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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
Tutorial 一歩目を踏み出そう。

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胡散臭いお姉さん、かぼちゃの車窓から

もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします

街道 - かぼちゃの馬車内 - AM


「んんー、なんのことやら」

「いやいや良いんですよ別に。どうせ固有魔術か何かでそういう相手のインベントリ内を確認できるような魔術があっても驚きませんし。でも、それならなんであんな風に周りに聞こえないように言ってきたのかとか、そういうのが気になりまして」


灰被りと話していたからか、少し饒舌になっている気がする。

私の言葉を聞いた赤ずきんは、ニヤニヤした状態のままいつもとは違う口調で話し始めた。


「いやいや、アレはあのままだと私達以外のプレイヤーにも禁書について聞きそうだったし、それは少し危ないかなって思ったからね。まぁ確かに私は相手のインベントリを覗くことのできる固有魔術を持っているが、こんなもの珍しくもなんともないさ。10人中4人くらいは持ってるんじゃあないかな、PKプレイヤーなら」

「ふむ、で私をサバトに誘った理由もそれですか?それとも禁書持ちのプレイヤーだからってことで囲い込もうと?」

「んんー、警戒されてるねぇ。私はいろんな人にサバトにはいらないか?って言っているだけだし、あの時もそうだっただけで他意はないよ。本当さ」


ニヤニヤしながら他意はない、と言われても信じられるわけがないのはわかっているのだろうか。

なんというか何聞いても胡散臭い答えが返ってきそうな気がする。一旦落ち着いた方がいいだろう。


「はぁ…まぁいいです。で、本題っていうか私の持っている禁書について教えてくれるってどういう意味です?サバトメンバーで禁書に詳しい人がいるんです?」

「あぁいるよ、私のことさ。なんでも聞いてくれ」

「……」

「んー?どうしたんだいクロエちゃん。お姉さんになんでも聞いてくれて構わないよー??」


胡散臭い答えが返ってきそう、と考えた後にまさかの答えを返してくる。

少しサバトに入ったのを後悔してきたかもしれない。


「はぁー……いや、はい。教えてくれるんなら何でもいいです。とりあえずこれを見てください」


私は禁書を【チャック】から取り出し、そのまま赤ずきんへ手渡す。

一応アイテムロック機能があるため、私が他プレイヤーに殺されない限りは、インベントリに入れて窃盗される…ということはない。


「おっと、眼で見てもインベントリ内に無いと思ったら、そんなところに…。しかしなんだいこれ。今まで見た中でもかなり禍々しいんだが」

「私が手に入れた禁書です。禁書。内容はスタッフの中の中二病日記でしたけど」

「これが禁書、ねぇ…。タイトルは?」

「【禁書:第一章】としか」

「ふーむ……ちょっと調べさせてもらうよ」


そういうと赤ずきんはインベントリ内から手のひらほどの結晶を取り出す。


「それは?」

「これは任意でクラスチェンジできるアイテム。一度なったことがあるものしかチェンジできないけどね。【クラスチェンジ-古呪物師】」


パァ、と赤ずきんの身体が光る。おそらくこれでクラスチェンジがされたのだろう。

しかし、【古呪物師】というクラスはどういう特徴があるのだろうか。


「そのクラスは?」

「あぁ、これは【古物商】と【呪術師】の複合上位クラス。これがあると呪われてるアイテムの鑑定とかできるんだよね……と、この禁書すごいね。デバフ耐性積んでるのにそれ抜いてきたよ」

「あぁ、なんかそれ読んだときに禁書ってカテゴリの習熟度が上がって、耐性手に入れたんで、多分それ以外の耐性じゃあ抜かれちゃうんじゃないです?」

「なにそれまじでぇ…今までの禁書じゃあこんなのなかったぜぇー??」


若干赤ずきんはダルそうな顔をしながらも、禁書を調べようとする。


「あーもう面倒だ、彼を呼ぼう。展開(オープン)童話語り(ファンタジーテラー)-千夜一夜物語よりジーニー】」


彼女が指をパチン、と鳴らすと客車の天井が煙へと変わり空が見えるようになる。

そしてその煙は一つへ固まっていき男のような外見の何かへ姿を変えた。


『んん、マスター久々じゃあないか。この私を呼ぼうとは!』

「あぁジーニー久々ですまないが、ちょっとこの本について調べてくれ。私じゃあデバフ食らってまともに読めないんだ」

『おや、あの甘ったるい口調はやめたのかい?いいことだ!……おいおい冗談さグーで殴るのはやめてくれ、グーは。調べ物はきちんとさせてもらおうじゃあないか』


突っ込んだら負けなのかもしれない。


「えーっと…」

「あぁ、ごめんよクロエちゃん。彼はジーニー。千夜一夜物語って知ってるかい?日本だとアラジンと魔法のランプ、とかそんな風に言った方が分かりやすいかもしれないけど、それに出てくるのが彼さ」

「いや、それは知っていますけど…固有魔術ですか?」


先ほどから乗っているこの馬車もそうだし、初めて会った時のアレもそうだろう。

効果としては、


「童話…というかファンタジーな物語に登場する人物たちを想起させるって感じですかね?」

「んーまあある程度当たってるかな。実際は対象に対して童話のキャラの特性を付与する…って感じなんだけど、んんー説明が難しいなぁ」


赤ずきんは唸りながら、話し始める。


「うん。簡単に言えばこの固有魔術はアクターにキャラクターを演じさせるようなものさ」

「アクターにキャラクターを…?」

「あぁ。例えばそうだね。このかぼちゃの馬車なんかは私が吐いた『煙』に『シンデレラのかぼちゃの馬車』という属性を強引に付与させて『演じさせてる』わけさ」


ふむ、よくわからない。

首を傾げている私を見て苦笑いしつつ、赤ずきんは続ける。


「あー、まぁそうだね。付与魔術のすげーやつって考えてくれればそれでいいよ」

「了解です」


まぁ多分そんな感じなのだろう。

付与する物語のキャラクターによって様々なバフがかかるんだろう。

ジーニーに関してはよくわかんないけど。


「おっと、まだジーニーが調べているがそろそろ今日休憩する街に着くよ」

「なんて街でしたっけ」


そういえば途中で休憩するとはきいていたが、どんな街とは聞いていなかった。

あまり強いプレイヤーもいないだろうし、街の周辺もあまり強いモンスターが徘徊しているわけでもないために、始まりの街では近くに街がある、という話題すら上がらなかったのだ。


「冒険者の街サラ、始まりの街に一番近く初心者用のダンジョンがある街さ」


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