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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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呪縛の鎖

もし良かったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


約一週間ぶりの投稿です。

ここからは恐らく、きっと、多分……なんとか仕事が忙しくは……ないと思い……たいですね…………。


固有魔術【影法師】。

効果は簡単で、ただ視界内の影のある場所に瞬時に移動するだけの固有だ。

しかし、使う者によってその単純な効果は時に凶悪なものへと変化する。


例えば、【視界強化】などといったような視野拡張系や強化系の魔術を使えば、『視界内』という制限の範囲が多少なりとも広くなる。

他にも、『影』さえあればどこにでも移動できるのだから……広範囲に屋根のようなものを【錬成】するだけでも移動先の自由度が段違いにもなるだろう。


事実、私がこの固有魔術を手に入れるきっかけとなったプレイヤーは、【影法師】の効果を十全に使うために深影魔術を使ったり、今挙げたように影を自ら生み出したりなどして奇襲主体の襲撃をしてきていた。

しかしまぁ、結局は影。

光さえあれば、影は弱く小さく限られた場所にしか存在できなくなるものだ。


ただ、この現状ならば影を用意する必要はない。ただ学生服の背後に回ることが出来ればいいのだから。


「ッ!!」

「おっと、自動ターゲティングに関しては予想済みさ」


予想通り背後へと瞬時に移動した私に合わせ振り返り、学生服は横へ薙ぐように呪われた聖剣を振るう。

が、すぐに鉄と鉄がぶつかるような音が響きその凶刃が私に届くことはなかった。

私の動きに合わせて動いていた灰被りが剣を防いでくれた。伊達に何度も同じ戦場で戦ってはいない。

そして私はそのままに、手に持つ隷属の首輪を学生服の首へと装着させる。


「これ、は……?!」

「あはっ!灰被りちゃんそのまま拘束頼んだよ!!」

「了解!」


灰被りはそのまま学生服を羽交い締めにする。

呪われた聖剣シリーズと、彼自身の強化系の魔術によって大幅に強化されているはずの彼だが、灰被りも同様に固有魔術によって身体強化をしているのかがっちりと彼の体を抑え込んでおり、微塵も動けないように見える。


「それでは、詠唱を。【――汝、我が宿敵よ。その身を縛られし反逆者よ】」


詠唱を開始する。

手を彼の首に着けた隷属の首輪に触れさせながら、静かに……されど確かに魔力を込めながら詠唱を続けていく。

視界の隅では、いつの間にか光の矢を出現させているクリスがこちらを心配そうに見つめている。彼女に任せているのはカウボーイの対処だ。

……うん、カウボーイも動き始めてるって感じかな?


「【その呪いは汝が魔力を縛るだろう】」

「クソッ!離せッ!!」


これで2節。残り1節詠唱すれば、学生服を【隷属】させることができる。

学生服は拘束から抜け出そうとするために暴れるが、がっちりと抑え込む灰被りの前ではそれすら無意味だ。

ここで背後から男の悲鳴が上がる。

カウボーイの声だ。


見れば、クリスが弓を射ったような恰好をしており……恐らくはカウボーイが動いた瞬間に彼を撃ったのだろう。

彼女の【頭上の林檎は撃ち抜かれる】はその性質上、威力を下げるということは出来ないらしい。

しかし、ある程度魔力の矢を撃ち出す座標の高さを弄ってやれば、足を撃ち抜いたりなどの応用も可能だと考えられる。

今回は悲鳴が上がったことから、恐らく足を狙ったのだろう。


「【そして、その躰は汝が魔力によって縛られるだろう】」


その言葉と共に、彼の体から呪われた聖剣シリーズから出てきているドス黒い魔力ではなく、水色の魔力が噴き出てくる。

そしてその魔力は次第に鎖の形となって、彼の体を縛り上げていく。

これで【隷属】完了だ。


灰被りはそれを見て拘束を解きつつも、周りを警戒しているのかキョロキョロと見渡している。


「よし、【鑑定】っと……。うん、通るね。ばっちりだ。ほら、“自害して”」


私の言葉によって、そのまま学生服は手に持った聖剣を自らの首へと勢いよく突き入れ、その命を終わらせる。

【自害】という形で死んだために、彼からは固有魔術のドロップはないがそれはいい。

もしかしたらここで全滅していた可能性もあるのだ。

安全に退場させられただけでも上々だ。


一応【隷属】状態のプレイヤーに対しては、【隷属】させた側の所有物という設定になるのか現在の状態などに対して【鑑定】を行うことが可能となる。

それが意味することは?

まず、基本的に【隷属】されていないプレイヤーに対しての【鑑定】難易度は跳ね上がる。

そもそも相手が許可しているならともかくとして、敵として相対している場合など通るわけがないだろう。


「さて、と。クリスちゃんそっち終わったー?」

「あっ、はい!今トドメさしましたー!」


クリスのほうも、こちらに合わせてカウボーイを殺していたため、スムーズにこの場での戦闘は私たちの勝利で終わる。

暫くすれば、カウボーイの固有魔術によって捕らわれていたドミネ側のプレイヤーが解放されるだろう。

もしくは既にこの草原のどこかに解放されているのかもしれない。


「さて、と。とりあえず相手の本陣潰そうか」

「そうしますか。では、先に行ってある程度数は減らしておきます」

「うん、お願い」


そういうと、灰被りはそのまま姿を消す。

高速移動ではなく、【影法師】によって移動したためだ。

さりげなく【視覚強化】を使いつつ、かなり離れた位置の草に生じた影に対して使ったようだが、流石元々切り札として使っていたプレイヤーは違うな、と感心する。

ここから反撃開始だ。


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