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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
158/242

出て行こう

もし良かったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


目の前に出現した派生魔術取得のログ。

それにはこう書かれていた。


『固有魔術-チャックの習熟度が5000になりました。レベルが4へと上がり、チャックの派生魔術として【次元渡】を取得しました』


……意味がわからないッ!

そのログをみて私が最初に思った感想は、その一言に尽きる。

何故このタイミングで、それでいて他の固有魔術よりも先に【チャック】が取得するのか。


派生魔術の名前からして攻撃系の魔術では無いだろう。

防御系でもない。明らかに補助系のものだ。

この状況を打開するには些か……いや、明らかに役者不足であろうと予想できる。


「ねぇねぇお姉さん如何したのぉ?もしかしてポーションが切れちゃった?ふふっふふふふ」

「んなわけッ!クッソ、めんどくさいなぁ!」


足を止めず、【霧海】を最小限に展開して前を見ずともグリムから逃げ回れるように感知させておく。

1度効果を確認した方が良いだろう。

先程は役者不足とは言ったものの、固有魔術は『固有』であるからその名で呼ばれるのだ。


私が予想出来ない効果が隠されている可能性もある。


-------------

【固有魔術-チャック-次元渡】

 チャック展開時発動可能。

別の次元へと渡ることが出来る。


【別次元】

次元渡によって移動出来る。

こちらの次元からは、元の次元へと干渉出来ないが、元の次元からもこちらの次元へと干渉は出来ない。

-------------


【鑑定】によって詳細を出した私は、首を傾げる事となった。

……別次元?いや、そもそも説明が簡素すぎる!逆に分からないな……。


しかし、別次元の説明は理解できた。

双方から干渉し合えない。同じ場所に居るはずなのに、向こうから触れられない。

こちらからも触れることのできない、全く違う領域。


成る程。

都合の良いと言えば聞こえがいいが、これがこの世界に初めて入った時に説明された『貴女の元で成長する』ということか。


固有魔術は、プレイヤーと共に成長する。

そのプレイヤーが置かれた状況、死んだ時の場面を元に、そのプレイヤーに最適な形で成長していく。


私の【チャック】の【次元渡】然り、赤ずきんの【童話語り】の【劇場展開】然り。

逃げに徹していれば、それを助けるような形へと成長し。

集団戦を繰り返していれば、それを特化させるような形へと向かっていく。

便利ではあるが、ある意味でそれこそ固有魔術の最大の欠点なのだろう。


「っとと、とはいえ。使わない手はないッ!【チャック】!」

「またそれ?いい加減慣れてきたよ、お姉さん」


私が【チャック】を自分の前方に設置したのを見て、グリムは嘲笑うように言う。

魔力残量はまだまだ余裕があるため問題はないが、一応もう1本MPポーションを飲み干し最悪の場合に備えてから私は宣言する。


「じゃあね、グリムさん。この戦いは私の負けでいいよ」

「はぁ?!何言って……」

「【次元渡】開通(オープン)


口の開いていた【チャック】の中の色が、黒から色々な色が混ざり合った形容し難いモノへと変化する。

そして、躊躇なく私はその中へと入っていった。



-----------------------



『PTから離脱しました』

『通話機能が制限されました』

『強化効果が無効化されました』


中に入ると、そんなログが出てくるが取り敢えずは置いておく。


「ここは……平原?白い部屋に移る前の平原かなここ」


【次元渡】によって別次元へと移動した私は、平原へと戻ってきていた。

いや、恐らくはあの白い部屋と同じ座標ではあるのだろう。

しかし、別次元のためにこちらまで固有魔術の効果が及んでいないのだ。


「……っ。流石に魔力の消費えげつないなぁ。【五里霧】よりも酷い」


言っている間にも、ゴリゴリと魔力が持っていかれている。

別次元にいるために魔力を消費しているのだろうが……私の魔力だと、保ってあと3分が限度だろう。


取り敢えず、ということで白い部屋があったと思われる範囲から急いで離れMPポーションを口にする。

こちらから見えないだけで、別次元から元の次元に戻った瞬間に敵と鉢合わせる可能性は十分にあるのだ。


「よし、取り敢えずはこの辺で。【次元渡】」


元いた位置から大体100メートル程離れた位置から【次元渡】を発動し、元の次元へと帰還する。

何が来ても良いように、片手に影毒ノ牙を持った状態で。



-----------------------



戻った私の視界に飛び込んで来たのは、平原でも白い部屋でもなく、灰色の毛をした人狼の背中だった。


「は、はぁ?!」

『ア?……ッテ、クロエサン?!』


何やら聞き覚えのある声で話すその人狼は此方へと振り返り、驚いている。

というか何故私の名を知っているのだろうか?


「余所見は厳禁ッ!ですよッ!」

『グッ……クソ、ハナレテクダサイ!クロエサン!』

「お、おっけー!?」


何やら戦闘中のようで、その人狼は私を庇うように私の前へと陣取る。

そこに女性らしいラインをもつ水の精霊が攻撃を加えてきているのだ。


元の次元に戻った途端にこれは、理解が追いつかない。

しかし、何となくこの人狼が味方であの水の精霊が敵なのは分かった。


「援護します!前衛は任せました!」

『リョウカイ!』


こうして見覚えがあるような、ないような人狼とのタッグ戦が始まった。


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