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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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それを忘れることなかれ

もし良かったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


昨日は更新がなく、申し訳ないです。

一応活動報告には書いてましたが、私用で少しPCを触る時間もなく……。

というわけで、昨日更新予定だった話を今日投稿します。


「予想通りの動き、ありがとう」


学生服はそう言いながら、一歩だけ後ろへ下がった。

こちらは全力で突っ込んで行っているため、その程度の距離など誤差でしかない。

そのままの勢いで学生服の懐に入った瞬間、それは起こった。


ボコッという音と共に、足元が崩れていく。

……【範囲変異】による落とし穴か!

ご主人も使う、相手に合わせた即席の足止め用の罠。

このまま穴に落ちてしまえば、一方的に嬲られ殺されるだけだろう。そうでないにしても、穴に落ちるというのは非常にまずい。


咄嗟に【チャック】を使用し、落下しそうになっている自分の足元へと口の開いた状態で設置し連結させる。

どこのと?自分の背で隠していたあの【チャック】とだ。

元は奇襲用にと設置しておいたモノだが、思わぬところで役に立った。


一瞬の無重力状態の後、先ほどの位置へと放り出され私は草原を転がりながらも、すぐに体勢を整える。

この間にも今がチャンスと言わんばかりにカウボーイは撃ってきているし、学生服も学生服でイラつきを顔に出しながら此方へと突っ込んで来ている。


カウボーイの撃ち出す弾は確かに強力で、喰らってしまえば一撃で死が見えるだろう。

しかしだ。その弾道は私の横や前の地面へと吸い込まれているものがほとんどで、たまにきちんと飛んでくる弾も宝箱などで無力化しているために存在感が薄いものになっている。

……恐らくは、あの弾を撃ち出すには指を対象へ向けていないといけないのだろう。

しかし、ノーコンというべきか私が動いているためか。

普通だったら便利に使えるはずのその設定は、完全に仇となっている。


学生服はといえば、先ほどとは見違えるほどに上がった速度でこちらの近くまで来て剣を振る。

それを必要最低限の動きで避けつつ、剣の大振りで出来た隙に脇腹へと護身石の短剣を振るう。


「チッ」


刃渡りを見た目以上に長くしているためか、学生服は避け損なって少しだけ傷を負う。

そして頭が冷えたのか、そのまま突っ込んでは来ず後ろへと下がっていく。

ここで追えば追撃出来るかもしれないが、またさっきと同じような罠があるかも分からない。

それに私の目的は時間稼ぎだ。何を積極的に殺しに動いているのか。


「クソが。深追いしないってよりはそもそも殺すのが目的じゃないみたいな動きしやがる」

「これなら戻った方がいいんじゃぁねぇかぁ?」

「……いや、それをしたら跳ぼうとした瞬間に魔術を叩き込んでくるだろう。この後も戦争は続くんだ、こんな不安の種はここで潰しておきたい」


目の前でそんな会話が繰り広げられているが、気にせずに目を逸らさないようにする。

距離は詰めないが、すぐにでも魔術を叩き込めるよう【影槍】などの準備をしつつだ。

しかし、そんな準備はもう必要ないようだが。


「……ん?なんだ?この白いの」

「冷たくない、ってぇことは雪じゃないなぁ」


……待ったかいがあった。

空からは雪に似た、しかし冷たさは一切ない真っ白な何かが降ってきていた。

また、何かがひび割れるような音が重なって聞こえてくる。

その音で気付いたのか、カウボーイが目に見えて焦り出した。


「アハ、よくもやってくれたねぇ?」

「けほっけほっ……うー、ここは……?」

「……おっと。歩いていたらここは」


聞いたことのある声、感じたことのある魔力。

自分は賭けに勝ったのだろう。

頭にポン、と手を乗せられる。

彼女ではないけれど、考えて動いたかいがあった。


「おい、どうするぅ?」

「……逃げられるわけない連中が出て来たってことだろ。殺すしかない」

「くっ、くそぉ……こんな上位と殺し合わなくちゃいけないとか聞いてねぇよぉ……」


学生服達は話しながらも魔力を高め、先程までに使っていなかった消費の激しい魔術の準備をしているようだ。

しかし、それを目の前で許す彼女らではない。

彼らの回りに突如立方体の魔力の塊が5~6個出現し、


起爆(エクス)


それら全てが爆発した。

流石にこれには驚いたのか、私の頭に手を乗せている人物も驚いているようで少しだけ乗せた手が震えている。


「え、えーっと……?」

『……容赦のない』

「あぁ、そっちですか。方向わからなかったので助かります」


しかし、彼らも2人でこちらを異次元に飛ばしにくる任務を任せられるほどの魔術師。

爆破によって生じた爆煙の中から、風が生じる。

どうやらそれは学生服の持つ剣から発生しているようで、剣を中心にして煙が晴れていった。


「あれは……呪われた聖剣シリーズですか?」

「多分そうだろうね。しかもレア中のレアだ。いいなぁ、ほしい」

「呪われた聖剣シリーズってあれですよね、確か一部のダンジョンのボスが超低確率で落とすっていう」

「そうそうそれそれ」


と、ゲーマーらしく武器の話をしつつも彼女たちは魔力を高めるのを止めず、それぞれがそれぞれの必殺の術を用意していた。

ちょくちょく牽制として汎用魔術を飛ばしつつも、しっかりと準備をしている。


「さて、グリンゴッツくん。ここまで私たちの代わりにありがとう。PTリーダーとしてお礼を言おう。そして、勝手なのはわかっているが……ここから先は任せておくれ」

『……あぁ。任せた』


彼女ら3人は、私の前に出る。

そして巨大な本を持った彼女は……私たちのPTリーダーの赤ずきんは、こう宣言した。


「ここからは私達の物語を語らせてもらうよ、異論は認めないさ」


次回更新は水曜です。

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