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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
172/242

さぁいこう

もし良かったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


咄嗟に障壁を張りながら大中小様々な大きさの火炎や氷塊を防ぐ。

大きいものでは人ひとりくらいは丸々飲み込んでしまうほどの大きさがある火炎球もあったが、威力は大したことないのか咄嗟に張った程度の障壁で防げてしまった。

……というか半分以上実体がない、のかしら。幻影の類?

一応、周囲を注意深く警戒はしておきながら、声のしていた方向へと素早く移動していく。


「……おっと、これは」


奇妙な感覚を感じながらも、【呪形】の反応があった位置へと辿り着く。

しかしそこには誰もいない。それどころか、戦闘の痕跡さえもなくなっていた。

先ほど聞こえていた戦闘音からして、確実に何処かしらに戦闘痕のようなものくらいは残っていてもいいと考えていたのだが……。

いや、あるいは。


「さっきの声と音自体、何かしらの罠だったってことかしら」


周囲を見渡しながら、肩の力を抜く。

……既に相手の術中と考えた方が自然。問題はどのタイミングで罠にハマったか。

慌てても仕方がない場合、変に焦ったりするよりかは冷静に物事を考えたほうがいいと言ったのは誰だったか。

急いても仕損じるだけ、とも。


相手の使っている魔術(もの)の詳細は置いておくとしても、どんな種類かは確かめなければならない。

どうやって種類を確かめるか。簡単だ。ログを見ればいい。

ある程度の状態異常に関しては自分のチャットログを漁れば抵抗(レジスト)したかどうかがずらっと表示される。


基本的にソロ、それでいてコロッセウムにて決闘を行っているという点から、私の装備は状態異常への対策が主となっている。

状態異常にも数々の種類があるが、私が一番抵抗しなければならないと考えているのは【幻覚】だ。

【幻覚】に罹ったプレイヤーの視界には、術をかけた側の者が指定した何かしらが見え、聞こえるようになる。

これのどこが危険なのか?そこまで危険度自体は低いのではないか?と考えそもそも対策すらしていないプレイヤーもいるが、それこそ自殺行為だ。


罹った【幻覚】のレベルにもよるが、罹った側が見る、聞くものを自由に設定できるというのはかなりの強みだ。

例えば、罹った側の背後から近づく足音を聞こえるようにする。通常の戦闘ならここで振り返って足音の主を殺すだけで対処はできるが……【幻覚】の場合、それではいけない。

目の前に今まで戦っていた相手がいるのが見えているというのに、後ろを振り向いて確認し、魔術を放つ者がいるだろうか?いや、いないだろう。

私ならば感知系、索敵系の魔術を使い背後を確認してから目の前の相手を殺す。


しかし、ここである疑問が頭の片隅に発生するのだ。

『本当に、背後に誰もいないのか?』

背後から近寄ってくる足音は【幻覚】の効果だとする。しかし、目の前に見えている相手の姿も【幻覚】によって見せられている虚像ではないのか?という、普段ならそこまで考えないだろうことも、自らのオンリーワンが掛かった殺し合いともなれば考えてしまう者が大勢いるのだ。

だからこそ、一瞬判断に迷ってしまう。殺し合いの最中に対処に迷ってしまい、致命的な隙ができてしまう。


それが怖いからこそ、私は【幻覚】に対する耐性をできるだけ高くした装備をいつも身に着けているわけだが……。

チャットログにはその努力もむなしく、『【幻覚】への抵抗に失敗しました』の文字を発見することができた。

他にもソロでは罹ったら最後ともいわれている【魅了】や【石化】への抵抗成功のログも現在進行形で出ているため、何処かしらから今も攻撃を受けていると考えるべきだろう。


「とりあえず歩いてみましょうか」


一応言ってしまえば、【幻覚】という状態異常は先ほども述べた通り、強制的に何かを見せたり聞かせたりするだけのモノなのだ。

種さえ分かっており、尚且つ度胸さえあればそもそも【幻覚】を恐れる必要はないというのはあの傭兵として今もどこか別の戦場にて戦っているであろう赤ずきんの言葉だ。

確かにそう言われてしまえば、そうとしか答えるしかないのだ。

居ないものはいない。音が聞こえたからといって何を気にする必要がある。

そういうものだ。そう考えている人が多いからこそ、この状態異常は基本的に誰も対策をしない。


……とりあえず、本命は海。それ以外は……まぁそっちから来てたら諦めて一回死にましょう。幸い、ストックは満タンなのだしね。

HPバーの下に表示されている壺のマークの数を確認しつつ、私は海へ向かって【蠱毒】を発動させる。

対象なしの、ただただ狙った方向へと飛んでいくだけの呪いの塊だ。しかしコスパはいいため、普通の攻撃魔術よりもこちらを選んだ。


しかし、特に反応はない。静かな波の音だけが昼の海岸に響くのみだ。

相手方の本陣があるといわれた方向に歩きつつ、現状をどうするかを考える。

普通に考えれば、この【幻覚】をかけてきた相手は足止め要因だろう。私自身が恐らくはガビーロールによって指名手配犯並みの警戒がされているはず。

ならば、できる限りの足止めをしつつどうにか殺せるメンツが応援にくるのを待つほうがいいだろう。


だが、こちらにも勝ちたい事情というものがある。

邪魔をするならば、しっかりと潰させてもらうことにしよう。

戦闘開始だ。


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