【童話語り】というもの
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赤ずきん視点
ここで一度、私赤ずきんの使う固有魔術である【童話語り】について話しておこう。
プレイヤーの誰かが決めた固有魔術の分類的には特殊系に分類されるこの魔術は、一部のプレイヤーからはまた別に【語り部】系の固有魔術と言われる事がある。
それに分類されたから何なのだ、という疑問は尤もなのだが……まぁ今語る意味は薄いだろう。
今はそれらではなく、【童話語り】についての話なのだから。
私の【童話語り】の通常効果……派生魔術無しでの効果は単純だ。
童話の中の登場人物や、道具なんかをその場に出現させる。うん、単純な効果だ。
但し、何でもかんでも出現させられるわけではなく、私が知っている作品内という制限もあるのだが。
そこから派生魔術によって【劇場展開】などの特殊な効果が加わっていくのだが……まぁそれはいいだろう。
派生魔術に関して語りだすとそれこそキリがない。
『……今回は、周りに無駄に気を遣う者らはおらんのだな』
「あぁ、そうさジャバウォック。だから今回は君の発言制限も外してあるし、無駄に魔力使って君を抑え込んでもいないんだ。前回は申し訳なかった」
『まぁ、いいのだが。……我は喰らうのみ。ここではお主によってそう定められているのだから』
「アハ、そう言われると私が何か悪い魔女のように聞こえちゃうねぇ」
さて、ここまで話した【童話語り】の効果ではあるが、童話の登場人物や道具を出現させる以外にも、もう1つ特徴的な能力があった。
「さぁて、ではでは行こうかジャバウォック。君には今回『魂を喰らう者』以外にも『主人公補正』も加筆しておいた。頑張ってくれ」
『……絶対に逆らえない上司のいる主人公、というのも哀れな者だな』
「あっはっは、そんなこと言わないの。君に限らず【童話語り】で呼べるキャラクターは基本的には私に絶対服従なんだから仕方ないでしょうに」
それは、【童話語り】によって呼び出す登場人物達の設定を2つまで加筆又は修正できるというもの。
加筆できる内容は固有魔術のレベルが上がることで増えていくが、大体は『その者は英雄であった』などといったように、一見して効果がわかるようにはなっていなかったため、最初期は本当に何が何だかわからなかった。
修正のほうはといえば、登場人物ごとに決められている単語を消去、もしくは変更できるというもの。
ジーニーならば、外見の性別を男から女に変更できるし、自我があるかどうかについても消去するかどうか選ぶことが可能だ。
童話のみ、と限られてはいるが自分の好きなように設定改変ができるそんな能力だ。
物語上ではしがない端役だった登場人物も、【童話語り】によって呼び出されれば一騎当千の英雄になり得るのだ。
……それにしても、この戦争中にジャバウォック使えなくなっちゃうのは辛いなぁ。しょうがないんだけど。
そんな能力だが、もちろんデメリットがある。
加筆又は修正した登場人物は、一度呼び出した後24時間は呼び出せなくなってしまう。
過去にジーニーにどうしてそんなクールタイムがあるのか?と聞いたところ、
『決まっているじゃないか、赤ずきん。設定を改変された登場人物は、元の設定を取り戻すのに1日は掛かるものなのさ。二次創作ではないオリジナルを君は弄っているのだから、彼らが自分を取り戻すのは結構難しいんだ』
とのこと。
登場人物は当然として、道具にも自我があるような発言だが、日本には八百万の神というものもある。
WOAには巫女などといった日本由来と思われるクラスや魔術が少ないわけではないため、そういう概念も設定されているのかもしれない。
「っと、今は戦闘中だった。いけないいけない。……大丈夫かい?アラジンくん。腰が抜けてるじゃあないか」
「おっおま……!そんなもの!どうやって!!」
「そんな……?あぁ、ジャバウォックのことかい?まぁ、簡単に言えば彼の設定を少しだけ変えてるだけだよ。私以外が見たら【恐怖】が連続で付与され続けるー、とかね?」
設定加筆によって付与された『魂を喰らう者』によって、私以外にジャバウォックを見た生き物には【恐怖】が連続で付与されていく。
【恐怖】は掛かった者に対し、行動制限や詠唱阻害を付与する複合型のデバフだ。
ただし、基本的にプレイヤーはデフォルトで高い【恐怖】耐性があるため、魔術によって掛かることは殆どない。
しかし、ここでもう1つの設定加筆である『主人公補正』。
その効果として、その設定が付与された者から受けるものを全て受け入れやすくなってしまうという、説明文だけ見るとかなり分かりにくい効果の設定だ。
例を挙げるならば……そう。ハーレム系の主人公だろうか。
ハーレム系の主人公は、基本的に皆からほぼ全てを受け入れられる『素質』のようなものがある。
『主人公補正』も劣化しているとはいえ、それと同じようなモノだ。
この設定が付与されたものから受けるもの……今回で言えば『魂を喰らう者』によって付与される【恐怖】も、耐性があるにも関わらず受け入れやすくなってしまう。
……まぁ、レベルが高いプレイヤーならアラジンのように少しずつ動けるんだけど。
見れば、アラジンは何やら足で陣のようなものを描いている。【恐怖】を無効化するタイプの魔法陣だろうか?
「まぁ、やらせないんだけど。……ほら、ジャバウォックさぼろうとしないでいっておいで」
『……チッ』
「あー!舌打ち!舌打ちしたな!?」
そうして、アラジンに向かってノソノソとジャバウォックは向かっていく。
プレイヤーが本当に恐怖を感じているわけではないだろうが、アラジンの顔は……アバターの顔は恐怖に塗れている。
そして、彼は喰われていった。
足で描いていた魔法陣は書きかけのまま、上半身を食いちぎられ光となって消えていった。
「ハロウみたいな蘇生系はなしっと。まずは1勝だね」