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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
151/242

鏡の国から

もしよかったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


視点変わって


赤ずきん視点


「……ッ!これは……結界系統の固有?」


周りのプレイヤーに対して指示を出そうとした瞬間、私の視界は白に染まった。

周囲を見回すと、そこは白い正方形の部屋。


十中八九、ファルシ側のプレイヤーの固有魔術に捕らえられた形だろう。

……内部にいるプレイヤーをじわじわ殺していく系の結界?いや、それならデバフが何かしら付くはず。


カツカツカツ、と足音が聞こえてくる。

そちらへと目を向けると頭にターバンを巻いた森精族の子供のプレイヤーがこちらへと歩いて来ていた。

彼はある程度私から離れた位置で立ち止まると、柔らかい笑顔でこちらへと微笑んでくる。


「ふふ、どうも【童話語り】」

「……君は、うん。あの時の不法入国してたプレイヤーか」

「あぁそうさ。あの時はすぐに逃げてしまったからね、挨拶をしていなかった。僕はアラジンというんだ、よろしく」

「ハハ、どうもご丁寧に。私の名前は言う必要はなさそうだね。じゃあ死んでくれ」


炎弾を複数出現させ、アラジンと名乗る森精族のプレイヤーに対して撃ち出した。

しかし、彼に当たる前に掻き消えてしまった。


「おいおいおーい、怖いなぁお姉さん」

「お姉さん?ハハ、馬鹿を言うんじゃあないよアバター弄って実年齢よりも下の身体で遊んでる癖に」

「それは言わない約束、さっ!」


彼はいつのまにか取り出した金色のランプをこちらへと向ける。

すると、そのランプから煙が大量に噴き出て部屋の中に徐々に広がっていく。


私は自分の周囲に簡単な風を操る【操風】という汎用魔術を使い、煙が自分の周りに来ないように操作する。

……毒ガス?いや、それにしては彼自身ガスマスクのようなモノは付けていなかった。じゃあ……?

こうしている間にも、煙は部屋中へと広がっていき私の視界を塞いでいく。


「ちょっと面倒だなぁこういうのは」

『面倒?結構結構』


全方向からアラジンの声が聞こえてくる。

……煙になる魔術?でもそれじゃああのランプを媒介にする意味はないよね。


私は自身の通り名にもなっている【童話語り】を使うための巨大な魔術書を開く。

周囲には仲間は居らず、敵も1人。

この部屋の中を見てる敵がいるかもしれないが、それはそれで好都合なだけだ。


「アハ、私は面倒ってのは少し嫌いでね?いや、私自身が面倒って言われることは多いんだけども」

『……何を言っているのかな?』

「わっかんないかなー?まぁいいか。【童話語り(ファンタジーテラー)-鏡の国のアリスよりジャバウォック】」


私は躊躇わずに彼の竜を呼ぶ。

風が吹き荒れ、部屋の中に充満していっていた煙を散らしながら私の背後に呼び出されていく。

アラジンはそれを見て、感じて、危険なものだと考えたのか私に向けて石礫の散弾を撃ち出してくるが、もう遅い。


「『止まれ(ストップ)』『落ちろ(ドロップ)』」

『は、はぁ?!』


私がそう呟くと、私の目の前の空中で石礫の散弾は止まり、そのまま重力に従って床へと落ちる。

まるでチートのような能力だ。


「良いかい、1つだけこれからの為に教えておいてあげようか」


私はそのまま語りだす。

片手に魔術書を持ちながら、まるでストーリーテラーのように。


「このWOAというゲームの中で、【語り部(テラー)】系統の固有魔術を持つプレイヤーがいる。……そう、一番わかりやすいのは私の持つ【童話語り】がその系統に該当するだろうね」


自分の後ろで膨れ上がっていく存在感を肌で感じながら、私は笑いつつ話を続ける。


「ただね、アラジンくんよ。その系統を持つプレイヤーを相手にする際に絶対にしてはいけないことは何か知ってるかな?いや、知らないだろうな。ファルシ側には【語り部】系統持ちは居なかったはずだしね」


煙が晴れ、どんどん視界が広がっていく。

見ればアラジンは元々居た位置から動いてはいなかったようで、恐らく煙は自分の体の延長上……煙の中ならどこからでも魔術を出せるようにする、というだけの固有魔術か何かだったのだろう。

そういう効果を持つ固有魔術は珍しくない。


「絶対にしてはいけないこと、って言ってもそんな身構える必要はないんだ。これをやったら激昂されてしまうってわけではないしね。……おっと、話が長くなってしまった。すまないすまない。で、だ。何をしてはいけないか?それは簡単さ」


カツカツカツ、と私は歩いてアラジンへと近づいていく。

この部屋で私がアラジンと出会った時と同じように、わざと足を鳴らしつつ近づいていく。


「【語り部】系統持ちはね、1人にしてはいけないんだよ」

「あ…ぁああ……」

「ん?なんだって?……ってあぁ。ごめんよ、【恐怖】の所為で話せないのか」


口をパクパクとさせつつ、手を開いては握り、そして私の後ろを凝視し続けている。

以前、彼を呼んだときは出来るだけ周りにいたクロエたちに気を使って、何とか魔力でデバフの付与を抑え込んでいた状態で召喚していたのだ。……まぁ、少しは漏れてしまったのだが。

それを今回は抑え無しの即時召喚。デバフの付与数は比べ物にならないだろう。


「【語り部】系統の固有魔術っていうのはね、良くも悪くも周りに影響を与えすぎてしまうのさ。だから、パーティを組んでいる時はできるだけ仲間に影響を与えないようにするために力をセーブしなきゃいけない。……わかるかい?こうやって1人で、周りに気を遣う必要がない場所なら全力を出せるってわけなの」


私はそう言って、後ろへと振り向いた。

そこには躰の腐った巨大な西洋竜が召喚されていた。

ニコッ、と私は彼に笑いかけながら近づいていく。


「さ、喰らおうかジャバウォック」


こちらに目をお通しくださいませ。

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