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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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灰の降る部屋で

もし良かったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


灰被り視点


私は視界が平原から一面白へと変わった瞬間に、左に飛び回避行動を取っていた。

他のゲームでいう斥候役が持っているような察知能力……それと似た効果を持つ、そのまま【危機察知】というパッシヴスキルが危険を知らせていたからだ。


ドカン!と大きな音を立てながら、私がさっきまで立っていた位置は爆破されていた。

攻撃の飛んできた方向をいつでも【灰化の魔眼】が発動できるように準備した状態で確認し、私は驚きで目を見開いた。


「チッ、感知術式でも持ってたか。仕留め損なったな」

「あな、たは……」

「おぅよ、元気だったか灰被り。だが、この状況だ。わかるよな?」


そこには、かつて冒険者の街にて悪役を演じて貰ったプレイヤー……帽子屋が居た。

両手に液体の入ったフラスコを2つずつ持ちながら、ニヤニヤしながらこちらを観察しているような視線を投げかけてくる。


「フリーランスだからこそ、こういった場合に引っ張り出されると。そういうことですね」

「そういうこった。まぁそっちは傭兵だろうが……同じようなもんだ。貰った金分の仕事はしねぇとなぁ!」


その言葉と共に投げてきたフラスコを、私は【灰化の魔眼】にて灰にしつつタタンと左足を踏み鳴らした。

直後、周囲から氷の茨が出現し帽子屋へと襲いかかるが……直前で見えない何かに衝突し彼へ傷1つ与えることもできなかった。

彼の持つ固有魔術の1つだろう。


帽子屋はフリー……つまりは国に属さない、サバトにも属さないソロプレイヤーの1人だ。

だからといってPTを組まないわけではなく、報酬さえもらえればどんな仕事でもする……そんなプレイヤーだ。


……だからこそ、この戦争中会いたくないと考えていたプレイヤーなのにっ!

どんな仕事でもする、というのは基本的には他プレイヤーの殺害が主になる。

そう、ある意味で彼は人殺しに長けた魔術師なのだ。


「オイオイ!そんな柔っこい茨じゃあ俺は殺せねぇぞ!」

「戦闘狂め……」


帽子屋がインベントリ内から取り出し投げ続ける【液状爆瓶】の中を、私は氷の茨や火炎の花を使い潜り抜けていく。

……このままじゃジリ貧か。何個か手札切った方が良さそう。


1度自らの周囲に氷の茨を出現させ何本かの爆発に耐えられる様にする。

【灰化の魔眼】、その派生魔術を使う為の時間稼ぎ用だ。


「【祖は常闇に伏せ】【師は霧へと消えてしまう】」


詠唱を開始する。

基本的に魔術師が真正面から勝負をしないのは、この詠唱があるからだ。


強力な攻撃魔術を使う場合、多くのモノは詠唱しなければ発動しなかったり、効果自体が半減されてしまったりと、デメリットが大きい。

それに、この世界での切り札的魔術……固有魔術の派生には必ずといって良いほどに、この詠唱付きのものが取得されている。


「【ならば我は】【我は、汝と共に灰と成ろう】」


他にも、魔術の中に【詠唱強化】というものもある。

こちらは予め決めておいたプレイヤー独自の【詠唱】を行うことによって、その後に使う魔術の効果を強化する、強化魔術の一種だ。


そういった詠唱自体をカットし、即魔術発動させたい!効果自体を落とさないで!と考えられて作られたのが、私が使う付与術式なのだ。


決められたアクションをするだけですぐに発動する魔術。

その場では消費されない自らの魔力。

今はまだあまり普及はしていないが、恐らくこれからWOAでは付与術式をメインとした戦い方も広まっていくことだろう。


……まぁ、その時が来ても詠唱自体は残るだろうけど。

ドカンドカンという爆発音を聞きつつ、万が一にでも壊されないよう氷の茨を追加で発動し続ける。


時折火炎の花を発動し牽制として発動するが、向こうもそれに突っ込んで死んでくれるような馬鹿ではない。


「【我と共に灰と成りて】」


私はそのまま詠唱を続ける。

爆発音のせいで帽子屋の声が聞こえないが……恐らくだが、向こうも他の固有魔術を使い此方の派生魔術に対しての準備を進めている筈だ。


それに彼には【霧海】もある。

人によって発現する派生魔術が異なる為、クロエの【霧海】の派生魔術を見ただけでは判断出来ないが……似たようなものがあると考えた方がいいだろう。


「【彼の者は、天へと至る】」


……そして【液状爆瓶】の派生魔術。そっちも警戒しなければ。

一部では彼の代名詞とも言われる【液状爆瓶】。

その派生魔術である【爆液津波】は暗殺される可能性もあるトッププレイヤーの間では有名だ。


その効果は、生物が触れたら爆発する液体爆弾を魔力が尽きるまで召喚し続けるという、ある種の自爆魔術だ。

開いた場所では効果が薄いが……この閉鎖された空間では滅法強い。


「【灰の女王】発動」


私がその言葉を発すると共に、周囲に灰が降ってくる。

そして、目の前の氷の茨に私が触ると……今まで爆発から守っていてくれたそれらは全て灰へと変わっていった。


私の戦いはまだ続く。


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