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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
191/242

担う頭とその役割は

久々に2日連続投稿。

もしよかったら、感想なんかもよろしくお願いします~!


そういえば。

ふと思い返すと、実際いつ決闘を行うのかはまだ知らされていないことに気づく。

伝えるのを忘れられた……というのは、赤ずきんならばともかくとしてハロウがいる時点で可能性は低いだろう。

まぁ普段表舞台に出てくるはずのないゲームマスターが出てくるのだ。少しは準備で時間がかかるのだろう。


それこそ、両国の出場選手が出そろってからくじ引きなりで出場順を決めたり。

ありえないことではないだろう。

事実、私たちに開催日程が知らされていないという時点で、割とその可能性が高いんじゃないかとも思っている自分がいる。


兎も角、考えていたよりも時間がある現状。

やるべきことはただ一つ。


「というわけで、実戦訓練を行います」

『……実戦訓練?』

「うん、そうだよ。グリンゴッツと、残りの4体はもう連携できるのかもしれないし、もしかしたら私とグリンゴッツが共闘してた時よりも動きが良いかもしれない。ただ、それじゃダメなんだよ。理由は分かる?」

『あぁ、そういうことか。……これからは私を含めた5体の傀儡をご主人が扱う事に慣れないと、今後の戦闘で困ると』


グリンゴッツの言葉に私は頷く。

そう、今までだったらグリンゴッツという他とは異なる自己思考能力を持つ駒に対して、言っては何だが……そう、適当に指示を出しておけばよかったのだ。

グリンゴッツはある程度までなら思考し、こちらの考えを読み取ってくれる。

だからこそ、今までは適当に素人の私が指示を出しても問題なかった。


しかし、これからは違う。

キング、クイーン、ジャック、エースの4体はグリンゴッツと同じような思考能力は一切ない。つまりは、私が彼らを使わなければならない。

私が指示をするのではなく、グリンゴッツが指示すればいいというのは確かに楽だし確実な方法だ。

だが、それではグリンゴッツという優秀な駒を後方で遊ばせる形となってしまう。


指揮官役に求められるモノ。それは頭の良さでも、状況把握能力でもないと私は考えている。

私が思う、一番指揮官役に求められるモノは『生存能力』。

……いくら良い指示を出したって、すぐに自分が死んだら意味ないしね。

その点で考えると、グリンゴッツは確かに生存能力は高いのだろうが……私には少し及ばないだろう。

結局彼の使う魔術は私の魔術を借りただけのモノ。習得している範囲であるなら十全に使える私に対し、私から借りないと行使できないグリンゴッツの生存能力はあまり高くないとも言えるだろう。


「だから近場のダンジョンで少し修行というか、死なない程度に実戦訓練しようってこと」


そう言いながら、私は近場にあるダンジョンを調べる。

いくつか候補はあるのだが、自分たちの目的を考えるとそこまで難度の高いものはやめておいたほうがいいだろう。

本当に確かめる程度、統率魔術を加えた状態でどれくらい私と新たな傀儡達が連携のようなものができるのか?というのが一番気になる所なのだ。

それさえ分かれば、あとはアドリブでなんとかなる。


ある程度行くダンジョンに目星をつけた後、適当に死なない程度に準備をして出発する。

グリンゴッツを含め、傀儡は全員【チャック】内に入れ街の外へと向かう。

今回向かうダンジョンは出現モンスターが獣系統で統一されているはずの『夕闇の草原』という所だ。

あまりモンスターが強くなく、しかしながら相手が獣系統のモンスターなのか群れを成してやってくる特徴があるらしい。


ボスを討伐するつもりはないために浅層での戦闘になる。

前に行ったダンジョンはどちらもボスを討伐する必要があったために、ある程度慎重になっていた節もあるが……今回はそこまで考えなくてもいいだろう。

いざとなれば、【チャック】による緊急離脱も行えるのだから。



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結論から言えば、統率魔術は使いやすい魔術だった。

タッチによる簡易的な指示、ボイス入力による詳細な指示。

この2つを組み合わせることによって、かなり自由度の高い戦闘指示が出来ていた。

それに、だ。

【チャック】を通して相手の背後をとるように指示をしても、そのまま行動してくれた所を見ると、指示自体は【チャック】を通した所で変わらず機能してくれるらしい。


それに、キング達新しい傀儡の特徴もある程度分かった。

キングはRPGでいう騎士系統……所謂タンクと呼ばれる味方の盾、ヘイトを引き付ける役割に秀でている。

クイーンは回復。今はまだ強化量が低いために回復量は少ないが、今後かなり重要なポジションになるだろう。

ジャックは後方支援。サポート役だ。育てていけば範囲強化など多くのサポート系魔術を扱えるようになるんじゃないだろうか。

そして、エース。タンクであるキングとは違い、前衛ではあるものの攻撃役……新しい傀儡の中ではその名のように、エースを担っている。


とまぁ、蓋を開けてみればかなりバランスの取れたPTのように見える。

しかしそこは傀儡。下手に動かそうものなら相手が弱いといっても壊滅しかける事が多々あった。

それに加え、私自身も今まで以上に戦闘状況を把握していかなければならない事が分かった。指示を出すのに全員の状況を理解し、その上で最適な答えを出していかなければならない。

……頭がもう一つ欲しいなぁ、これ。グリンゴッツを使わない方向で考えるなら、だけど。


使いやすい統率魔術、考えなければならない今後の戦闘。

今だ課題は多く積み重なったままだった。


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