合ってるよ。ファルシ側の決闘やってるプレイヤーの中ではトップクラスに緊急対応能力に優れてる。固有魔術の幅も広いし、割と相手しにくいタイプのプレイヤーだね。ただ……」
「ただ?」
「私とか灰被りちゃんなら相性で圧勝できるレベルで、相性の悪い相手には手も足も出ずに負けるタイプだね。本当なら彼に関しては私達が相手出来ればよかったんだけど……まぁ今回はこっちから相手の指名権なかったみたいだし、仕方ない」
「それってハロウさんみたいな後衛型のプレイヤーさんだと相性的にはどうなんです?クロエさんとかに聞いたら、前回戦った時はハロウさんが勝ってたらしいんですけど……」
クリスの言葉に私は頷く。
前回ハロウが彼と戦闘をした時は、ある意味で初見殺しのような戦法でハルを討ち取っていた。
しかし今回はそれについても事前に知られている状態だ。
かなり不利といえばそうだろう。だが前回の戦闘を見ていた側から言わせてもらうと……恐らく今回もハロウは勝つのだろう。確証はないが、根拠のない信頼感がある。
「んー。相性は悪いかな。私みたいに壁になるものやアタッカーを呼び出せる万能型や、灰被りちゃんみたいにオールレンジでの無差別攻撃が出来るタイプの殲滅型だと話は別なんだけど、完全にハロウみたいな純後衛型だと普通なら近づかれて終わりだね。まぁそれを何とか出来るだけの技量があるから、ハロウが決闘王者なんて言われてるんだけど」
そう言いながら、赤ずきんは手元の飲み物を飲む。
確かにそう言われてみればそうだろう。コロッセウムでの決闘では1対1、それも自分の情報が筒抜けになっている状態で挑戦を受けるのが今現在のハロウの立ち位置だ。
それこそ自分が良く使う魔術が悉く対策されている状態での戦闘なんかも何回も経験しているはずだ。
だからといって絶対はない。
それに、今回は計五試合の決闘。つまりは先に三回勝ってしまえばこちらの勝ちが確定するのだ。
先に私たちが勝ちを決めてしまえば、ハロウが出なくとも戦争は終わる。
大将を出さずに勝ちを掴みとれるならそれに越したことはないだろう。
その後、少し雑談をしながらそれぞれタッグや相手の特徴を知ってる者同士で少しばかりの対策会議を行いながら、その日は解散した。
「あぁ、すまない。解散する前にいつ開催かだけ言っておかないとね。開催は4日後、場所自体は当日に運営が出場者を転移させるから指定なし。時間は夜の20時から。観客付きらしいから気合入れないとね」