矯正しよう
どうも、最近創作できる時間が取れるようになってきました。
よろしくお願いします。
「いや、矯正ってコレできるものなんですか?」
「うん、できるよ。ある意味簡単さ」
赤ずきんはニヤニヤと、クリスは苦笑いしながらもその濃密な魔力を垂れ流し始めた。
やはり、というか。予想通りの矯正法なのだろう。
全方位に放出していた【霧海】をこの広場内に留まらせ、【魔力装】によって左腕を動くようにする。
「なんだかわかってるようだけど、うん。魔術行使を前のように使えるようにするには、戦闘による矯正が一番楽なのさ。というわけで、クリスちゃんやっておしまい!」
「……はぁー。ごめんねクロエさん。そういうことだから」
「あ、大丈夫ですよ。ただ戦闘って言っても殺し切ったら色々不味いですよね?そこはどうするんですか?」
「あぁ、大丈夫。そのために私がここにいるからね」
そういうと、赤ずきんは【童話語り】に使うはずの羽ペンを出現させた。
実際に存在する童話の登場人物の役割などを自分含め周りの人間に付与することが出来るその派生魔術をこの場で使おうとしているのだろうか?
「私の【童話語り】っていうのは色々特殊でさ。こいつによって出現させた童話の登場人物たちには所謂二次設定を付与できたりするのさ」
「二次設定、というとよくある二次創作小説のように、原作にはない設定を加筆したり……みたいなものですか?」
「そうそう、そんな感じ。コレによって【童話語り】で呼び出した人物や動物を一騎当千級の活躍もさせられるんだけど……今回はそれを使って、君たち2人に『不殺』っていう設定を付与するつもり」
そういいながら、赤ずきんはニヤっと笑った。
『不殺』。名前が既に全てを語っているが……恐らくは設定された者が相手を殺すことができなくなるというものだろう。
しかし、彼女が言った通りその設定付与は呼び出した人物や動物に対して出来るものではないんだろうか?
「おっと、その顔は『お前それ言ってることとやろうとしてること矛盾してるけど、頭大丈夫か?』って顔だね」
「そこまでは言ってないですけど……何か方法があるんです?というか派生魔術?」
「そうそう、派生魔術。……おかげ様で私の派生魔術の系統が他人任せ主体なのが分かりやすいね」
そう言いながら、彼女は羽ペンを走らせ私たちに『不殺』を付与した。
腕に禍々しい紋様が腕に浮き出てくるが、恐らくはコレが『不殺』が付与されたというものなのだろう。
呪いのように禍々しいのは、やはりこの世界自体が魔術師同士の殺し合いを推奨しているからなのだろうか。
「じゃあ、始めましょうか」
「うん、そうだね……ってなんかウキウキしてない?クロエさん」
「えっ?いやいや。何言ってるんですか。……あ、映像見ましたけどきちんとあの爆弾っぽいキューブ使ってくださいよクリスさん」
「えっ、映像?」
「はいはーい、じゃあ始めるからきちんとちょっと離れてー!とりあえず戦闘範囲はこの広場内だけね。『不殺』はこの戦闘中切らさないようにするから、安心して殺しにかかってね」
お互いに手に何も持たず向き合う。
何も言われていないため【霧海】もその他攻撃魔術の準備も解いてはいないが……まぁ恐らくクリス側も何かしらの準備はしているのだろう。
周囲から、彼女の魔力を感じることができる。
「いいかい?それじゃあ……戦闘開始!」
赤ずきんの掛け声で、お互いにお互いに向かって走り出した。
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「あっぶな」
突然目の前に出現した立方体の魔力の塊に対し、【霧海】を集中させることによって霧散させる。
簡易的な魔術破りだ。
しかし、その一つを消したところで周囲から同じ立方体が迫ってくるのが見えた。
「起爆」
「ちょちょちょ」
足元と上空に【チャック】を出現させ、そのまま【異次元連結】によって移動する。
直後、爆発音と共に元居た場所が爆風に包まれた。あんなもの喰らったら、いくら『不殺』によって殺されないといっても大ダメージは免れないだろう。
救いがあるとすれば、【霧海】によって彼女の魔力の流れがわかるためどの辺りから出現するかがわかることだろう。
あくまでわかるだけであって、タイミングをずらされれば今のように緊急回避をするしかないのだが。
防戦一方ではまずいだろう、ということで【影槍】を4本ほど射出させ牽制として放つ。
ついでに【魔力装】の派生魔術である【遠隔装作】によって直剣を14本作り、周囲に浮かべておく。
そして、落ちながらも詠唱を開始する。
「【霧よ、霧よ】【現世と異界を繋ぐ境界よ】」
「ちょちょ、【白霧結界】は流石に何もできなくなるから!」
慌てたようにクリスが叫び、そのまま私に対し魔力の矢を放ってくる。
それを直剣を操り弾きながら詠唱を続行する。
……こういう時、本当に思考発動って便利だな。
「【我に害成す者を縛り、不可視の境界へ封印せよ】」
「くっそう!【頭上の林檎は撃ち抜かれる】!」
目測で座標を設定したのか、心臓を狙うはずのその矢は私の眼前へと出現した。
しかし、それすらも直剣で弾きつつ私は詠唱を終了した。
「【白霧結界】展開」
「あぁあー!もう!!」
目の前が、白く染まり。
私に敵対する者に対して不利を強いる結界がここに完成する。