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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
185/242

話を聞こう

遅れました

それと、今ちょっと殺伐魔術を圧縮&加筆修正できないかと色々試しているので、もしかしたら4分の1くらいまで話数が縮む可能性があります。

よろしくお願いします


クロエ視点


デスペナルティが明けた当日。

私はWOAにインすると、そのまま赤ずきんに指定されたカフェへと向かう。

何故かグリンゴッツが居なかったが……一応まだ繋がっているのが分かるため、失った(ロスト)したわけではなさそうだ。


デスペナルティが明けるまではずっと動きが訛らないようにと、他のVRゲームにて戦闘訓練のようなことをしていたがやはり少しばかりWOAは勝手が異なる。

動くのには支障はないが、魔力を扱うという部分で前よりも手間取ってしまうのだ。

可変性があるそれは、どうしても現実の身体に存在しない部位を動かすようにして扱わないといけない。

今までゲーム内で当たり前のようにやっていた思考にて魔術の形を好きなように変化させるという技術も、改めてやってみようと思うと難しい。


周りのプレイヤーがあまり魔術の形を変化させないのはこういう所が要因だったのだろうか。

手から久々に【霧海】を薄く発生させながら、いろいろな形に変形させてみる。

ただの球体から四角形、星形から渦を巻かせてみたり。

……うん、やっぱりデスぺナ喰らう前よりワンテンポ遅い感じがする。


私の戦い方からして、このワンテンポ遅いというのは致命的だ。

魔術をそのまま使い戦うというのも手だが、それだと私の所持魔術では相手を逃がさないようにする戦術が組みづらくなる。

今までも無理やりに魔術を変形させ、無理やりに拘束用として使っていたものが今まで通りの感覚で使えないというのは、かなり厳しいものがある。


「まぁ、でも。こういう状態になるってのを分かっていて私に頼んできたってことだろうし」


そう言いながら辿り着いたカフェは、戦争が始まる前にした作戦会議にて使ったあのカフェだった。



-----------------------



「おーいクロエちゃん、こっちこっちー!久しぶりだねぇ」

「あ、赤ずきんさん。ハロウさん……も……」


中に入り、店内を見渡して知り合いの姿を探していると赤ずきんが奥の方の席からこちらに顔を出して呼んでくれた。

その場には、ハロウとクリスもいるようで二人とも先に頼んでいたのであろうお茶菓子などを食べながら、こちらへと手を振ってくれる。

そして一番、というかなんというか。良くも悪くも目立つのが1人……いや、1匹?いるのが目に入り、少しだけ目を見開いてしまう。


『……』

「あ、あー……えーっと……」

「あは、やっぱりそんな反応になるよねぇ。ほら、なんとか言ったらどうだい?リックくん」

「は?!リックさんなんですかコレ!?」


リックと呼ばれた人狼は、気まずいのか顔をそっぽ向いてしまう。

あの場、私がデスペナルティになった時に共闘していた人狼がリックだったというのは驚きだが、同時に私の名前や魔術を知っていて咄嗟に連携のようなものがとれていた事に納得がいった。


ただ、何故彼はあの時の姿から戻っていないのだろうか。

恐らくは固有魔術……補助系もしくは特殊系のどちらかによるものだろう。あの後に戦ったファルシ側の残党との戦闘で、自分では解けなくなってしまう呪いでもかけられたのかもしれない。


「あ、あの……とりあえず、あの時はありがとうございましたリックさん」

『……すまねぇ。俺がもう少し気を付けてればデスぺナ喰らわずに済んだのに』

「いや、アレは私の不注意というか。リックさんのせいじゃないですよ」

「とりあえず、こうしてまた会えたんだしいいじゃないか。とりあえず今後の話をしようぜ?ねぇハロウ」


私達二人がお互いに頭を下げている状況に気まずく思ったのか、赤ずきんが話題を変える。

今までお茶菓子をずっと食べていたハロウも、話を振られては……という感じでインベントリ内から書類のようなものを取り出した。


「えーっと、うん。そうね。戦争の今後についての話し合いの場としてここを設けさせてもらったわ」

「あ、ちなみにリックくんとクリスちゃんがこの場に居るのは、クロエちゃんと同じ理由ね」

「ある意味事前説明みたいなものね。これから行われるものはプレイヤー間で決められた試合だから、一応きちんと確認しておかないとね」


話を聞くと、戦争イベントには大きく分けて二種類のルールがあるらしい。

殲滅戦とエリア制圧戦。この二つだ。

殲滅戦はその名の通り。一つの巨大なフィールドに両軍の参戦プレイヤーが飛ばされ、終了時刻までにどちらかの軍を一人残らず倒した方が勝ち。

エリア制圧戦は、私たちが今回経験したものだ。両軍が複数のエリアに飛ばされそれらの制圧数で競うというもの。


どちらも勝敗が決しない場合があり、その場合どちらかが負けるまで戦争イベントを繰り返すこともできるのだが、他の手段もプレイヤー側は選択することができる。

それが、プレイヤー作成のルールによって行われる代表戦だ。

戦争イベントに参加し、生き残ったプレイヤーの投票によって可決された場合にしか選べない選択肢。

だが、その分ルールが自由に決めることができる。


ゲームに大きく逸脱していないものであれば、基本的にルールが運営側から却下されることはなく本当に様々なルールがプレイヤーによって実行されていったそうだ。

例えば、代表プレイヤー30対30によって行われる市街戦。

例えば、カジノでのポーカー勝負。

そして、今回の私たちのような代表を何人か決めての代表戦。


「……まぁ、そこまで気負うこともないわ。特に私と赤ずきん以外は相手側からの指名だから、他の人が言っても仕方ないし」

「そういうことなのさ。だからガチガチに固まらなくてもいいんだぜ?クリスちゃん」

「い、いや、そんな……とりあえず試合の順番とかは当日決定するんですよね?」

「そうね、魔術で操作できちゃう関係上滅多に出てこないゲームマスター(引きこもり)が一人出てきて抽選してくれるそうよ」


ゲームマスター。

どのゲームにもいるであろう彼らは当然このWOAにも存在する。

普段は全くこちら側(プレイヤー)に絡んでこないが、こういった公正な判断が求められる場合にはよくよく出現するらしい。

中にはカジノによくいる人もいるとかいないとか。


どちらにしても、私も指名されている以上この話を受けるしかないのだろう。

他にも話したいことがあるために、私はそのまま紅茶を店員に頼み話を切り出した。


「とりあえず、話は分かりました。……ところで話の腰を折って申し訳ないんですけど、グリンゴッツはどこに?」


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