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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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なぜ、あの時、そして

もしよかったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします


私の短剣は、確かに彼女の首を貫いた。

赤く、それでいて若干透明な血が彼女の首から私の短剣を伝い流れていく。

遅かれ早かれ彼女はデスペナルティになるだろう。


しかし、その代わりと言っては何なのだが。

彼女が持つ氷柱が深々と私の腹を貫いていた。

何かしらの補助でも使っているのか、私の着ている軽鎧すらも簡単に貫いたそれは、徐々に溶けて水へと変わっていく。

……万が一誤爆しないようにってことで魔術スロット機能オフにしてたのが仇になったかな。


こちらの爆発反応装甲が反応して液体化で逃げられる可能性を考慮し、元々設定から発動しないようにしていたのが仇となったのか。

確実に致命傷だ。


「ぐっ……」


口の端から血が流れる。

現実ではないため、口の中に血の味が広がることも腹の傷が痛むこともない。

こちらの短剣とは違い、あちらの氷柱は既に溶け水へと変わってしまっている。


腹……肋骨の下あたりに空いた傷からは、大量の血が流れ出ていた。

これでは【再生】効果をつけていても回復が間に合うことはないだろう。


「ふ、ふふ。時間稼ぎはおしまいとの連絡がきたので。こうした形で終わらせていただきました」

『オイ!クロエサン!!』


彼女はふらふらと立ちながら、笑いながらこちらを見てそういった。

人狼のほうはといえば、私がそのまま倒れそうになったのを駆け寄って支えてくれた形だ。

うん、やっぱり味方なんだろうな。良い人だ。


「時間、稼ぎ……?」

「えぇ、えぇ。まぁ内容は話しませんが。ではでは。さようなら【剣】」


ズパン、と大きな音がしたかと思えば、彼女は自身の首を自らの魔術で切り飛ばしていた。

液体化は自身の魔術には反応しないようで、そのまま彼女は光の粒子へと変わっていく。

いや、そんなことを考えている場合ではないのだろう。


『スマナイ……オレハ回復魔術ツカエナインダ……』

「あぁ、いいんですよ。いいんです。私は物語の主人公のように奇跡の復活とか、運がよく助かったとか、そんなの似合わないですから」


人狼は聞いているのか聞いていないのか、私の傷を押さえこれ以上血が出ないようにしてくれている。

しかし、既に血が光の粒子へと変わっていっているため、それには何の意味もないのだろう。


「あは、ただデスペナになるだけなのに随分と悲しそうですね」

『ソリャアソウダロウ!仲間ガ消エテイクンダゾ』

「あぁ……それは確かに悲しいっちゃ悲しいですね……」


視界がどんどん黒く染まっていく。

強制的に眠りに落とされるように体の動きも制限されていく中、1つメッセージが表示される。


『貴女は死亡しました。次回復帰は――』


文章を最後まで読まず、私はログアウトした。

そして付けていたヘルメットを外しベッドの上に身を放り出した。


「はぁああああああ……」


深い溜息が出る。

……完全に萎えた。自分の行動がバカらしい。


明らかに行動ミスが多かった。

【白霧結界】を使っていればまだ状況が変わっていた可能性があるし、そもそも私にはほかにも固有魔術があっただろうに。

液体化するからなんなのだ。【過ぎた薬は猛毒に】で液体同士混ぜてしまえば【毒】くらいには掛けられたりしただろう。


「馬鹿なのか私は……」


終わったことを思っても仕方がない。

仕方がないが、しょうがない。

これがPKされるということなのだろう。


人によってこの殺されてリアルに戻ってくる時に思うことは違うのだろうが、私は後悔の念が強かった。

そもそも戦争イベントが始まってすぐに戦死したのと変わらないのだ。


……とりあえず掲示板覗いてみようかな。

PCの前に座り、WOAの現行掲示板を追う。

やはり掲示板の内容の多くは今回のドミネとファルシ間における戦争についての話題だった。


「皆やっぱり気になってはいるんだ……」


他の国のプレイヤーはもちろん、赤ずきんたちを派遣してくれたヴェールズのプレイヤーたち、恐らくはドミネ或いはファルシに所属はしつつもイベントには参加していないプレイヤーたちの会話を見ていると、色々と現在の戦争の状況が見えてくる。


まず、私達のように草原にとばされた組の他に、海岸や火山に飛ばされた者らがいたらしい。

特に海岸のほうにはハロウも含まれていたらしく、ファルシ軍はほぼ壊滅状態のようだ。

一騎当千も過ぎればチートと言われかねないが、彼女の強さはコロッセウムにて多くの国のプレイヤーが知っているため、多くはファルシ側に同情するようなレスが多くついていた。


火山のほうはといえば。


「……ドミネ軍、壊滅?」


火山に飛ばされ、私よりも先に死んだプレイヤーがいるのだろう。

死ぬまでの状況が事細かに記されていた。

なんでも、巨大なゴーレムや火の巨人が突如襲い掛かってきたために対策する前に殺されていったそうだ。

現状もまだ戦っているプレイヤーもいるみたいだが、それも時間の問題だろう。


「ゴーレム……っていうと、あの人しかいないでしょ」


ガビーロール。彼が火山フィールドに居たのだろう。

そして草原フィールドの現状も回ってくる。


「これ、は……」


みなさんは、MMOで死んだときに後悔や自分の行動を思い返ったりはしますか?

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― 新着の感想 ―
[一言] ミスったなら省みるけど不可抗力ならひとしきり毒づいてさっさと次に行くかな
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